一方いっぽう、被告ひこくの弁護士べんごしは、責任せきにん能力のうりょくはなかったとして、無罪むざいを主張しゅちょうしました。

随時ずいじ更新こうしんでお伝おつたえしています。

被告ひこくは起訴きそ内容ないよう認みとめる 弁護士べんごしは無罪むざい主張しゅちょう

裁判さいばん員いん裁判さいばんは、午前ごぜん10時半じはんすぎに始はじまりました。

裁判さいばんの「冒頭ぼうとう手続てつづき」で、青葉あおば被告ひこくは裁判さいばん長ちょうから名前なまえや職業しょくぎょうなどを尋たずねられました。これに対にたいし、被告ひこくは小声こごえで答こたえました。

青葉あおば被告ひこくは、起訴きそされた内容ないようについて「間違まちがいありません。当時とうじはこうするしかないと思おもっていた。こんなにたくさんの人ひとが亡なくなるとは思おもっておらず、やりすぎた」と述のべ、起訴きそされた内容ないようを認みとめました。

一方いっぽう、被告ひこくの弁護士べんごしは「被告ひこくは精神せいしん障害しょうがいにより、よいことと悪わるいことを区別くべつして犯行はんこうをとどまる責任せきにん能力のうりょくがなかった」などとして、無罪むざいを主張しゅちょうしました。

検察けんさつ「完全かんぜん責任せきにん能力のうりょくある」

検察けんさつは、冒頭ぼうとう陳述ちんじゅつでこの裁判さいばんの主おもな争点そうてんは責任せきにん能力のうりょくだとしたうえで、「被告ひこくには完全かんぜん責任せきにん能力のうりょくがあった。被告ひこくは、京都きょうとアニメーション側がわに小説しょうせつのアイデアを盗ぬすまれたと一方いっぽう的てきに思い込おもいこんだ。筋違すじちがいの恨うらみによる復ふくしゅうだ」と述のべました。

犯行はんこうに至いたったいきさつについては、「被告ひこくは、京きょうアニが制作せいさくしたアニメに感銘かんめいを受うけたことをきっかけに小説しょうせつ家かを志こころざし、京きょうアニへの憧あこがれを強つよめた。しかし、執筆しっぴつしても満足まんぞくできず人生じんせいを悲観ひかんして怒いかりを強つよめていった。その後そのご、みずからの小説しょうせつを京きょうアニに応募おうぼしたが落選らくせんし、京きょうアニにアイデアを盗ぬすまれたという妄想もうそうを募つのらせていった。事件じけんの1か月かげつ前まえ、何なにも思い通おもいどおりにならないことに投なげやり感かんや怒いかりを強つよめた被告ひこくは、大宮おおみや駅前えきまえに行いき、無む差別さべつ殺人さつじんを起おこそうとしたが断念だんねんした」と説明せつめいしました。

そして、事件じけんの3日にち前まえ、「人生じんせいがうまくいかないのは京きょうアニのせいだと考かんがえて筋違すじちがいの恨うらみによる復ふくしゅうを決意けついし、京都きょうとに向むかった。スタジオなどを下見したみしたうえでホームセンターで犯行はんこうに使つかう道具どうぐを購入こうにゅうした。犯行はんこう当日とうじつ、ガソリンを購入こうにゅうした被告ひこくは計画けいかくどおり実行じっこうするか、引き返ひきかえすかを考かんがえためらった。引き返ひきかえすという選択肢せんたくしもあったのに実行じっこうした」と述のべました。

