黒田総裁は記者会見で「市場機能の改善を図り、より円滑なイールドカーブ(利回り曲線)全体の形成を促していくため」「金融緩和の効果が企業金融にスムーズに及ぶようにするため」などと説明しましたがこれだけだとよくわかりませんよね。
要はYCC(イールドカーブコントロール)の副作用を無視できなくなり、これを修正しなければ金融政策の効果に影響が及ぶと考えたわけです。
日銀はそれまで国債を大量に買うことによって長期金利(10年ものの国債の利回り)を0.25%以下に抑え込んできました。 しかし欧米の相次ぐ利上げで、日本でも長期金利に上昇圧力が高まり、12月時点のイールドカーブは下の図のような形をしていました。 イールドカーブ(利回り曲線)は、期間が短い国債の利回りから期間が長い国債にかけて利回りが変わっていく形を描いた曲線で、通常は期間が長くなるほど利回りは高くなります。
この10年ものの国債の利回りは、社債などさまざまな取り引きの基準になっているので、このままでは企業が社債を発行するときに適切な金利の水準がわからなくなってしまうといった弊害が出てくるのではないか。 日銀はこう考えて金利の変動幅を引き上げたわけです。 ただ、12月の前の10月の会合では、委員全員が「金融市場調節方針と整合的なイールドカーブが形成されている」という認識を示していたほか、市場のゆがみへの強い懸念も目立った形ではみられず、市場は今回の決定を唐突なものだと受け止めました。
今回の日銀の政策修正について、アナリストなど債券市場の関係者10人に取材したところ、全員が「マーケットから見れば、変動幅の修正は事実上の利上げにあたる」という認識を示しました。 このうちみずほ証券の丹治倫敦チーフ債券ストラテジストは、「上限が引き上げられたとしても、市場が次の修正を催促して、イールドカーブのゆがみが修正されないということは、当然、日銀も想定できていたはずだ」と指摘します。
下の図は、いまのイールドカーブの形です。 13日の債券市場では国債を売る動きが強まり、長期金利は0.545%まで上昇。 日銀が先月引き上げた0.5%の上限を初めて上回りました。 しかし依然として期間が7年から9年の国債の利回りを下回り、10年のところが不自然に落ち込む“ゆがみ”は残ったままです。
東短リサーチの加藤出チーフエコノミストは、「12月にYCCの上限を突然動かしたため、マーケットは次もまた修正するのではないだろうかと疑心暗鬼になる。日銀には計画的な出口政策の第一歩だというつもりがなかったとしても、マーケットはYCCが限界に近づいているのではないか、終わりの始まりなのではないかと、解釈するようになる」と指摘します。
財務省が1月4日に発表した対外・対内証券投資によると、海外勢は日銀の政策修正をはさんだ12月18日から12月24日までの1週間で、日本の中長期債を大きく売り越しています。 その金額は、4兆8000億円余りと、前の週の10倍以上に拡大しています。 日銀が政策を修正すると長期金利が上昇し、国債価格は下落するだろう。 それを見越して、日本国債を売っておく。 このように考える海外の投資家が増えていることが統計からもうかがえます。
市場が注目しているのが「OIS」(オーバーナイト・インデックス・スワップ)のデータです。 OISというのは、固定金利と変動金利を一定期間交換する「金利スワップ」と呼ばれる取り引きの1つです。 変動金利については「無担保コール翌日物金利」を参考にします。 「無担保コール翌日物金利」は、コール市場と呼ばれる多くの金融機関がお金を貸し借りする市場の代表的な短期金利の指標で、日々変動しています。 これと交換する固定金利はOISレートとも呼ばれ、金融機関どうしがお金を貸し借りする際に、その返済期間ごとにあらかじめ相対で決めておく金利です。 この金利を決める際に、各金融機関がさまざまな分析に基づいて日銀の政策金利がどうなりそうか、いわば予測することで、金利の水準をはじき出していて、ここから市場が日銀の金利をどう見ているかを確認できます。 このデータをもとにつくられたグラフです。
翌日物の金利を1か月間でならした平均が今後2年で0.5%を超えるという見方も織り込んでいます。 みずほ証券の丹治チーフ債券ストラテジストは「市場はマイナス金利の解除というだけでなく、さらにどんどん利上げしていくところまで織り込んでいる。OISは、海外の参加者が多く、投機筋も多い指標であることに留意する必要はあるが、市場が日銀の政策を先に、先に、どんどん織り込んでいく中で、イールドカーブの歪みが解消するのは難しいのではないか」と説明します。
