専門家会合で示された資料によりますと、27日までの1週間の新規感染者数は全国では前の週と比べて1.10倍と増加が続いていて、北海道や東北などを除く35の都府県で前の週より感染者数が増えています。
全国で重症者や亡くなる人の数の増加傾向が続き、一日に亡くなる人の数は過去最多だった2022年夏の「第7波」のピークを超えていて、今後も増加が続くことに懸念を示しました。
医療体制については全国的に病床使用率が上昇傾向となっていて、救急搬送が困難なケースがコロナとコロナ以外でも第7波のピークを超えて医療体制に負荷がかかっていて年末年始の救急医療体制の確保に注意が必要だとしました。
今後の感染状況の短期的な予測では、多くの地域で増加傾向が続くと見込まれ、▽ワクチンの接種や感染から時間がたって免疫のレベルが下がることや、▽より免疫を逃れやすいとされるオミクロン株の「BQ.1」系統の割合の増加、それに▽年末年始で接触機会が増えることなどによる影響に注意が必要だと指摘しました。
また、インフルエンザの感染者数も増加が続くと見込まれ、特に学校が再開する冬休み以降に新型コロナとインフルエンザが同時流行することに注意が必要としています。
その上で、必要な対策について専門家会合はオミクロン株対応のワクチン接種を行うよう呼びかけ、自分で検査できる抗原検査キットを準備して感染に備えるよう求めています。
さらに▽飲食はできるだけ少人数で、飲食時以外はマスクを着用すること、▽換気の徹底、▽症状があるときは外出を控えるといった、基本的な感染対策の再点検や徹底を改めて呼びかけました。
これを受けこの夏の「第7波」では、夏休み中で人の移動が活発になり感染者数も連日、過去最多を更新しましたが、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置といった行動制限は行わず、濃厚接触者に求める待機期間が短縮されました。 そして9月からオミクロン株に対応したワクチン接種が開始されたことや海外で社会・経済活動の正常化の動きが進んでいることなどを踏まえ、▽感染者の全数把握を簡略化や▽患者の療養期間の短縮▽空港での水際対策の緩和など感染拡大防止と社会経済活動の両立を図る対策が打ち出されました。 さらにインフルエンザとの同時流行が懸念された「第8波」では、重症化リスクの低い人は自宅などで抗原検査キットで検査を行い、陽性だった場合はオンラインや電話で受診するなど、医療機関のひっ迫を避けるための対策が本格化し、感染拡大後初めて帰省や旅行について慎重な対応を求めるなどの呼びかけが行われない年末年始となりました。
2022年、新型コロナに感染して亡くなった人の数は28日の時点で3万7843人で、アルファ株やデルタ株が広がった2021年の1万4926人のおよそ2.5倍となっています。感染の第7波のピークだった2022年8月には1か月間に7295人が亡くなり、第8波の今月も、28日までに6584人が亡くなったと報告されています。
2022年前半には、オミクロン株の「BA.1」や「BA.2」が主流となり、感染の第6波を引き起こしました。 その後、感染が爆発的に広がった夏の第7波ではオミクロン株の「BA.5」が主流となり、7月から10月ごろまでは検出される新型コロナウイルスのほぼすべてを占めていましたが、国立感染症研究所の推定では今週の時点で全国で50%ほどに割合が下がっているとみられるとしています。 現在は、これまでの感染やワクチン接種で得た免疫からより逃れやすいとされるオミクロン株の「BQ.1」が35%ほどにまで増加していると推定され、今後も増えるとみられています。 WHO=世界保健機関によりますと、12月4日までの1週間で世界中でゲノム解析された新型コロナウイルスの中で 最も多くなっているのは ▽「BQ.1」で42.5%、 続いて ▽「BA.5」系統が13.4% ▽「BA.2.75」が9.8%、 ▽オミクロン株の複数のタイプのウイルスが組み合わさった 「XBB」が6.1%などとなっています。 この中で懸念されているのが、さらに新たな変異ウイルスが現れることです。厳しい行動制限を伴う「ゼロコロナ」政策を緩和し、感染が急拡大している中国で極めて多くの人が感染した場合、変異を繰り返して、性質の異なる新たな変異ウイルスが生まれるおそれもあると専門家は指摘していて、今後も監視する必要があるとしています。 一方で、取るべき感染対策は大きく変わらず、人と人の接触機会が増える年末年始に向けて、 政府の分科会は ▽オミクロン株対応のワクチンを接種すること、 ▽定期的に窓を開けるなど十分な換気を行うこと、 ▽帰省する人は高齢の親族と接する機会が多くなるため、 事前に検査を受けることなどを呼びかけています。 さらに医療のひっ迫を避けるため、 重症化リスクが低い人は発熱などの症状が出た際、 ▽自分で抗原検査キットを使った検査を検討することや ▽特に年末年始は医療機関の体制が通常とは異なるため、自分の住む地域の医療機関をあらかじめ確認して検査キットや解熱薬を事前に購入して対応するよう求めています。
26日の夜に発熱の症状で受診した50代の女性と20代の男性はPCR検査で陽性が確認されました。クリニックでは10月下旬から受診する患者が増え始め、コロナの感染が確認される人は今月は10月の4倍程度に増えているということです。 この2週間ほどはインフルエンザへの懸念もあって受診する人が相次ぎ、これまでに5人がインフルエンザの感染が確認されたということで、年末年始も休みなく発熱外来を開く予定だということです。
