なぜ違法な状態のまま、席を提供してしまったのでしょうか。
桟敷席が建築基準満たさず
先月開かれた徳島市の阿波おどりでは、「プレミアム桟敷席」と呼ばれる1人20万円の席が初めて設けられました。ところが階段の幅や段の高さなどが建築基準法の基準を満たしておらず、検査済証の交付を受けない違法な状態で運営されました。
実行委員会は4日に会合を開き、弘田昌紀委員長代行は「プレミアム桟敷席を購入した人をはじめ、関係者に心配と迷惑をかけたことを深くおわびする。誠に申し訳ない」と述べて謝罪しました。
“1人20万円” プレミアム席とは?
「プレミアム桟敷席」は徳島市の阿波おどりに海外の富裕層を取り込もうと、ことし初めて設置されたものです。
東京の会社が企画や施工の発注を担当し、踊り手団体や経済団体、それに市役所などで作る実行委員会が事業の統括を担いました。
通常の桟敷席は踊り込んでくる踊り手たちを横から眺めますが、新たな席は、踊り手たちを正面から見下ろすかたちです。
市内の藍場浜演舞場に1人20万円で1公演につき最大20人分が用意され、地元食材を使った食事や、踊り手と交流できるサービスが提供されました。
提供された料理は?
「プレミアム桟敷席」では特製の料理が提供されました。
このうち、うな重は鳴門産のうなぎが使われています。
また、徳島伝統の小型の重箱「遊山箱」の中には、特産の阿波尾鶏やアシアカエビなどを使った、7種類の料理が詰められています。
やぐら階段の幅狭く 手すりの高さも不足
徳島市によりますと、観客が座る桟敷は開設する前に建築基準法に基づく検査が必要で「プレミアム桟敷席」のやぐらも開幕の前日に検査したということです。
その結果、法律で定められた基準より、やぐらの階段の幅が10センチほど狭く、手すりの高さも不足していることなどがわかり、市は実行委員会に対して改修が必要なことを指摘したうえで、検査済証は交付しなかったということです。
指摘を受けた実行委員会は手すりの高さなどは修正したものの、階段の幅は変えられず、誘導するスタッフを増やすなどして対応しましたが、検査した市の建築指導課に報告せず、検査済証がない違法な状態のまま席を提供したということです。
市の建築指導課は「検査済証を交付していないことは認識していたが、実行委員会側が法的な問題はクリアしただろうと思っていた」としています。
実行委員会「十分な専門知識なく」
実行委員会は4日、徳島市でいきさつを説明する会合を開き、席を企画した東京の会社と実行委員会のいずれも建築基準法に関する十分な専門知識がなく、検査済証のない状態が違法だと認識していなかったことが原因だと結論づけました。
一方、実行委員会によりますと設計図の段階では法律の基準を満たしていたということで、出席した委員からは設計図と異なる桟敷席が設置されたことについて、責任の所在を明らかにするよう求める意見があがっていました。
実行委員会によりますと席の利用者は、ひと組が数人の席であわせて22組にのぼり、1人20万円の料金全額を返金する作業を進めているということです。
設置の費用にはコロナ禍で落ち込んだインバウンドの回復のために観光庁が交付する補助金も使われる予定でしたが、今回の問題を受けて観光庁が交付の見直しを検討しています。
台風接近の中 開催の是非は
一方、徳島市の阿波おどりは、台風が接近する中での開催の是非も話題となりました。
先月12日から15日まで、4日間の日程が予定されていたことしの阿波おどりは台風7号の影響で最終日の15日は中止となりましたが、3日目の14日は実行委員会がメンバーの多数決で開催を決めました。
14日は、徳島市内の全域に「高齢者等避難」の情報や暴風警報が出され、踊り手たちは大雨のなか、屋外の演舞場を練り歩きました。
実行委員会は14日の開催を決めた時点では警報が出ておらず、雨も少量の予報だったことなどを開催の理由にあげていますが、徳島市の内藤市長は実行委員会に中止を求めていたことを明らかにするなど、台風接近の中での開催の是非も話題となりました。