弁護べんご側がわ「人生じんせいをもてあそぶ闇やみの人物じんぶつへの反撃はんげきだった」

弁護べんご側がわは冒頭ぼうとう陳述ちんじゅつで被告ひこくには責任せきにん能力のうりょくがなかったとしたうえで、事件じけんのいきさつについて説明せつめいしました。

この中なかで弁護べんご側がわは「青葉あおば被告ひこくは、31歳さいの時とき、京きょうアニの作品さくひんに感動かんどうし、小説しょうせつを書かき始はじめた。事件じけんの1年ねん前まえ、テレビで京きょうアニの作品さくひんを見みていた際さい、自分じぶんのアイデアが使つかわれ、盗ぬすまれていたと感かんじるとともに京きょうアニから逃のがれられないと苦くるしむことになった。その後そのご、人ひとや物ものとの関かかわりを絶たとうとし、スマートフォンを解約かいやくするなどした。事件じけんの4日にち前まえにアパートの隣人りんじんと騒音そうおんのトラブルになった際さいには『失うしなうものは何なにもない』と言いって翌日よくじつ、京都きょうとに向むかった」と説明せつめいしました。

そのうえで「被告ひこくにとってこの事件じけんは起おこすしかなかった事件じけんで、人生じんせいをもてあそぶ闇やみの人物じんぶつへの対抗たいこう手段しゅだん、反撃はんげきだった。被告ひこくの責任せきにんについて判断はんだんする前まえに、被告ひこくが何なにをしたのか知しる必要ひつようがある。責任せきにん能力のうりょくは複雑ふくざつなものなので今後こんごの証人しょうにん尋問じんもんで専門せんもん家かの意見いけんを聞きいて被告ひこくに責任せきにんを問とえるのかどうかを議論ぎろんすべきだ」と述のべました。

犠牲ぎせい者しゃの母親ははおや「無罪むざい主張しゅちょうは腹立はらだたしい」

事件じけんで亡なくなったアニメーターの石田いしだ奈央なお美よしさん（当時とうじ49）の高齢こうれいの母親ははおやは初はつ公判こうはんについて「やっていることと主張しゅちょうがちぐはぐで、無罪むざい主張しゅちょうは納得なっとくができず腹立はらだたしい」と話はなしました。

母親ははおやは5日にちは傍聴ぼうちょうしませんでしたが報道ほうどうで内容ないようを知しったということで、青葉あおば被告ひこくが「こんなにたくさんの人ひとが亡なくなるとは思おもわなかった」などと発言はつげんしたことについて、「ガソリンをまいて火ひをつけたらどうなるか、誰だれでもわかることだと思おもいます。やっていることと主張しゅちょうしていることがちぐはぐだと思おもいます」と話はなしています。

その上うえで、被告ひこくの弁護士べんごしが被告ひこくに責任せきにん能力のうりょくがなかったとして無罪むざいを主張しゅちょうしたことについては、「何なん日にちも前まえからガソリンや台車だいしゃを用意よういしていてあれだけ周到しゅうとうに計画けいかくできるのに、善悪ぜんあくの判断はんだんがつかないというのは納得なっとくがいきません。遺族いぞくからしたら腹立はらだたしいことこの上このうえないです」と話はなしていました。

奈央なお美よしさんの80代だいの父親ちちおやは、裁判さいばんの傍聴ぼうちょうを望のぞんでいましたが先月せんげつ5日にちに亡なくなっていて、母親ははおやは「お父おとうさんも空そらの上うえから聞きいているのではないかと思おもいます。きょうの裁判さいばんの内容ないようをどう捉とらえているかは想像そうぞうもつきませんが、直接ちょくせつ聞きくことができず残念ざんねんでならないと思おもいます」と話はなしていました。

母親ははおやは今後こんごの裁判さいばんについては「何なにの罪つみも、関係かんけいもない娘むすめがなぜ殺ころされなければならなかったのか、どんな心境しんきょうであのようなことをしたのかすべて話はなしてほしい。娘むすめを殺ころされた身みからすれば何なにを言いわれたところで憤いきどおりが収おさまることはありませんが、被告ひこくがすべきことは正直しょうじきに説明せつめいすることだけだと思おもいます」と話はなしていました。

犠牲ぎせい者しゃの半数はんすう 匿名とくめいで審理しんり

証拠しょうこ調しらべの中なかで、検察けんさつは事件じけんで犠牲ぎせいになった36人にんの名前なまえや当時とうじの年齢ねんれい、それに死因しいんなどを読み上よみあげました。

