ある村に、仲良しの百姓夫婦が住んでいた。この亭主はひどく臆病者で、夜中に一人で小便に行くことすらできなかった。
女房は亭主の臆病を治してあげようと、夕顔の花が化け物の正体だよ、と嘘を付いた。これを信じた亭主の臆病は、すっかり治ってしまった。
この年の夏も過ぎたころ、村はずれの野原のあたりに夜な夜な化け物が出るようになった。亭主は、きっと化け物の正体は夕顔の花だろう、と言って、化け物を捕まえに出かけた。
その化け物が「おぶさりてぇ~、おぶさりてぃ~、ばろ~ん」と言うので、亭主はおぶって家へ連れて帰った。怖がる女房を尻目に、亭主は床の間に化け物を下ろし、そのまま疲れて寝てしまった。
翌朝、目を覚ますと床の間には大きな金の山があった。昔、このあたりは金の採掘をしていた所なので、きっと堀り残された金が、誰かに使ってほしくて化け物になって現れたのだろう。
金は役所に届けたが、全部夫婦の物となり、大変な長者になったそうな。