なぜ協議打ち切りに?
両社の協力関係は?
ホンダは今後の戦略をどう描く?
日産はどう経営立て直しを図る?
経済部 自動車担当の鈴木啓太記者の解説です。
【解説動画 3分41秒】なぜ統合協議打ち切りに
※13日16時台に放送しました。
動画はデータ放送ではご覧になれません。
Q.どうして協議を打ち切ることになった?
協議の中で、両社に埋めがたい深い溝が生まれたためです。ホンダは統合協議の前提条件として、日産の経営立て直しを強く求めていました。しかし、日産が示した対策は踏み込み不足だとして、経営陣の意思決定のスピードの遅さにも不満を募らせていました。このため、ホンダは経営の主導権を強めようと、日産を完全子会社化する案を打診し、この案を受け入れられなければ、協議を打ち切ると迫りました。
一方の日産もホンダ主導の経営統合は受け入れていたものの、そこに突然、ホンダから子会社化の提案があったことが決定打となりました。実質的にホンダに支配される形になるのは到底受け入れられないとして、協議は物別れとなった形です。
両社はリリースの中で協議を見送った理由について「意思決定や経営の施策実行のスピードを優先するためには、経営統合の実行を見送ることが適切であると判断した」としています。
Q.両社の協力関係はどうなる?
今回の統合協議のねらいには「規模の拡大」による開発力の強化やコスト削減がありました。しかし、協議の打ち切りによって幅広い分野での効率化は難しくなり、いわば振り出しに戻った訳です。
一方で、両社は統合協議の前から進めていたソフトウエアの共同研究などの一部の技術開発では協業を続けることにしています。さらにこの枠組みには、三菱自動車工業も加わることを検討しています。しかし、ホンダと日産の間には、すでに大きな溝が生まれたうえ、あくまで協業の形で、有効な枠組みとなるかは不透明です。
Q.ホンダは今後の戦略をどう描く?
統合のねらいだった「規模の拡大」による競争力の強化に向けて、新たな提携先を模索することになりそうです。
ただ、海外を含めて大手の自動車メーカーの間ではすでに提携の動きが広がっています。これまで独立路線をとってきて資本提携に踏み込んだことがないホンダが新たな相手を探すことは難しいという指摘もあります。
それだけに次の一手をどう打つのかが焦点となります。
Q.日産はどう経営立て直しを図る?
業績の悪化が続く中、過剰な生産体制の見直しや、コスト削減などを着実に実行し、収益を改善させることが差し迫った課題です。まずは、去年11月に公表した、生産能力の見直しや大規模な人員削減をスピード感を持って実行していく必要があります。ただ、それだけでは先細りするだけですので、先を見据えた成長戦略をどう描くかが問われることになります。
また、日産の経営に参画しようと水面下で検討していた台湾の大手電子機器メーカー、「ホンハイ精密工業」の出方も焦点です。ホンハイの会長は12日、日産の筆頭株主のルノーと協議したことを明らかにしました。日産の株式取得についても話し合ったとする一方、買収ではなく協力が目的だという考えを示してはいます。ただ、過去に日産の株式の取得を検討していただけに、今後の動向が注目されます。