半数はんすう以上いじょうの犠牲ぎせい者しゃについては、名前なまえは読み上よみあげず、裁判所さいばんしょに提出ていしゅつした被害ひがい者しゃの一覧いちらん表ひょうの番号ばんごうを示しめすことで、匿名とくめいで審理しんりが進すすめられています。

消防しょうぼう職員しょくいん「ここまで悲惨ひさんな現場げんば 見みたことない」

裁判さいばんで検察けんさつは、当時とうじ救助きゅうじょに入はいった消防しょうぼう職員しょくいんの供述きょうじゅつ調書ちょうしょを読み上よみあげました。

職員しょくいんは「全面ぜんめんに火ひが広ひろがり多数たすうの人ひとが倒たおれていて、普通ふつうの火事かじではないと分わかった。火ひの勢いきおいがおさまると建物たてものの中なかに入はいって多数たすうのご遺体いたいを見みた。私わたしも消防しょうぼうの仕事しごとを何なん十じゅう年ねんもやっているが、ここまで悲惨ひさんな現場げんばは見みたことがない」と供述きょうじゅつしていました。

被告ひこくは車くるまいすで法廷ほうていに

車くるまいすに乗のって法廷ほうていに入はいった青葉あおば被告ひこくは、上下じょうげ青色あおいろのジャージを着きて、マスクを着用ちゃくようしていました。髪型かみがたは丸刈まるがりに近ちかい短髪たんぱつで、視線しせんはまっすぐ前まえを向むいていました。

検察けんさつの冒頭ぼうとう陳述ちんじゅつの間まは、車くるまいすに深ふかく腰こしかけ、じっと検察官けんさつかんの方ほうを見みていました。事件じけんの犠牲ぎせい者しゃの人数にんずうやけが人けがにんの数かずが読み上よみあげられた際さいには、少すこしうなずくような様子ようすも見みられました。

また午後ごご1時じ25分ふんごろに審理しんりが再開さいかいされたとき、自分じぶんの席せきに向むかう途中とちゅう、遺族いぞくや検察けんさつが座すわる席せきに向むけて2回かいほど小ちいさく頭あたまを下さげました。

被告ひこく 午前ごぜん10時じごろに京都きょうと地裁ちさいに

青葉あおば被告ひこくを乗のせたとみられる車くるまは、午前ごぜん8時じ過すぎに勾留こうりゅうされている大阪おおさか拘置こうち所しょを出でて先さきほど午前ごぜん10時じごろ、京都きょうと地方ちほう裁判所さいばんしょに入はいりました。

傍聴ぼうちょう希望きぼう者しゃは500人にん

今回こんかいの裁判さいばんを傍聴ぼうちょうしようと、京都きょうと地方ちほう裁判所さいばんしょの近ちかくの京都きょうと御苑ぎょえん富小路とみこうじ広場ひろばでは、5日にち朝あさ早はやくから多おおくの人ひとが傍聴ぼうちょう券けんを求もとめて列れつを作つくりました。

裁判所さいばんしょによりますと、用意よういされた傍聴ぼうちょう席せき35席せきに対にたいして、希望きぼう者しゃは500人にんに上のぼり、倍率ばいりつは14倍ばいあまりとなりました。

大阪おおさか・堺さかい市しから来きた20代だいの男子だんし大学生だいがくせいは「アニメファンとして『来こなきゃいけない』という使命しめい感かんで来きました。罪つみを認識にんしきしているのであれば、被告ひこくの口くちから謝罪しゃざいしてほしい」と話はなしていました。

また、京都きょうと市しの60代だいの男性だんせいは「とても大おおきな事件じけんで注目ちゅうもくしていたので、来こようと思おもっていました。この4年間ねんかん、被告ひこくが何なにを考かんがえて生いきてきたのか、今いまになって事件じけんをどう考かんがえるのか聞ききたいです」と話はなしていました。

