世界で最も有名な中世の芸術作品と呼ばれることが多いバイユーのタペストリー。ノルマン人による1066年の英イングランド征服に至る出来事を精緻に描いたものであると同時に、歴史上の謎でもあります。この魅惑の刺繍(ししゅう)には作者の身元を含め、いくつか不明点が残っているものの、新たな研究でパズルのピースがまた一つ見つかった可能性があります。
長さ68.3メートルのタペストリーには、ノルマンディー公ウィリアムとその軍隊がヘースティングズの戦いでイングランド最後のアングロサクソン王、ハロルド2世を殺害する様子が描かれています。ハロルド2世が目から矢を引き抜く描写には議論があるかもしれませんが、考古学者のチームは今回、タペストリーに描かれた別の細部、すなわちイングランド・ボシャムにあった王の邸宅の場所を確認しました。
研究チームは新旧の手法を組み合わせ、王宮の場所の特定を試みました。王宮はタペストリーに2度登場します。1度目はハロルド2世がフランスへの出航前に豪奢(ごうしゃ)な屋敷で宴会に興じている場面、2度目は戦闘を前にした帰還の様子です。研究チームは1月9日、学術誌アンティクエリーズ・ジャーナルに調査結果を発表しました。