フランス国鉄によりますと、25日夜から26日朝にかけて高速鉄道TGVのパリとフランス北部や東部を結ぶ複数の路線で「破壊行為」があり運行が大幅に乱れています。
またイギリスのロンドンとパリなどヨーロッパの都市を結ぶ高速鉄道「ユーロスター」も影響を受け、複数の便がキャンセルされたということです。
鉄道関連の複数の設備が放火され線路沿いのケーブルが切断されたということで、国鉄のチームが現場に入って被害の状況を確認しています。
復旧には早くても週明けまでかかる見通し
フランス国鉄は復旧に全力をあげるとしていますが、復旧は早くても週明けになる見通しだとしています。
フランス国鉄はSNSで旅行者に向けてメッセージを投稿し「高速鉄道の混乱を目的とした大規模な攻撃を受け、多くの列車が運休することになった。できるかぎり旅行を延期し、駅に行かないようにしてほしい」と呼びかけています。
フランスのベルグリット交通担当相は、SNSに「悪意のある組織的な行為であり、多くのフランス人の移動を危険にさらすこれらの犯罪行為を強く非難する」と投稿しました。
またフランス国鉄のファランドゥ総裁は報道陣の取材に対し「犯行は複数の場所でほぼ同時に行われ、実行犯たちが逃走に使った複数の車両も確認されている」と述べました。
また「われわれには犯行グループに関する情報はなく警察による捜査が行われている」としています。
26日は7月最後の週末前の金曜日で、夏の休暇に出かける人が多くフランス国鉄によりますと、少なくとも乗客80万人に影響が出ているということです。
3か所で複数のケーブルが設置された場所が放火される
モンパルナス駅で記者団の取材に応じたフランス国鉄の責任者は、国内の3か所で運転手に安全情報を伝えたり、線路の切り替えを行ったりするために使われている複数のケーブルが設置された場所が放火されたと明らかにしました。
被害を受けたケーブルはひとつひとつ手作業で修復する必要があるため、復旧には時間がかかるとしています。
その上で、1つの放火で複数の路線や目的地に影響を与える意図があったとして「計画的で計算され、調整された攻撃だったと考えることができる」と述べ、一連の放火は、計画された可能性が高いという見方を示しました。
また、パリとフランス北東部リールを結ぶ高速線のアラス区間で暴力行為が発生し、現地の午前5時15分から交通が乱れているとしています。
五輪開会式は日本時間の27日午前2時半から
パリオリンピックの開会式は26日の午後7時半、日本時間の午前2時半からセーヌ川沿いで行われ、各国や地域の選手たちは船に乗りセーヌ川をおよそ6キロにわたってパレードする予定です。
夏のオリンピックでスタジアムの外で開会式が行われるのは初めてです。
選手たちを乗せた船はおよそ90隻で、下流側の「オステルリッツ橋」を出発し、川岸で大勢の観客が見守るなか、ノートルダム大聖堂やルーブル美術館の前を通過してエッフェル塔の足元にある「イエナ橋」まで進みます。
選手たちはそこで船を降りて式典などが行われるトロカデロ広場に向かうことになっています。
開会式には32万人余りの観客が訪れることが見込まれていて、今月18日からセーヌ川沿いのおよそ10キロにわたって立ち入り制限区域が設けられるなど、厳重な警備が行われています。
式典場近くの「トロカデロ広場」では厳重な警備
パリオリンピックの開会式の式典が行われるエッフェル塔近くの「トロカデロ広場」では、広場に向かうまでの動線がフェンスで囲まれて制限され、入り口付近には金属探知機や荷物のチェックのためのスペースが設けられるなど厳重な警備が敷かれています。
その先にある広場の中心部に入るためにはもう一段階のチェックを受ける必要があり警察や大会スタッフが警戒に当たっています。
ただ、現地時間午前9時半の時点では混乱した様子はなく、報道陣の数もまばらでした。
バッハ会長 22日に”平和の祭典” 意義強調
オリンピック憲章には根本原則として「オリンピズムの目的は人間の尊厳の保持に重きを置く平和な社会の推進を目指すために、人類の調和のとれた発展にスポーツを役立てることである」と記されています。
今回の大会を前にバッハ会長は22日、IOC=国際オリンピック委員会の総会のセレモニーの中で「選手たちはオリンピックという、ひとつ屋根の下で、いかに平和的に共存するかを示してくれるだろう」と述べ、”平和の祭典”とされるオリンピックの意義を強調していました。
仏暫定内閣 アタル首相「影響は甚大かつ深刻」
フランスの暫定内閣のアタル首相は、SNSに「けさ早く、国鉄の施設に対する破壊行為が計画的かつ組織的に行われた。鉄道網への影響は甚大かつ深刻である」と投稿し、深刻な懸念を示しました。
その上で「この犯罪行為を行ったものを発見して処罰するため、情報機関と治安当局が動員されている」として対応にあたっていると述べました。
フランス国鉄 “できるかぎり旅行延期し駅に行かないで”
フランス国鉄はSNSで旅行者に向けてメッセージを投稿し「高速鉄道のまひを目的とした大規模な攻撃を受け、多くの列車がう回や運休することになった。できるかぎり旅行を延期し、駅に行かないようにしてほしい」と呼びかけています。