京都きょうと府ふ福知山ふくちやま市しの20代だいのアルバイトの男性だんせいは「10年ねん前まえ、高校こうこう1年生ねんせいで勉強べんきょうについていけず、家いえに引ひきこもっていましたが、京都きょうとアニメーションさんの作品さくひんを見みたときにすごく感動かんどうして、引ひきこもりから脱だっした経験けいけんがある。被告ひこくは医療いりょう従事じゅうじ者しゃの方かたたちに命いのちを助たすけられて、もう自分じぶんだけの命いのちではないと思おもうので、自分じぶんの思おもったことを、自分じぶんの言葉ことばで発はっしてほしい」と話はなしていました。

起訴きそ内容ないようの詳細しょうさいは

青葉あおば被告ひこくは、京都きょうと市し伏見ふしみ区くにある「京都きょうとアニメーション」の第だい1スタジオに放火ほうかして多数たすうの従業じゅうぎょう員いんを殺害さつがいしようと計画けいかくし、4年ねん前まえの2019年ねん7月つき18日にち、午前ごぜん10時半じはんごろ、正面しょうめん出入でいり口ぐちから侵入しんにゅうしたうえ、1階かいのフロアでバケツに入いれたガソリンをまいてライターで火ひをつけ、社員しゃいん70人にんがいるスタジオを全焼ぜんしょうさせるとともに36人にんを死亡しぼうさせ、32人にんに重軽傷じゅうけいしょうを負おわせたとして建造けんぞう物ぶつ侵入しんにゅうと放火ほうか、殺人さつじん、それに殺人さつじん未遂みすいの罪つみに問とわれています。

また、スタジオ前まえの路上ろじょうで包丁ほうちょう6本ほんを所持しょじしていたとして銃刀じゅうとう法ほう違反いはんの罪つみにも問とわれています。

殺人さつじん事件じけんとしては、記録きろくが残のこる平成へいせい以降いこう、最もっとも多おおくの犠牲ぎせい者しゃを出だし、被告ひこくみずからも重おもいやけどを負おって長期間ちょうきかん入院にゅういんしたこともあり、裁判さいばんが始はじまるまでに4年ねん余あまりが経過けいかしました。

捜査そうさ段階だんかいでの供述きょうじゅつは

青葉あおば被告ひこくは、捜査そうさ段階だんかいでは、警察けいさつの調しらべに対にたいし、「ガソリンを使つかえば多おおくの人ひとを殺ころせると思おもった」、「小説しょうせつを盗用とうようされたから火ひをつけた。会社かいしゃに恨うらみがあった」などと供述きょうじゅつしていたということです。一方いっぽうで、犠牲ぎせい者しゃについては「2人にんぐらいと思おもっていた。36人にんも死しぬと思おもわなかった」と供述きょうじゅつしていたということです。

裁判さいばんで、被告ひこく人じん質問しつもんの期日きじつは10回かい程度ていど設もうけられていて、被告ひこくが、事件じけんの動機どうきなどについての質問しつもんにどのように答こたえるのかも注目ちゅうもくされます。

主おもな争点そうてんは責任せきにん能力のうりょく

裁判さいばんを前まえに裁判官さいばんかん、検察官けんさつかん、弁護士べんごしが争点そうてんを絞り込しぼりこむ「公判こうはん前ぜん整理せいり手続てつづき」が行おこなわれ、事件じけん当時とうじ、被告ひこくに物事ものごとの善悪ぜんあくを判断はんだんする責任せきにん能力のうりょくがあったかどうかや責任せきにん能力のうりょくの程度ていどが主おもな争点そうてんとなっています。

検察けんさつは、捜査そうさ段階だんかいで半年はんとし間かんにわたって専門せんもん家かによる精神せいしん鑑定かんていを行おこない、被告ひこくには責任せきにん能力のうりょくがあったとして殺人さつじんなどの罪つみで起訴きそしました。

