自治体などに義務づけられた5年に1度の点検が2巡目に入る中、当初は問題なかった橋が「修繕が必要」とされるケースが相次いでいることが背景にあります。
笹子トンネルの事故後、国は自治体などに5年に1度の点検を義務づけ、2019年3月までにいったん終わり、現在は2巡目に入っています。
群馬県の中之条町にある全長およそ70メートルの「吾嬬橋」は、2度目となる2020年の点検で、橋桁の木の部分が複数個所で腐食し、穴が開いていることがわかりました。
4段階のうち最も状況が悪い「緊急の措置が必要」だとして、通行止めが続いています。
6年前、2015年に行われた1度目の点検では腐食は確認されず、4段階のうち、2番目に状況のよい「修繕は必要ない」という判定でした。
理由について、町は、老朽化が進んで防腐処理が効かなくなり急激に腐食したのではないかとみています。
これまでの点検で、町は、吾嬬橋も含めた41の橋を修繕する必要があるということですが、一般的に、橋を直すのに1000万円前後かかるという予算上の問題もあり、34の橋で工事が始まっていないということです。
中之条町の関洋太郎建設課長は「予算が厳しい中、修繕が必要な橋が増えていくのは大きな負担だ。橋の廃止や、2つの橋を集約するなど、優先順位をつけて考えていく必要があると考えている」と話していました。
インフラメンテナンスに詳しい日本大学工学部の岩城一郎教授は、専門的な技術を持った人でなくても“予防保全”の取り組みができると指摘しています。 岩城教授によりますと、橋の老朽化を進行させる大きな要因は「水」だということです。 例えば、台風や大雨で、泥や落ち葉などが橋の排水溝に詰まると、水が流れなくなり、橋の上に水たまりができます。 その結果、ひび割れの部分から水が入ってしまい、コンクリートの劣化を早めてしまうということです。 こうしたことを防ぐためには、 ▽大雨のあと、橋の付近にたまった泥や落ち葉を取り除いて、排水溝に水が流れやすいようにすることや、 ▽橋の欄干のはがれた部分の塗装をすることでも、効果はあるということです。 岩城教授は「『予防保全』の取り組みは、専門的な技術を持っていなくてもできることが多く、自治体の職員が対応したり、地域の住民に協力してもらうということも方法の一つだ。すでに実践している自治体もあり、こうした例が広がっていくことを期待したい」と話しています。
「全国道路構造物情報マップ」いわゆる「損傷マップ」には、国が法律で義務づけている5年に1度の点検で、4段階のうち、 ▽最も老朽化が進み「緊急の措置が必要」とされたものが、赤色で、 ▽「早期の措置が必要」とされたものが、黄色で、 示されています。 地点をクリックすると、点検した年や、すでに措置が行われているのかなども表示されるようになっています。 都内では、葛飾区の国道298号線にある「葛飾大橋」の上りが「緊急の措置が必要」とされました。 管理する国の事務所によりますと、応急的な措置を行ったうえで、異常がないかカメラで監視するなどの対策を終えていて、速やかに修繕に取りかかるとしています。 また、国道20号線「甲州街道」の下高井戸駅付近の複数の歩道橋では、橋の一部で漏水がみられるなど「早期の措置が必要」な状況となっていますが、修繕は終わっていません。 国土交通省は、マップで「緊急措置」や「早期措置」が必要とされていたとしても、応急的な措置を行っているため、直ちに危険をおよぼすことはない、としています。 インフラメンテナンスに詳しい日本大学の岩城教授は「自分が住んでいる地域に、まだ修繕が終わっていない橋などがあるかどうか認識してもらうことが重要だ。そのうえで、例えば段差が新たにでき、ガタンガタンと音がするなどの異常に気付いたら、すぐ自治体に通報してほしい」と話していました。
専門家 “住民も参加し予防保全の取り組みを”
インフラ「損傷マップ」ネットで公開