警視庁によりますと、ことし1月11日の未明、渋谷区初台の高齢者夫婦の住宅に押し入り、現金2000万円余りを奪ったうえ、けがをさせたとして強盗傷害などの疑いが持たれています。周辺の防犯カメラの解析などから4人を逮捕しました。
この家には事件の2日前、息子を装って「取り引きでトラブルが発生した」と言って、家にある現金の額を聞き出す「アポ電」がかかっていて、警視庁は多額の現金があることを知って押し入ったとみて調べています。
調べに対し、4人はいずれも容疑を否認しているということです。
都内ではことし2月にも「アポ電」のあと、家に押し入る強盗事件が2件発生し、このうち江東区では80歳の女性が口などを塞がれて死亡していて、いずれも実行犯らが逮捕・起訴されています。
“アポ電強盗” とは
「アポ電強盗」は、詐欺グループが家に現金がいくらあるか聞き出す「アポ電」をかけたうえで住宅に押し入り、金品などを奪う行為です。
息子などを装って電話をかけ「会社の小切手を入れたカバンをなくし、会社のお金を補填(ほてん)しなければならない。今、自宅にはいくらのお金があるか」などと言って、資産状況を聞き出そうとします。
そして「携帯電話の番号が変わった」と、新しい番号を伝えていて、詐欺グループはそれ以降のやり取りをしやすくするねらいがあるとみられています。
ことし2月、東京 江東区のマンションに住む80歳の女性が「アポ電」がかかってきたあと、押し入った男らに口などをふさがれて死亡した事件などを受けて、警察庁は「アポ電」について、初めての実態調査を行いました。
ことし4月から6月までの3か月間に把握された「アポ電」の件数は全国で3万5289件にのぼり、東京、埼玉、大阪、千葉、神奈川の順に多く、5つの都府県で全体の60%以上を占めました。
アポ電のあとに住宅に押し入って強盗事件になったケース、いわゆる「アポ電強盗」は平成29年以降、全国で7件確認されているということです。
相次ぐ「アポ電強盗」
「アポ電強盗」は、ほかにも相次いでいました。
ことし2月1日には、渋谷区笹塚の住宅に3人組が押し入り、高齢の夫婦を結束バンドで縛り、現金400万円などを奪って逃走しました。
事件の2日前には、息子を装って「仕事のミスで金が必要だ」と言って、家にある現金の額を聞き出す「アポ電」がかかっていました。
この事件では、いずれも住所不定の小松園竜飛被告(28)、須江拓貴被告(22)、寺島健太被告(33)が逮捕され、強盗などの罪で起訴されました。
被害者の資産状況などを実行犯に流した情報提供者の男も逮捕されました。
2月28日には、江東区東陽のマンションで、加藤邦子さん(80)が口をふさがれ手足を縛られて死亡しているのが見つかり、ここにも「アポ電」がかかっていました。
渋谷区笹塚の事件で逮捕された小松園被告と、須江被告、それに地元の同級生だった酒井佑太被告(23)が逮捕され、強盗致死などの罪で起訴されました。
いずれも今回の渋谷区初台の事件とは異なるグループでした。
警視庁は、複数の詐欺グループが手口を強盗に切り替え、実行犯を入れ替えながら事件を起こしていたとみて調べています。
防犯カメラに不審な男ら
渋谷区初台の現場付近では、防犯カメラに不審な3人組が映っていました。
この映像は、ことし1月11日の午前3時半ごろのもので、フードをかぶった3人組が被害にあった住宅から、近くの商店街のとおりに出てくる姿が確認できます。
その後しばらくすると、3人組は再び住宅のほうに戻っていきました。
強盗事件はこの1時間前に起きていて、警視庁が関連を調べています。
近隣住民 容疑者逮捕に安ど
現場近くの住民からは、事件から8か月余りが経過して容疑者が逮捕されたことに安どの声が聞かれました。
商店街で八百屋を営む70代の男性は「1月に強盗事件が起きてから不安な日々が続いていたので、逮捕されたと聞いてほっとしました。戸締まりはもちろんですが、電話でも個人情報を言わないなど気をつけていきたいです」と話していました。
クリーニング店を営む70代の女性は「事件の後、被害者の夫婦のことを心配していましたが、逮捕されて不安感は減りました。容疑者には、こんなひどいことをしないでしっかり働いてほしいと言いたいです」と話していました。