ニュージーランドが1次リーグで敗れるのは、大会史上、初めてです。
ラグビーワールドカップフランス大会は、日本時間の9日未明、パリ近郊のサンドニで開幕のセレモニーに続いて、開幕戦が行われ、悲願の初優勝を狙う開催国のフランスと、単独最多となる4回目の優勝を狙うニュージーランドが対戦しました。
試合はニュージーランドが開始早々の前半2分、フルバックで次のシーズンから日本でプレーするボーデン・バレット選手のキックパスを受けたウイングのマーク・テレア選手がトライを奪って先制しました。
一方のフランスは、トライは取れなかったものの、フルバックのトマ・ラモス選手が50メートルの長距離を含む3つのペナルティーゴールを決めて逆転し、前半を9対8でリードして折り返しました。
フランスは、後半開始直後にニュージーランドにトライを奪われ逆転されましたが、後半15分、相手のゴール前でのラインアウトから連続攻撃をしかけ、最後はウイングのダミアン・プノ選手がトライを決めてリードを奪い返しました。
その後、フランスは2つのペナルティーゴールなどで点差を広げたあと、終了間際にもトライを奪ってニュージーランドを突き放し、27対13で開幕戦を勝利で飾り、好スタートを切りました。
ニュージーランドはキャプテンのサム・ケイン選手がけがで急きょ試合のメンバーから外れるアクシデントもあり、10回目を迎えたワールドカップで1次リーグ初黒星を喫しました。
フランス アントワーヌ・デュポン選手「ファンの声援に力」
初優勝を目指すフランスのスクラムハーフ、アントワーヌ・デュポン選手は開幕戦について「ホーム開幕戦のプレッシャーで試合への入り方が悪く不安定な試合でした。また、試合の中でニュージーランドにはラックで強いプレッシャーをかけられました。私たちは試合を通じて激しいプレーをして、良い形で試合を終えることができました」と話していました。
スタジアムに駆けつけた多くのファンについて「国歌斉唱の時からファンの力を感じていました。ファンの声援が強く鳴り響き、試合を通じてファンの声援に力をもらいました。今大会最後まで同じような声援が続くことを願っています」と話していました。
フランス グレゴリー・アルドリット選手「次の試合も楽しみ」
開催国で、初優勝を目指すフランスのナンバーエイト、グレゴリー・アルドリット選手は「とてもタフで厳しい試合でした。80分間良い試合をしようと試合に臨み、とても良い試合ができてよかったです。観客のサポートもとてもすばらしく、雰囲気を作ってくれました。優勝するためには厳しい戦いが続くと思いますが次の試合も楽しみです」と話していました。
ニュージーランド アーディー・サベア選手「次は勝てる試合を」
けがのキャプテンに代わってゲームキャプテンを務めたニュージーランドのアーディー・サベア選手は「行ったり来たりで大変な試合でした。最後の20分相手から攻められる中、こちらも懸命に戦いましたが勝つことできませんでした」と試合を振り返りました。
また、自身がゲームキャプテンを務めたことについて「キャプテンがいないことはチームにとってとてもつらかったです。まだ試合はあるので次は勝てるような試合をしたいと思います」と話していました。
ニュージーランド ヘッドコーチ「良い教訓になった」
ニュージーランドのイアン・フォスターヘッドコーチは「非常に厳しい試合だった。ハーフタイムまではどちらが勝ってもおかしくなかったが、後半は勢いをつけることができず、チャンスを逃した。今後のための良い教訓になった」と話しました。
◆フランス ニュージーランドに1次リーグで初黒星つける
『オールブラックス』の愛称で優勝3回を誇るニュージーランドが、1次リーグの試合で敗れるのはワールドカップ10大会目にして初めてです。
ワールドカップで両チームは過去7回対戦し、フランスが2勝5敗と大きく負け越していて、特に1987年と2011年はいずれも決勝で敗れ、ニュージーランドの壁に跳ね返されてきました。
しかし、フランスは2021年に行われたテストマッチで12年ぶりにニュージーランドに勝利すると、パスで展開する伝統の戦術に加え局面によってボールを保持して攻める攻撃を身につけ、2022年のヨーロッパの強豪6か国で争う『シックスネーションズ』で優勝するなど躍進を遂げました。
試合前、フランス代表の司令塔、スタンドオフのマチュー・ジャリベール選手は、「今回の開幕戦は、素早いカウンターが武器のニュージーランドに対し、フランスは、ディフェンスが重要になる。
戦術を競う試合になり、両チームともどうキックを使うのかがポイントになる」と話しました。
そして9日の試合。攻撃の幅を広げてきたフランスがキックを有効に使って攻め、終盤にはキックからトライを奪って勝利を決定づけました。