東京 江戸川区にある大手薬局チェーンの店舗では、11月以降、抗原検査キットの販売がこれまでの2倍以上に増えています。28日も午前中から10人以上が買い求めていて、電話での問い合わせも増えているということです。 この薬局チェーンでは今週に入ってから▽前の週より30%以上、販売が増えていて、▽新型コロナとインフルエンザの感染を同時に調べることができる検査キットも40%程度伸びているということです。このチェーンでは今のところ在庫は十分に確保しているということで、年末年始は営業しない店も多いことから、必要な人は早めの購入を呼びかけています。 検査キットを購入した70代の男性は「年末に兄弟の家に遊びに行く予定でその後、老人ホームに入居するのに必要なので初めて購入しました」と話していました。 日本調剤ヘルスケア推進部の薬剤師、黒木眞千子さんは「新型コロナに加えインフルエンザも流行期に入ったことで検査キットの販売が増えている。帰省などに合わせて家族の分を確保しておこうという人が多い印象です」と話していました。
患者が増加したときに入院調整が行われなくなることなどが懸念される一方、濃厚接触者に法律に基づいた行動制限の呼びかけができなくなる影響は少ないなどとしていて、位置づけの変更は必要な準備を進めながら行うべきだとしています。 厚生労働省の専門家会合のメンバーらがまとめた見解案では現在の新型コロナについてオミクロン株になって感染が広がりやすくなっている上死亡者数が多いなど「季節性インフルエンザと同様の対応が可能な病気になるにはもうしばらく時間がかかる」と評価しています。
一方で、▽濃厚接触者に法律に基づいた行動制限の呼びかけができなくなることについてはすでに事実上行われておらず、影響は少ないとしています。そして今後も▽医療がひっ迫したときに調整を行う機能を維持することや▽新たな変異ウイルスによって感染者や死亡者が激増する場合は接触機会を減らす対策を考慮することが求められるとしていて、位置づけの変更は必要な準備を進めながら行うべきだとしています。 見解案は、28日の専門家会合に示され、意見が交わされたということで、脇田隆字座長は年明けにも最終版を公表したいという考えを示しました。
今後、分類が5類になれば医療機関を限定する法的根拠がなくなり、一般の医療機関でも診察や入院が可能となるため医療のひっ迫が軽減されると期待されています。 一方で、新たに患者を受け入れる医療機関には院内での感染リスクを減らす対応が求められるほか、感染対策が不十分な場合など、実際には患者を受け入れることができない医療機関が出てくることも懸念されています。 また、▽病床確保の費用や▽院内感染対策など国が自治体や医療機関に行っている財政支援を継続するかどうかも焦点となっています。
現在、▽入院や検査の費用については現在、感染症法の規定で公費で負担されています。 また、▽外来診療にかかる費用や▽治療薬代なども予算措置で公費負担されていますが、今後、5類になった場合、入院や検査の費用は保険適用以外の費用が自己負担になります。 さらに外来診療の費用などの公費負担も減らすことになれば、高額な治療薬の代金を患者が負担することになるほか、受診控えから感染発覚や治療が遅れてしまうケースも懸念されています。 このため、予算措置で継続するなど段階的に移行すべきだといった意見も出されています。
感染拡大当初から段階的に緩和され、現在、入院勧告は高齢者などに重点化されています。行動制限も患者は最大7日間、濃厚接触者は家庭内などに限定したうえで最大5日間に短縮されています。 5類に見直された場合、入院勧告や行動制限をできなくなるため、医療従事者などが家族などの濃厚接触となって出勤できなくなるケースなどが無くなると期待されています。 一方で、感染した場合には周囲に広げないよう行動することを国民に理解してもらうよう周知をすることが求められます。
厚生労働省は感染症法の見直しと平行して、「まん延予防上緊急の必要性がある」という理由が引き続き該当するかどうか専門家で作る分科会で議論を行っていて今年度中に▽無料接種を続けるかや▽対象者をどうするかについて結論を示すことにしています。
一方で厚生労働省の専門家会合では、新型コロナはインフルエンザと同等と判断できる条件を現時点で満たしていないとする指摘も出ています。 今後、分類を5類に変える場合、厚生労働省は専門家で作る感染症部会にはかったうえで省令改正を行う必要があります。厚生労働省は来月中旬にも感染症部会開く見通しで、年明けの感染状況をみたうえで、見直しの方向性を判断するとしています。
その上で「一定の見解を示そうと、素案を作っていてきょうも議論した。きょうの議論も踏まえて、最終版を公表していきたい。なるべく早くまとめたいと思っているが、年明けになると思う。医療体制に何が必要で、感染者や濃厚接触者、感染していない人にどのような対策が求められるのかなど、整理が必要だ」と述べました。
新型コロナ死者415人 過去最多
2022年新型コロナ対策大きく転換
2022年感染者数 去年の約18倍
2022年死者数 去年の約2.5倍
変異ウイルスの割合が増加
都内の発熱外来 患者増「年末年始慎重な生活を」
「5類」見直しの見解案まとめる
分類見直しの課題
【課題1 医療体制】
【課題2 医療費など公費負担】
【課題3 行動制限】
【課題4 ワクチン公的接種】
【分類見直し 今後は】
脇田座長「対策など整理が必要」