一方いっぽう、弁護べんご側がわは、被告ひこくが起訴きそされたあと、2度目どめの精神せいしん鑑定かんていを裁判所さいばんしょに請求せいきゅうし、数すうか月かげつ間かんにわたって鑑定かんていが行おこなわれました。結果けっかは明あきらかにされていませんが、弁護べんご側がわは、当時とうじの被告ひこくについて、▽責任せきにん能力のうりょくがない「心神しんしん喪失そうしつ」の状態じょうたいだったとして無罪むざいを主張しゅちょうするか、▽責任せきにん能力のうりょくが著いちじるしく減退げんたいした「心神耗弱しんしんこうじゃく」の状態じょうたいだったとして刑けいを軽かるくするよう求もとめるものとみられます。

裁判さいばんでは、2つの精神せいしん鑑定かんていをそれぞれ担当たんとうした2人にんの医師いしの証人しょうにん尋問じんもんが行おこなわれます。

被告ひこく 車くるまいすで移動いどうできるまでに回復かいふく

この事件じけんでは、青葉あおば被告ひこく自身じしんも重おもいやけどを負おいました。

被告ひこくを治療ちりょうした医師いしや関係かんけい者しゃによりますと、当時とうじ、被告ひこくのやけどは全身ぜんしんの9割わりに及および、ひん死ひんしの状態じょうたいで大阪おおさかの病院びょういんに搬送はんそうされ、入院にゅういんしました。治療ちりょうは、広ひろ範囲はんいの重おもいやけどの治療ちりょうに用もちいられる「自家じか培養ばいよう表皮ひょうひ移植いしょく」で行おこなわれたということです。

ウエストポーチを身みに着つけていたためやけどをしなかった皮膚ひふを培養ばいようするなどして全身ぜんしんに移植いしょくしていきました。3か月かげつ後ごには、介助かいじょされながらも食事しょくじをしたり、車くるまいすでリハビリをしたりするまでに回復かいふくしました。

京都きょうとの病院びょういんに転院てんいんしたあとも移植いしょくした皮膚ひふを定着ていちゃくさせる手術しゅじゅつなど、半年はんとし間かんであわせて12回かいの手術しゅじゅつを受うけたということです。そして、10か月かげつ余あまり入院にゅういんしたあと、被告ひこくは逮捕たいほされました。

関係かんけい者しゃによりますと、今いまも自分じぶんの力ちからでは立たてませんが、車くるまいすで移動いどうできるまでになっていて、会話かいわもできるということです。

《今後こんごの裁判さいばんは》

被害ひがい者しゃ参加さんか制度せいどの利用りようも

関係かんけい者しゃによりますと、今回こんかいの裁判さいばんでは、プライバシーの保護ほごを求もとめる被害ひがい者しゃや遺族いぞくの希望きぼうを踏ふまえて一部いちぶの被害ひがい者しゃについて、名前なまえなど個人こじんが特定とくていされる情報じょうほうを伏ふせて匿名とくめいで審理しんりするということです。

憲法けんぽうは、公正こうせいな裁判さいばんを保障ほしょうするために公開こうかいの原則げんそくを定さだめていますが、刑事けいじ訴訟そしょう法ほうに基もとづく制度せいどでは、被害ひがい者しゃなどから申し出もうしでがあり裁判所さいばんしょが許可きょかすれば、被害ひがい者しゃの名前なまえや住所じゅうしょなどを伏ふせて審理しんりを進すすめることができます。対象たいしょうとなるのは、名前なまえなどが法廷ほうていで明あきらかにされることにより、被害ひがい者しゃなどの名誉めいよや社会しゃかい生活せいかつの平穏へいおんが著いちじるしく害がいされるおそれがある事件じけんとしています。

また、今回こんかいの裁判さいばんには「被害ひがい者しゃ参加さんか制度せいど」を利用りようして、希望きぼうする遺族いぞくなどが審理しんりに参加さんかします。「被害ひがい者しゃ参加さんか人じん」として検察官けんさつかんの隣となりなどに座すわり、被告ひこくに質問しつもんしたり、刑けいの重おもさについて意見いけんを述のべたりすることができます。