ワールドカップ10大会目にして初めてニュージーランドに1次リーグでの黒星をつけたフランス。
2回目の自国開催で悲願の初優勝を果たせるか。国民の大声援のなか、好スタートを切りました。
◆マクロン大統領「ハートをつかむプレー期待」
ラグビーワールドカップフランス大会は、現地時間の8日、日本時間の9日未明に開幕し、フランス国内の9つの会場で2か月近くにわたって行われます。
地元・フランス代表と強豪・ニュージーランド代表の開幕戦を前に、試合会場のフランス北部・サンドニにあるスタッド・ド・フランスでセレモニーが行われ、まず、フランス文化を表現したショーが披露されました。
ショーでは、ピッチ上にレストランをイメージした建物が並べられ、フランス料理の有名シェフなどが参加してダンスや歌を披露したほか、ショーの最後には花火が打ち上げられ、会場は大歓声に包まれました。
このあとマクロン大統領が「ラグビーファンの皆さん、そして私たちにとって、このフランスにラグビーワールドカップのすべてのチームとフランス代表を迎えることを大変誇りに思う。フランス代表が地元で開催される大会で優勝することを願っている。ひとりのラグビーファンとして同じパッションを持つ皆さんのハートをつかむプレーが出ることを期待している」と述べ開幕を祝いました。
◆開幕戦 大勢の観客が詰めかけ
ラグビーワールドカップフランス大会は8日、地元・フランス代表と強豪・ニュージーランド代表の開幕戦を迎え、スタジアムには試合開始のおよそ3時間前からフランスのファンを中心に大勢の観客が詰めかけ熱気に包まれました。
大会は、現地時間の8日、日本時間の9日未明に開幕し、開幕戦は、悲願の初優勝を目指すフランス代表と史上最多4回目の優勝を狙うニュージーランド代表の対戦となりました。
試合会場のフランス北部・サンドニにあるスタッド・ド・フランスは8万人余りが収容でき、チケットは完売です。
会場周辺は試合開始のおよそ3時間前から、地元・フランスのファンを中心に大変な盛り上がりを見せ、フランス人の男性は「すべての試合に勝ってチャンピオンになってほしい。きょうは27対13で、フランスが勝つ!」と話していました。
また、ニュージーランド人の男性は、「ここに来ることができてとてもうれしい。きょうフランスに勝ってニュージーランドが優勝し、日本は2位になる」と笑顔で話していました。
ツアーで観戦に訪れたという日本人の女性は、「開幕戦は接戦のいい試合を期待しています。あすトゥールーズに行き、日本の試合も観戦します」と声を弾ませていました。
◆新システム「バンカー」導入
今大会には「バンカー」という新しいシステムが導入されています。
これは、頭部へのタックルなど危険なプレーに対して、レフェリーが、レッドカードで退場にするべきかすぐに判断できない場合、まずはイエロカードを出して、10分間の一時退場をさせ、その間に映像などを使って検証を行いレッドカードかどうか判定します。
試合の流れを円滑にしようという狙いがあり、フランス対ニュージーランドの開幕戦でも、ニュージーランドの選手が蹴り上げられたボールを競り合う際に相手選手と接触したプレーでこのシステムが適用されました。
検証の結果、判定はイエローカードのままでした。
◆ウォーターブレーク実施
ラグビーの国際統括団体、ワールドラグビーは、ワールドカップフランス大会の開幕戦や日本の初戦を含む序盤の試合は厳しい暑さが予想されることから給水による休憩、「ウォーターブレーク」を設けると発表しました。
ワールドラグビーによりますと、大会の序盤は気温や湿度が高くなると予想されることから、開幕戦や日本の初戦のチリ戦を含む序盤の試合では「ウォーターブレーク」を設けるということです。
前後半それぞれプレーが止まるときに休憩時間が与えられ、そのタイミングはレフェリーの判断に委ねられるということです。
「ウォーターブレーク」は気温や湿度の状況に応じてラグビー界で広く採用されていて、休憩が試合の流れにどう影響するかもポイントの一つになっています。
◆ニュージーランド代表“環境に配慮し”高速鉄道で移動
フランス政府やラグビーの国際統括団体『ワールドラグビー』などは、今大会について環境に配慮した運営を目標に掲げ、二酸化炭素の排出量を最小化するために列車での移動に重点を置くとしています。
開幕戦をフランス北部のサンドニにあるスタッド・ド・フランスで戦うニュージーランド代表は、フランスの高速鉄道『TGV』を使ってベースキャンプ地のリヨンからおよそ2時間かけてパリに移動しました。
今大会では観客の移動の88%を電車で行うほか、各チームの移動の80%を電車やバスで行うとしていて、二酸化炭素の排出抑制に努めるとしています。