日商 小林会頭「賃上げできるよう環境の整備を」
そのうえで「賃上げを促進し、成長との好循環を実現するには雇用の7割を占める中小企業が持続的に賃上げをできる環境整備が不可欠だ。企業が自発的に賃上げできる原資を確保するためにも生産性向上に向けた支援や取引価格の適正化による価格転嫁の促進が必要だ」と述べ、中小企業が持続的に賃上げをできるよう支援を含めた環境の整備が必要だという考えを強調しました。
そのうえで「どちらの見方にも共通するのは、ことしの賃上げの動きによって日本経済の先行きは全く違ったものになるということだ。日本全体の賃上げを引っ張り上げるのはここにいる企業の皆さんだ」と述べ、経営者らに賃上げを重ねて要請しました。 また、少子化対策について岸田総理大臣は、働き方改革の推進とそれを支える制度の充実が大きな柱の1つになるとしたうえで「女性の就労は確実に増加したが、育児休業制度の強化も検討しなければならず、産業界にもぜひ力をお貸しいただきたい」と協力を呼びかけました。
▽景気がよくなる場合は、+1から+5を ▽悪くなる場合は、-1から-5で予想してもらいました。 そして、「ことし何に力を入れるのか」キーワードも挙げてもらいました。
Q.ことしの日本経済、景気の見通しは? A.ことし上期は緩やかに景気回復し、基本的にはインフレもピークアウトするだろう。製造業を中心に日本の経済はよくなっていくと思う。そのなかで需要が大きく膨らみ、ことし下期にかけて明らかに景気はよくなると思う。 Q.ことし、力を入れたいことは? A.『「うまい」の追求』が重要なテーマだ。コロナ禍の3年間で、極めて高いレベルで、慎重に、賢く消費する客層ができあがりつつある。外食に行く時に、本当にふさわしいところしか行かないという意味で、企業間の競争は激しくなると思う。単なるマーケティングではなく、本質的なレストランのビジネスとしての原点を磨き込む。また、ポストコロナの市場に対応していくためには社員の人材育成が極めて重要だ。料理の品質だけでなく従業員のサービスも含めた品質向上をさせていく。 Q.ことしの賃上げの考え方は? A.社員の生活を守るという観点から賃上げやベースアップは前向きにしっかり検討していく。一方で、業績に連動する賞与は労働組合としっかり協議して決めていきたい。
Q.ことしの日本経済、景気の見通しは? A.アフターコロナを受け、世界経済はずいぶんと落ち着きを取り戻した。航空事業の需要動向は国内線、国際線ともに着実に回復していて、主にビジネス需要には力強さを感じる。ことしの下期、年末にかけて日本の景気はしっかり回復すると期待を寄せている。 Q.ことし、力を入れたいこととして「国際線回復」を挙げた、その理由は? A.国内線はほぼコロナ前の水準に戻りつつある。残る国際線は足元ではコロナ前の5割程度まで戻ってきているが、これをしっかりと100%まで元に戻していくのがこの1年の大きな目標だ。 Q.その国際線にもかかわるインバウンド需要の回復の見通しは? A.訪日需要は間違いなく勢いを取り戻すと感じている。韓国や台湾、オーストラリアなどからはどんどん伸びている。ことし中にはコロナ前をりょうがするまで伸びてくるかもしれない。コロナ前、全体の3割ほどを占めた中国はゼロに近い状態だが、中国からの旅行者がどの程度戻ってくるかが今後を見極める材料になる。 Q.ことしの賃上げの考え方は? A.ベースアップについては、コロナ禍で傷んだ財務基盤の回復などとの兼ね合いを見ながら、議論をしていきたい。従業員のエンゲージメント(会社への愛着や貢献したい気持ち)なしには事業そのものが成り立たないので、できるだけ従業員の労苦に報いていきたい。