裁判さいばんの日程にってい

先月せんげつ末まつに遺族いぞくに示しめされた審理しんり計画けいかくの概要がいようによりますと、期日きじつは、予備よび日びを含ふくめて32回かい設もうけられています。

初はつ公判こうはんでは、起訴きそされた内容ないようを認みとめるかどうかを聞きく罪状ざいじょう認否にんぴなどが行おこなわれるほか、検察けんさつと弁護べんご側がわが、冒頭ぼうとう陳述ちんじゅつを行おこないます。7日にちから被告ひこく人じん質問しつもんが始はじまる予定よていで、はじめに被告ひこくの弁護士べんごし、次つぎに検察官けんさつかんの順番じゅんばんに被告ひこくに質問しつもんすることになっています。

今月こんげつ下旬げじゅんから来月らいげつ上旬じょうじゅんにかけて証人しょうにん尋問じんもんが行おこなわれ、京都きょうとアニメーションの社長しゃちょうや対応たいおうにあたった消防しょうぼうの職員しょくいんが証言しょうげんする予定よていです。そして、再ふたたび被告ひこく人じん質問しつもんを行おこなったあと、物事ものごとの善悪ぜんあくを判断はんだんする責任せきにん能力のうりょくが被告ひこくにあったかどうかについて、検察けんさつと弁護べんご側がわが、冒頭ぼうとう陳述ちんじゅつを行おこないます。

11月つき下旬げじゅんに検察けんさつと弁護べんご側がわが、刑けいの重おもさに関かかわる情状じょうじょうについて冒頭ぼうとう陳述ちんじゅつを行おこない、12月つき上旬じょうじゅんにかけて遺族いぞくなどの供述きょうじゅつ調書ちょうしょの読み上よみあげや意見いけん陳述ちんじゅつが行おこなわれます。これについて、2回かい目めの検察けんさつの論告ろんこくと弁護べんご側がわの弁論べんろんが行おこなわれて結審けっしんします。その後そのご、非ひ公開こうかいで裁判さいばん員いんと裁判官さいばんかんが最終さいしゅう評議ひょうぎを行おこない、来年らいねん1月つき25日にちに判決はんけつが言い渡いいわたされる予定よていです。

傍聴ぼうちょう席せきに遺族いぞく用ようの席せき

裁判さいばんが行おこなわれる101号ごう法廷ほうていは、京都きょうと地方ちほう裁判所さいばんしょで最もっとも大おおきな法廷ほうていです。88ある傍聴ぼうちょう席せきは4つのブロックに区切くぎられています。関係かんけい者しゃによりますと、被害ひがい者しゃや遺族いぞくなどのために確保かくほされた席せきもあり、ほかの傍聴ぼうちょう者しゃから見みえないよう遮蔽しゃへい板ばんが設置せっちされるとみられます。

また、法廷ほうていの警備けいびを理由りゆうに、被告ひこくのほか裁判官さいばんかんや検察官けんさつかん、それに弁護士べんごしなどが座すわる訴訟そしょう関係かんけい者しゃの席せきと傍聴ぼうちょう席せきの間まには、透明とうめいのアクリル板ばんが設置せっちされるということです。

《初はつ公判こうはん前まえに 遺族いぞくは》

「しょく罪しょくざいの気持きもちあるのか知しりたい」

事件じけんで亡なくなった武本たけもと康弘やすひろさん（当時とうじ47）は、兵庫ひょうご県けん赤穂あこう市し出身しゅっしんで地元じもとの高校こうこうを卒業そつぎょうしたあと大阪おおさか府内ふないのアニメの専門せんもん学校がっこうで学まなび、京都きょうとアニメーションに入社にゅうしゃしました。

