関係かんけい者しゃによりますと、白はく鵬ほうは痛いためた右みぎひざの状態じょうたいなどから、今後こんご本場ほんば所しょで横綱よこづなとして15日間にちかん土俵どひょうを務つとめることはできないと判断はんだんし、現役げんえきを引退いんたいする意向いこうを固かためたということです。

また、白はく鵬ほうはことし5月つきには、年寄としより名跡みょうせきを取得しゅとくしていますが、親方おやかたになるための正式せいしきな手続てつづきは近ちかく行おこなわれる見通みとおしだということです。

白はく鵬ほうはモンゴル出身しゅっしんの36歳さい。15歳さいで宮城みやぎ野の部屋へやに入門にゅうもんし、天性てんせいの体からだの柔やわらかさに厳きびしい稽古けいこによる力強ちからづよさや卓越たくえつした技わざを兼ね備かねそなえ、平成へいせい19年ねん夏場なつば所しょ後ごに69代だい横綱よこづなに昇進しょうしんしました。

通算つうさんの勝ち星かちぼしは1187勝しょう、優勝ゆうしょう回数かいすう45回かい、横綱よこづな在位ざいいはおよそ14年ねんに渡わたる84場所ばしょでいずれも史上しじょう最多さいたを記録きろくしていて現役げんえき生活せいかつ20年ねんで大だい相撲すもうの記録きろくを次々つぎつぎと塗り替ぬりかえてきました。

おととし9月つきには日本にっぽん国籍こくせきを取得しゅとくし「強つよいお相撲すもうさんを育そだてることが1つの恩返おんがえしだと思おもう」と話はなし将来しょうらいは親方おやかたとして後進こうしんの指導しどうに当あたる意向いこうを示しめしていました。

そのころから白はく鵬ほうは「取とって変かわるような若手わかてが出でてくれば自分じぶんは退しりぞく」と周囲しゅういの関係かんけい者しゃに口くちにするようになりました。

しかし、白はく鵬ほうのあとを追おって横綱よこづなに昇進しょうしんした日馬くさま富士ふじと、鶴つる竜りゅう、それに稀まれ勢ぜいの里さとの3人にんは、いずれも白はく鵬ほうよりも先さきに現役げんえきを引退いんたいし、台頭たいとうする若手わかても脅おびやかす存在そんざいまでには至いたりませんでした。

優勝ゆうしょうや勝ち星かちぼしに関かかわる記録きろくのほぼすべてを塗り替ぬりかえてきた白はく鵬ほうは、ここ数すう年ねん、「東京とうきょうオリンピックを現役げんえきとして迎むかえる」ことを目標もくひょうの1つに挙あげてきました。モンゴル相撲すもうの英雄えいゆうで、レスリングでも前回ぜんかいの東京とうきょうオリンピックに出場しゅつじょうした父ちちのムンフバトさんと同おなじ舞台ぶたいに関かかわりたいという思おもいが理由りゆうでした。

その思おもいの影かげには、ライバル不在ふざいの状況じょうきょうが続つづく中なかで、土俵どひょう外がいのことに目標もくひょうを定さだめるしかモチベーションを維持いじする方法ほうほうがなかった白はく鵬ほうの心情しんじょうが見て取みてとれます。

しかし、ここ3年ねんはけがによる休場きゅうじょうが目立めだつようになりました。両りょうひざに加くわえて、足あしの親指おやゆびなどを相次あいついで痛いため、満身まんしん創そういの状態じょうたいとなります。

それでも、休場きゅうじょう明あけの場所ばしょで優勝ゆうしょうするなど健在けんざいぶりを見みせてきましたが、去年きょねん11月つき場所ばしょまでの12場所ばしょのうち8場所ばしょを休場きゅうじょう。横綱よこづな審議しんぎ委員いいん会かいから「休やすみがあまりにも多おおい」として「注意ちゅうい」の決議けつぎを受うけました。

ひざの皿さらの裏うらにある軟骨なんこつの損傷そんしょうした部分ぶぶんをなめらかにするなどの処置しょちを受うけた白はく鵬ほうは、その後そのご、軟骨なんこつの再生さいせい医療いりょうを取り入とりいれ、4月つきからはひざの周まわりの筋肉きんにくを刺激しげきして強化きょうかするリハビリを行おこない、6月つきには土俵どひょう上じょうで相撲すもうを取とる稽古けいこを再開さいかいしました。

7月つきの名古屋なごや場所ばしょ直前ちょくぜんには関取せきとりの炎ほのお鵬おおとりなどとも申もうし合あいを行おこなって調整ちょうせいし、急ピッチきゅうぴっちな仕上しあげで復帰ふっきの場所ばしょを迎むかえました。