10年を超える国債の多くは、生命保険各社が購入しています。 日本生命、第一生命、明治安田生命、住友生命の生命保険大手4社の運用担当者に聞いたところ、いずれも小幅ではあるものの、金利水準は今よりは上がるという見方を示していました。 ある大手生命保険会社の担当者は「日銀のさらなる政策修正が見込まれるため、超長期の金利は上昇方向に向かうとみている。ただ、債券市場を長らく見てきた我々もこれまで国内で金利が上がる局面は経験したことがない。30年以上前の経営資料などを倉庫から引っ張り出してきて、当時の状況を勉強しながら、今後の運用方針について検討しているところだ」と話していました。 実際、各社では外国債券から、国内債券に運用資産を切り替える動きも加速しています。
ただ、日銀は今回の修正はあくまで金融緩和の一環だという姿勢を貫いています。 この結果、日銀の説明と、市場の“思惑”との間には大きな乖離が生まれています。 1月17日と18日に金融政策決定会合を開きますが、そこで市場とどう向き合うのか。 次の手はあるのか。 どうする日銀! 金利の動向は住宅ローンや企業への貸し出しにも影響を与えることになるので国債や金利をめぐる日銀と市場との攻防に引き続き注目です。
足元の物価の上昇を踏まえ、賃上げについてどのような姿勢を示すか注目されます。 また、18日(水)は、日銀が金融政策決定会合を開き、その後、黒田総裁が会見を開く予定です。 黒田総裁が任期中に行う決定会合後の会見は、これを含めてあと2回。 金融政策を巡り、前回のような“サプライズ”があるのか、市場の関心が集まっています。 さらに、20日(金)には、総務省が消費者物価指数を発表する予定です。 4%台に到達するという見方もある中、物価がどこまで上昇するかも焦点です。
市場の“ゆがみ”とは?
“ゆがみ”は依然残る
海外勢は日本国債売りのスタンスに
マイナス金利の解除も?
超長期債は?
日銀はどうする?
来週の予定
なぜ突然の政策修正?
そもそもなぜ日銀は政策修正を行ったのか。
12月28日に公表された「主な意見」を見てみると、会合では政策委員から、「10年ものの国債の価格形成にゆがみが生じている」「債券市場の機能が低下した状態が続けば、企業の社債発行などの環境に悪影響を及ぼし金融緩和の効果の波及を阻害するおそれがある」といった懸念の声が相次いでいたことがわかります。
それでは政策委員の言う「国債の価格形成のゆがみ」とは何なのか。
当時のイールドカーブを見ると10年もの国債の利回り近辺だけが不自然に落ち込み、ゆがみが出ていたことがわかります。
ずいぶん前置きが長くなりましたが、ここからは市場の見方を紹介します。
ゆがみが修正されないとはどういうことなのか。
ゆがみが残るイールドカーブの現状をどう見ればよいのか。
海外の投資家の取り引きデータからもこうした傾向をうかがうことができます。
市場はさらに先まで織り込んでいます。
データを見ると、去年12月の政策修正を受けて、OISレートをもとに算出した金利が幅広い年限で大きく上昇。
一方、10年を超える期間の長い国債、いわゆる「超長期債」についての市場の見方も聞いてみました。
この先に市場が見る世界は、短期から超長期にわたって金利が上昇するという姿です。
来週17日(火)は、ことしの春闘で経営側の指針となる経団連の基本方針が発表されます。
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外国為替市場で一時、1ドル=160円台と、34年ぶりの円安を記録する中、円相場に大きな影響を及ぼす、アメリカのFRB=連邦準備制度理事会の金融政策を決める会合が30日から始まります。会合後の記者会見でパウエル議長が利下げに慎重な発言をすれば、一段と円安が進みかねないだけに、会見の内容が注目されます。
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Source: NHK
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