30代だいの若わかさで監督かんとくに抜ばってきされると、「らき☆すた」や「氷菓ひょうか」といった数々かずかずの人気にんき作品さくひんを世よに送り出おくりだし、京都きょうとアニメーションのアニメ制作せいさくの中心ちゅうしん的てきな存在そんざいでした。

手てがけた作品さくひんは、優やさしさとユーモアにあふれ、いまもファンに愛あいされています。

武本たけもとさんは後輩こうはいのアニメーターたちに講義こうぎを行おこなうこともあり、その様子ようすが記録きろくされた映像えいぞうでは短みじかいカットや1つ1つのセリフにこだわることの大切たいせつさを繰り返くりかえし説といていました。

母親ははおや 千せん惠子けいこさん（75）

「事件じけんから4年ねん余あまりたちましたが、息子むすこを亡なくした悲かなしみの大おおきさはいまも変かわりがありません。裁判さいばんが始はじまるといっても、息子むすこがかえってくるわけではないので特別とくべつな感情かんじょうはありませんが、被告ひこくが今いまどう思おもっているのか、しょく罪しょくざいの気持きもちはあるのかを知しりたいです。判決はんけつがどういう結果けっかになるのかこの目めで見届みとどけたいと思おもいます」

父親ちちおや 保夫やすおさん（80）

「被告ひこくがあれだけの事件じけんを起おこして、今いまどう思おもっているのかをまず知しりたいです。後悔こうかいしているのかどうか、していないのであれば許ゆるせないです。被告ひこくがどういう顔かおをしているのか見みたい気持きもちもあるので、判決はんけつには行いくつもりです」

「娘むすめはもう帰かえってこない」

事件じけんで亡なくなったアニメーターの石田いしだ奈央なお美よしさん（当時とうじ49）は、鮮あざやかな色いろ使づかいに定評ていひょうがある京都きょうとアニメーションでキャラクターなどの色いろを決きめる「色彩しきさい設計せっけい」を担当たんとうしていました。

人気にんきテレビアニメ「涼りょう宮みやハルヒ」シリーズなど数すう多おおくの作品さくひんに関かかわり、映画えいが「聲の形かたち」では、ヒロインが流ながす涙なみだの色いろを淡あわいピンク色ぴんくいろで表現ひょうげんして話題わだいを呼よぶなど、独創どくそう的てきな色いろ使づかいで多おおくのファンを魅了みりょうしました。

遺品いひんのノートには、カットごとに細こまかく色いろを設定せっていして映像えいぞうの奥行おくゆきや質感しつかんなどを表現ひょうげんしようと試行しこう錯誤さくごを重かさねたメモが数多かずおおく残のこされていたということです。

石田いしださんの80代だいの父親ちちおやは、裁判さいばんを傍聴ぼうちょうすることを希望きぼうしていましたが、この4年ねんのあいだに体調たいちょうを崩くずし、先月せんげつ、亡なくなったということです。

石田いしださんの母親ははおや

「娘むすめはもう帰かえってこないという悲かなしみは癒いえません。もし被告ひこくが法廷ほうていで後悔こうかいや謝罪しゃざいを述のべたとしても、今いまさら遅おそいことです。相応そうおうの裁さばきが下くだされることを望のぞんでいます」

「被告ひこくが何なにを話はなすか 関心かんしんはない」

事件じけんで亡なくなった横田よこた圭けい佑たすくさん（当時とうじ34）は、京都きょうとアニメーションでアニメ制作せいさくの進行しんこうを管理かんりする「マネージャー」を担当たんとうしていました。

マネージャーはスタッフが作業さぎょうを円滑えんかつに進すすめられるよう、スケジュール管理かんりなどを通をつうじて作品さくひんづくりをサポートする役割やくわりです。

横田よこたさんは人気にんき作さくの「けいおん！」や「Free！」などでマネージャーを担当たんとうし、映画えいが「響ひびけ！ユーフォニアム」ではチーフマネージャーを務つとめました。