場所ばしょ前まえには、複数ふくすうの関係かんけい者しゃに名古屋なごや場所ばしょで15日間にちかん相撲すもうを取とりきることに強つよい覚悟かくごを示しめしていたほか、宮城みやぎ野の部屋へやの宿舎しゅくしゃに飾かざられた七夕たなばたの短冊たんざくにも「15日間にちかん取とり切きる」と書かき、相撲すもう人生じんせいをかけて場所ばしょに臨のぞみました。

序盤じょばんは、危あぶない場面ばめんもありながら、持ち味もちあじの対応たいおう力りょくと素早すばやい相撲すもうで勝ち星かちぼしをあげ、中盤ちゅうばん以降いこうは力強ちからづよく寄り切よりきる相撲すもうも見みせて初日しょにちから連勝れんしょうしました。

一方いっぽうで、本来ほんらいは右足みぎあしで踏ん張ふんばり左足ひだりあしから踏み込ふみこむのが白はく鵬ほうの立ち合たちあいですが、今こん場所ばしょは、手術しゅじゅつした右足みぎあしへの負担ふたんを考慮こうりょしてか、すべて左足ひだりあしで踏ん張ふんばって右足みぎあしから踏み込ふみこんでいました。

関係かんけい者しゃによりますと、場所ばしょ中ちゅうも毎日まいにち、取組とりくみ後ごには右足みぎあしを中心ちゅうしんに入念にゅうねんなケアを受うけ、疲労ひろうをためないように、朝あさ稽古けいこで稽古けいこ場じょうに降おりない日ひもあったということです。

こうしてすべてをかけて臨のぞんだ復帰ふっき場所ばしょで全勝ぜんしょう優勝ゆうしょうを果はたし、みずからこだわったきた強つよい横綱よこづなとしての貫禄かんろくを示しめすことができたと判断はんだんし引退いんたいを決断けつだんしたものとみられます。

朝あさ青龍せいりゅうが引退いんたいした平成へいせい22年ねんには、初はつ場所ばしょから九州きゅうしゅう場所ばしょにかけて、双葉ふたば山さんの69連勝れんしょうに次つぐ歴代れきだい2位いの63連勝れんしょうを記録きろくしました。

さらに平成へいせい21年ねんと22年ねんは、年間ねんかん6場所ばしょ、90戦せんのうち86勝しょうし、年間ねんかんで4回かいしか負まけないという圧倒的あっとうてきな強つよさを2年間ねんかんも見みせつけました。朝あさ青龍せいりゅうが平成へいせい17年ねんに記録きろくした年間ねんかん勝利しょうり数すうの84勝しょうを上回うわまわるこちらも歴代れきだい1位いの記録きろくです。

秋場所あきばしょの時点じてんで幕内まくうちに103場所ばしょ在籍ざいせき、歴代れきだい1位い、魁皇かいおうの107場所ばしょまであと4場所ばしょまで迫せまっていました。このうち横綱よこづな在位ざいいは84場所ばしょ、横綱よこづな在位ざいい中ちゅうの出場しゅつじょう回数かいすうは1019回かい、さらに横綱よこづな在位ざいい中ちゅうの勝ち星かちぼし899勝しょう、これらも歴代れきだい1位いでまさに記録きろくずくめの相撲すもう人生じんせいでした。

白はく鵬ほうは、ことし5月つきに年寄としより名跡みょうせきを取得しゅとくしていますが、襲名しゅうめいが認みとめられるかどうかは秋場所あきばしょ後ごの「年寄としより資格しかく審査しんさ委員いいん会かい」で議論ぎろんされることになります。

白はく鵬ほうは過去かこに取り口とりくちや言動げんどうが繰り返くりかえし批判ひはんを集あつめているだけに議論ぎろんに影響えいきょうすることも考かんがえられ、親方おやかたになることが承認しょうにんされるかどうかが今後こんごの焦点しょうてんとなります。

一方いっぽう、白はく鵬ほうが親方おやかたになるにあたっては「一代いちだい年寄としより」が認みとめられるかも注目ちゅうもくされていました。成績せいせきや功績こうせきが特とくに優すぐれている横綱よこづなの場合ばあい、しこ名しこなのまま親方おやかたの資格しかくを得える「一代いちだい年寄としより」となることが認みとめられてきました。

これまでに大鵬たいほうと北の湖きたのうみ、それに貴乃花たかのはなの3人にんが認みとめられていて、白はく鵬ほうもかねてから一いち代だい年寄としよりへの希望きぼうを口くちにしてきました。

ただ、ことし4月つき、相撲すもう協会きょうかいが大だい相撲すもうで守まもるべき規範きはんを検討けんとうするために設置せっちした有識者ゆうしきしゃ会議かいぎが提言ていげんをまとめ、その中なかで一いち代だい年寄としよりについて「名乗なのりを認みとめる根拠こんきょは見みいだされない」などと否定ひてい的てきな見解けんかいが示しめされました。

こうしたことから一いち代だい年寄としよりが認みとめられる可能かのう性せいは低ひくいとみられています。