Q.ことしの景気の見通しは? A.アメリカを中心にリセッション=景気後退が大きな話題となっている。欧米についても、ゼロコロナ政策から距離を置いた中国についても何が起きるか分からない。それに比べて日本経済はしっかりとした形の成長が頑張ればできるのではないかという期待を込めた。 Q.ことし、力を入れたいことは? A.「備えて攻める」だ。この1年、想定外の想像を超えるようなことがさまざま起きた。これからの時代はそのようなことに対してどう備えていくのか、どう前向きに取り組んでいくのかが必要だ。発想豊かに準備をし、必要なところに投資をどう展開していくのかという点に本格的に取り組む1年だと考えている。 Q.賃上げの考え方は? A.基本的には急激な物価高騰が起きているのは確かなので、そこに対し、しっかりした対応をすべきだ。企業の成長と分配、賃上げについてこの30年間できなかったものではなくて、慣例にとらわれずに新しい考えで具体的な賃上げのやり方や人への投資などについてオープンに議論することが重要だ。
Q.ことしの日本経済、景気の見通しは? A.下期になってより回復度合いが強くなると見ている。ロシア・ウクライナ問題とそれに関連する原材料高、アメリカを中心としたインフレと金利高、中国のゼロコロナ政策からの転換に伴う混乱という、3つの要素がいつ回復に向かうかがポイントだ。少なくとも、アメリカと中国の動向は下期には回復すると見ている。この2つの大国が経済回復することになれば、日本経済も追い風が吹くと見ている。 Q.ことし、力を入れたいことは? A.世界中の経済が苦しんでいる中だからこそ、日本経済は今が復調のチャンスだととらえて『変革』を進めていくことが必要だ。成長に対する投資、とりわけ人に対する投資が非常に重要で、昨年、組合員平均で6%の賃上げを行ったが、かなり大きな賃金アップをしたのもそのあらわれで、将来の成長に向けた投資はこれからも継続していく。 Q.ことしの賃上げの考え方は? A.成長投資のための賃上げなので、どのくらいの成長を見込むかも関係してくる。従業員に将来のための投資を行う。そして従業員が頑張ってくれて会社の業績を押し上げてくれれば次の賃金アップにつながる。そういう業績と賃金の好循環をつくるのが、経営者として一番大きな務めだ。
Q.ことしの日本経済、景気の見通しは? A.物価高は若干警戒しているが、新型コロナからの回復需要はまだまだ取り込める余地があるし、日本は欧米に比べてあとになって出てくるので、ことしは期待している。 Q.ことし力を入れたいことは? A.将来の低炭素社会に向けた事業開発や研究投資を進めていく必要があるので、時間軸をよく意識して、今と将来の両方をにらみながら『現実解』を提供することが非常に大事だ。 Q.ことしの賃上げの考え方は? A.企業として発展し、その結果として出た成果を従業員に還元していく形で報酬レベルを上げていきたいというのが基本的な考え方だ。専門性を深めた人たちには報酬を高めていくことを組み合わせていきたい。 Q.ロシアによるウクライナ侵攻でLNG=液化天然ガスなどのエネルギー需給が世界的に厳しいことについて資源ビジネスを手がけている会社として見通しをどうみるか? A.引き続きエネルギーの需給関係は不確実性が高いと思うので、この1年間も脇をしめる対応が必要だ。とにかく調達を分散してバックアップのサプライチェーンをいかに構築していくかが大事だ。
Q.ことしの日本経済、景気の見通しは? A.基本的には、緩やかに回復していく。サービスを中心に個人消費も強く、企業の業績もまあまあで、設備投資にも強さがある。さらに、インバウンドの回復や政府の経済対策もあるので、こういう見方にさせていただいた。 Q.ことし力を入れたいことは? A.『デジタル・グリーン・カルチャー』の3つだ。デジタルは、コロナ禍でものすごく加速したと思う。価値観やお客さまのニーズもどんどん多様化しているので、われわれもデジタルによっていろいろなサービスを提供できるようにしたい。グリーンについては、気候変動の問題がかなり議論として進んでいる。 Q.ことしの賃上げの考え方は? A.賃上げについては、物価高もあるので組合からの要求を聞きながらきちんと対応していく。