核融合ベンチャーの米コモンウェルス・フュージョン・システムズ(CFS)は17日、「世界初」となる商用の核融合発電所を米バージニア州リッチモンド近郊に建設すると発表した。2030年代初めまでに発電を開始するとしている。
CFSのマムガード最高経営責任者(CEO)によると、運転開始後は400メガワットの出力で約15万世帯に電力を供給する。
同氏は「電力網で利用できる規模の核融合発電が実現するのは世界で初めてだ」と語り、バージニア州のヤンキン知事は「バージニアと世界全体にとっての歴史的瞬間だ」と歓迎した。
同社は候補地として世界の100カ所以上を検討した結果、経済や労働力、退役予定の石炭火力発電所からの転換が望めることなどから、リッチモンドを選んだという。バージニア州は、膨大な電力を消費するデータセンターの世界最大の市場でもある。
核融合は化石燃料に代わるエネルギー源のひとつとして期待されている。燃料に使われる水素は地球上に豊富に存在し、温室効果ガスや長期的な放射性廃棄物も発生させない。
ただし研究段階から世界での商業化に至るまでの課題は多く、道のりは非常に長い。
それでも米マサチューセッツ工科大学(MIT)発のベンチャー、CFSは18年の創業以来、20億ドル(約3000億円)超の資金を調達してきた。
26年には原子核と電子を分離した超高温の「プラズマ」を生成し、さらにその後、投入したエネルギー以上のエネルギーを生み出す反応を達成したい考えだ。
CFSはこの立地を皮切りに、将来は数千カ所での発電所建設を目指す。同社以外にも多くの民間企業が、核融合発電の商業化に向けてしのぎを削っている。