フランス国鉄 “消防などが現場で対応”
フランス国鉄によりますと、高速鉄道TGVへの「破壊行為」を受けて現在、消防などが現場で対応にあたっているということです。
日本大使館「安全第一で行動を」
パリにある日本大使館はホームページやメールで「高速鉄道TGVを利用予定の人は報道やフランス国鉄の公式ページなどで最新の情報を入手するとともに、警察や係員の指示がある場合には、それに従うなど安全第一で行動してほしい」と呼びかけています。
警察庁幹部「日本人が巻き込まれたという話は聞いていない」
警察庁の幹部はNHKの取材に対し「現在、情報収集にあたっている。今のところ日本人が巻き込まれてけがをしたという話は聞いていない。テロなのかどうかも現時点ではわからない」と話しています。
JOC「選手がけがをしたという情報ない」
日本選手団に同行しているJOC=日本オリンピック委員会の広報担当者はパリ市内のメディアセンターで取材に応じ、「大会組織委員会からの情報もなく詳しいことは分からない。今のところ選手がまきこまれ、けがをしたなどの情報は入っていない。また、現時点で26日に当該の交通機関を利用する予定があったとは聞いていない。引き続き国内とも連携しながら情報収集に努め、対応を検討していく」と話しています。
JOC 日本選手団に注意喚起 TGV利用の見送りなど促す
JOC=日本オリンピック委員会は、パリオリンピックの開会式当日にフランスの鉄道網を狙った攻撃があったことを受けて、日本選手団に注意喚起を行いました。
この中で各競技団体の代表者に対して安全第一で行動するよう呼びかけるとともに、日本大使館の情報をもとに高速鉄道TGVの利用を見送ることなどを促しました。
「なでしこジャパン」TGVでパリ市内へ移動予定
サッカー女子の日本代表「なでしこジャパン」は25日に試合が行われたフランス西部のナントに滞在していて、26日午後、高速鉄道TGVでパリ市内に向けて移動する予定になっていました。
TGVの複数の路線で「破壊行為」があったことを受けた影響についてチームの広報は「これから状況を確認する」と話しています。
サッカー男子 日本代表チーム広報「今のところ影響ない」
サッカー男子の日本代表はパリから南西に500キロほど離れたボルドーで、27日に予選リーグ第2戦のマリ戦を控えていますが、初戦と同じ会場で列車による移動を伴わないことから、チームの広報は「今のところチームの活動には影響ない」と話しています。
TGV乗車の男性「車内は落ち着いた雰囲気」
フランスで高速鉄道TGVに乗車してオリンピックの開会式に参加するため、パリに向かっている途中という30代の男性がSNSでNHKの取材に応じました。
男性によりますと、乗車予定だったTGVは現地時間の26日午前7時ごろ出発予定でしたが、1時間半ほど遅れて出発したということです。
男性は「車内は落ち着いた雰囲気です。破壊行為に関してはそんな雰囲気はありません。フランス人の友人から事故の話を聞きましたが、友人は心配しているような感じではありませんでした。僕自身は破壊行為に関しては全く知りませんでした」と話していました。
観戦に訪れた男性「もっとひどいこと起きる可能性あるのでは」
市民や観光客からは不安の声が聞かれました。
このうちパリ中心部に住む男性は「大会期間中、何かが起きないか心配だ。市内で大勢の警察官が警備にあたっているのはいいことだと思う」と話していました。
また、アメリカのニューヨークから開会式や競技の観戦に訪れたという男性は「大会の開催に抗議する人たちがいるのは知っていたので、決して驚きではない。もっとひどいことが起きる可能性もあるのではないか」と懸念を示していました。
一方、国際自転車競技連合に勤める女性は「鉄道が攻撃されたというニュースは知らなかったが、パリ市内は上空も含めて厳重に警備されているので、安全だと思う。『世界でいま最も安全な場所だ』という人もいるぐらいなので、大会自体への不安はない」と話していました。
フランスの高速鉄道TGVとは
フランスの高速鉄道TGVとは、フランス全土だけでなく、フランスとベルギーやイタリア、それにスペインなども結んでいる高速鉄道です。影響を受けているのは、リールとパリの間だということです。
パリ モンパルナス駅前から中継(日本時間午後5時の放送)
【ヨーロッパ総局の田村銀河記者の中継】
運行に多くの影響が出ているモンパルナス駅の前です。
ここからはフランス西部に向かうTGVを中心に発着していて、パリとほかの地域を結ぶハブの役割を果たしていますが、多くの電車の運行に影響が出ています。
駅の外や構内には新しい情報待つ旅行者の姿があります。
構内では遅延状況を知らせるアナウンスが流れているほか、駅員や大会のボランティアが旅行者に状況を説明しています。
ただ、今のところ、大きな混乱はみられません。
乗ろうとした電車が遅れているという30代の男性は「遅延の原因はわかりませんがパリオリンピックが開幕する日だけに心配です。深刻にならないといいです」と話していました。
こちら現地ではおよそ9時間後にパリオリンピックの開会式が行われる予定で、混乱が広がらないか懸念が出ています。