ただ賃上げだけがすべてではなく、社内で副業みたいな仕事を増やし、社員が成長できる機会を提供するということも含めて大きな意味での人的投資をやっていきたい。 Q.去年は急速に円安が進んだがことしの為替をどう見るか? A.為替はまだ揺れ動くと思うが、去年あれだけ動いたので、一定の範囲の中での動きになるかなとは思う。基本的には、大きな変動というよりは、安定した動きがいい。 Q.ことしの株価の見通しは? A.私自身はそれほど悲観的ではない。日本はゆるやかな成長とみているし、アメリカの経済もそれほど大崩れはしないのではないか。リスクを言うとすれば、アメリカのインフレが長期化してうまくコントロールできないということが起きることが一つのリスクだ。
Q.ことしの日本経済、景気の見通しは? A.まだまだインフレは続くと思う。上期はサプライチェーンをはじめとした物価上昇で大変厳しい状況になるが、下期に少しずつよくなってくると思う。 Q.具体的には? A.すでにプライベートブランドや安いものへという志向が続いている。その中でも4月を中心に賃上げが徐々に起こり、少しずつよいものを買いたい、おもしろいものを買いたいというふうになってくるのではないか。 Q.ことし力を入れたいことは? A.『イノベーティブな商品作り』により注力しなければならない。デジタル化などで行動変容が起こっているので、客の心理をしっかりと読み、客が驚くようなおもしろい商品づくりを進めていきたい。 Q.ことしの賃上げの考え方は? A.6%を超えるレベルにぜひしていきたい。ベースアップも今までと違うレベルのものを考えていく。インフレで社員の生活レベルが下がってきている。それを支えるのが経営として必要なことじゃないかと思う。イノベーションを起こすためには活力ある会社にしなければならない。そのための賃上げは経営者としては大変重要な『人への投資』だ。
この中で経団連の十倉会長は、企業の間で賃上げの機運が高まりつつあるとしたうえで「ことしは優秀な人材がほかの会社や業界にいかないように賃上げを行う、いい意味での賃上げ競争のようなものが起きてくるかもしれない」という見方を示しました。 そして「賃上げの動きを一過性で終わらせないためにも硬直的な労働市場を少しでも緩めていくような取り組みだ必要だ」と述べ、継続的な賃上げには転職などを通じて人の移動が進んでいくことが重要だという認識を示しました。 一方、経済同友会の櫻田代表幹事は、岸田総理大臣が4日の記者会見で物価上昇率を超える賃上げの実現を目指す方針を示したことに関連し、「インフレ率を超えていくようなベースアップ、賃上げが平均値において達成できるかというと数値的には簡単ではないと思う。経済同友会でも8割の企業は賃上げに前向きだが、金額や引き上げ率については極めてばらつきがある」と指摘しました。 さらに日本商工会議所の小林会頭は、中小企業が大手企業などとの取り引きで製品やサービスの価格を適正に転嫁し、賃上げの原資を確保できるよう、経済3団体が共同で呼びかけていく方針を明らかにしました。
岸田首相 経営者らに賃上げを重ねて要請
企業トップに聞く「ことしの景気」
「すかいらーくホールディングス」谷会長兼社長【景気予想+4】
「『うまいの追求』が重要なテーマ」
「ANAホールディングス」芝田社長【景気予想+3】
「国際線を100%まで元に戻していく」
「IHI」満岡会長【景気予想+2】
「想像を超えることに対して『備えて攻める』」
「AGC」平井社長【景気予想+2】
「『変革』を進めていくことが必要だ」
「三井物産」堀社長【景気予想+2】
「今と将来の両方をにらみながら『現実解』を」
「三菱UFJフィナンシャル・グループ」亀澤社長【景気予想+2】
「『デジタル・グリーン・カルチャー』の3つだ」
「サントリーホールディングス」新浪社長【景気予想+1.5】
「『イノベーティブな商品作り』により注力」
経済3団体のトップが会見 経団連「賃上げ競争も」