アニメーターの悩なやみや仕事しごとの進め方すすめかたについて常つねに親身しんみに寄り添よりそい、同僚どうりょうから頼たよりにされる存在そんざいだったということです。

横田よこたさんの父親ちちおや

「裁判さいばんの結果けっかがどうなろうと、息子むすこがかえってくるわけではないので、被告ひこくが何なにを話はなすかについては関心かんしんがありません。『なぜあんなことをしたのか』と知しりたいという人ひとの気持きもちはわかりますが、それを突き詰つきつめたとしてもわが子わがこを失うしなった遺族いぞく個人こじんが救すくわれる裁判さいばんではありません」

「再発さいはつ防止ぼうしにつながる裁判さいばんに」

事件じけんで亡なくなったアニメーターの男性だんせいは、京都きょうとアニメーションでキャラクターが使つかう道具どうぐなどを描えがく「小物こもの設定せってい」を担当たんとうしてきました。

「小物こもの設定せってい」は、アニメのキャラクターが使つかう道具どうぐや乗り物のりものなどの複雑ふくざつな構造こうぞうを細こまやかに描えがく技術ぎじゅつで、男性だんせいは、人気にんき作さくの「けいおん！」や「響ひびけ！ユーフォニアム」で楽器がっきの作画さくがなどを担当たんとうしました。

事件じけん後ごに京都きょうとアニメーションが初はじめて完成かんせいさせた新作しんさく映画えいが、「劇場げきじょう版ばんヴァイオレット・エヴァーガーデン」でも、男性だんせいが手てがけた小物こもの設定せっていが生いかされました。

長年ながねんにわたって作品さくひんの世界せかい観かんを支ささえ、ファンの間までは京都きょうとアニメーションの作品さくひんに欠かかせない存在そんざいとして知しられていました。

父親ちちおや

「どんな刑けいが出でても、36人にんの命いのちを考かんがえれば償つぐなうことはできない。遺族いぞくとしては今いまでも息子むすこの命いのちを返かえしてほしいが、裁判さいばんでは、事件じけんを起おこすに至いたった心情しんじょうや経緯けいいを知しりたい。2度どと同おなじような事件じけんが起おこらないよう、同おなじように悲かなしむ被害ひがい者しゃや遺族いぞくが出でないよう、再発さいはつ防止ぼうしにつながる裁判さいばんにしてほしい」

《第だい1スタジオの跡地あとちは》

事件じけんの現場げんばとなった「京都きょうとアニメーション」の第だい1スタジオの跡地あとちは、建物たてものが解体かいたいされたあと周辺しゅうへんは板いたで覆おおわれ、さら地さらちのままとなっています。

会社かいしゃは、将来しょうらい的てきに慰霊いれい碑ひの設置せっちが想定そうていされるとしていますが、会社かいしゃの事業じぎょう用地ようちとしての利用りようも考かんがえられるとして一般いっぱんには公開こうかいしない見込みこみです。

そのうえで、遺族いぞくや会社かいしゃなどは、事件じけんや犠牲ぎせい者しゃの存在そんざい、それに多おおくの支援しえんへの感謝かんしゃを記憶きおくにとどめる象徴しょうちょうとして、スタジオ跡地あとちとは別べつに、会社かいしゃの本社ほんしゃがある京都きょうと府ふ宇治うじ市内しないへ碑いしぶみの設置せっちの検討けんとうを始はじめています。

ことし7月つき、遺族いぞくや会社かいしゃの社員しゃいんなどが参加さんかして初はじめて開ひらかれた検討けんとう会かいでは、▽設置せっち場所ばしょは多おおくの人ひとが集あつまることができる公園こうえんが望のぞましいという意見いけんや、▽鉛筆えんぴつやフィルムなどアニメにかかわるデザインを取り入とりいれたいなどの意見いけんが出だされました。

今後こんごさらに検討けんとうを重かさね、事件じけんから5年ねんとなる来年らいねん7月つきまでの完成かんせいを目指めざすということです。