契約の打ち切りを通知したのは、首都圏の幼稚園や保育園を中心に送迎バスの運行管理を請け負う、東京 港区の「みつばモビリティ」です。
会社によりますと、横浜市や川崎市、東京など首都圏の30以上の幼稚園や保育園に対し、来月いっぱいで運転手の派遣を含めた契約を打ち切るという通知を先月末に書面で送ったということです。
理由について、会社は運転手の高齢化による定年退職やほかの会社への転職が相次いだほか、新規の採用で補うこともできず、深刻な運転手不足に陥ったためと説明しています。
契約は1年ごとの更新で解除は2か月前までに申し出ればよいことになっていますが、通知を受けた幼稚園では運転手を派遣できる別の会社を急きょ探さざるを得なくなり、対応に追われて戸惑いが広がっています。
会社では、定年退職する運転手を施設側に直接雇用してもらうなど、今後の対応策について社員が直接、施設に出向いて説明したいとしています。
送迎バスの運行などを請け負う会社で作る日本自動車運行管理協会によりますと、時間外労働の規制が強化された、いわゆる「2024年問題」の影響で人材の確保は一層厳しくなり、求人を出しても応募が少ない状況もみられるということです。
会社の担当者は「ぎりぎりまで採用活動を行ってきたが、運転手の高齢化や『2024年問題』の影響もあって運転手の確保が非常に難しくなった。関係者には申し訳ない」と話しています。
戸惑いの中 対応に追われる幼稚園
運転手の派遣を打ち切るという通知を受けた幼稚園は戸惑いの中で対応に追われています。
川崎市川崎区にある東三輪幼稚園では、先月末、「みつばモビリティ」から1枚の通知が速達で届きました。
通知には「業界全体を取り巻く運転手不足や高齢化、人件費の高騰などの影響」という理由とともに、来月いっぱいで運転手の派遣を含めた送迎バスの運行管理契約を打ち切ると書かれていました。
園長は突然の通知に驚くしかなく、4月以降の送迎バスの運行をどうすればよいのか、不安が押し寄せたといいます。
三輪哲也園長は「事前に相談もなく、びっくりしました。20年余りこの会社に運転をお願いしてきた中で初めてのことで、送迎ができなくなったらどうしようととても心配になりました」と話していました。
この幼稚園では園児の3割近くにあたる30人余りが送迎バスを利用しています。
三輪園長は知り合いの幼稚園に問い合わせるなどして、4月から送迎バスの運転手を派遣する別の会社をなんとか探し当てましたが、先行きへの不安はつきません。
三輪園長は「送迎バスのない幼稚園はほとんどありません。世の中でいろいろとドライバー不足の情報が流れているので、今後も確保し続けられるのかという心配はつきまといます」と話しています。
このほか、同じように契約打ち切りの通知を受けた川崎市内の2つの幼稚園でも別の会社を探して運転手を確保するなどの対応に追われているということです。
専門家「各地で起きるおそれ」
幼稚園などの送迎バスの現状を調査している横浜市立大学の黒木淳教授は、事業者による送迎サービスからの撤退は各地で起きるおそれがあると指摘しています。
黒木教授は「大多数の幼稚園が送迎サービスを行っていて、園の運営においても園を選ぶ保護者にとっても重要な位置づけになっている」としたうえで、「労働人口じたいが減ってきているので、横浜や川崎以外の地域でも運転手が不足して、施設によってはサービスを維持できなくなるおそれがあると思う。子どもの送迎など代替手段の少ない送迎サービスの維持については、今後よりいっそう社会的な課題として表面化してくると考えている」と話しています。