このうち、子どもが中に閉じ込められたケースは、件数を集計したおととし8月の1か月だけで115件確認されていて、緊急性から窓ガラスを割って救助した事例もあったということです。“閉じ込め”が起きる原因として、遠隔操作で開け閉めができるリモコン機能が付いたキーの誤操作や誤作動があるとされています。
日本自動車工業会などによりますと、車内に残したキーのボタンを子どもが触ってロックがかかってしまうケースがあるほか、近年、主流になっている「スマートキー」の場合は、電池の残量が少なくなって車内にキーがあると車が認識せず、ドアが自動的に施錠されたりキーがほかの電波を拾って誤作動を起こし、ロックされたりするケースなどが考えられるということです。
夏場の閉めきった車内は、短時間で40度以上にまで温度が上昇することが分かっていて、東京消防庁によりますと、実際、都内では、去年6月から9月の間に、5歳以下の子どもが閉じ込められ、熱中症の疑いで救急搬送されたケースが5件あったということです。
JAFは「夏本番を迎え、命に関わるリスクがある。車を離れる時はキーを持って行くのはもちろん、短時間でも子どもを車内に残すのはやめてほしい」と注意を呼びかけています。
その日、長女を幼稚園まで迎えに行こうと、リモコン機能が付いた車のキーをいったん運転席に置き、長男を後部座席のチャイルドシートに乗せて外からドアを閉めました。運転席に回ってドアを開けようとしましたが、すでにロックがかかっていたということです。携帯電話と家のカギが入ったバッグも車の中。女性はパニックになったと言います。 「閉まった瞬間は意識が飛んでしまうくらい心臓がバクバクして、何てことをしてしまったんだという気持ちと、何でこうなっちゃったの?という気持ちがすごくて、頭が真っ白になるくらいパニックでした」 女性は、たまたまとおりかかった宅配業者に頼み込んで携帯電話を借り、近くに住む母親に連絡。 自宅の合鍵を持ってきてもらい、家の中にあった車のスペアキーでドアを開け、およそ20分後、泣き叫んでいた長男を抱き上げたということです。 なぜロックがかかったかは分かっておらず、それ以降、出かける時は必ずウエストポーチをして、キーを肌身離さず持ち歩くようにしていると言います。 女性は「肌寒い日だったので何とかなったと思いますが、翌日だったら気温が30度を超えていたのでどうなっていただろうと。炎天下の暑い日に起きていたら車の窓を割ることも考えたと思います」と話していました。
それによりますと、25度だった車内の温度は5分後に10度も上昇。 そして、30分もたたないうちに40度にまで上がり、1時間で50度近くに達しました。 また、熱中症の危険度を示す「暑さ指数」を使った実験では、エアコンを切ってから10分後に、熱中症にかかる人が急増する「厳重警戒」のレベルに。 15分後には、最も危険度が高い「危険」レベルに達しました。 熱中症によって命が危険にさらされるまでわずか15分でした。
車の構造やトラブルに詳しい自動車評論家の国沢光宏さんはどちらもカギを抜き差しする手間が省ける一方、“閉じ込め”が起こる可能性を認識しておく必要があると話しています。 国沢さんが指摘するのは操作ミスや不注意で起こる“閉じ込め”です。車内に残されたキーのボタンが何かのはずみで押されドアがロックされてしまうケースや、トランクに荷物を積み込んだ際に、キーも中に置いたまま閉めてしまうケースなどがあるということです。
また、日本自動車工業会によりますと、スマートキーの近くに別の電波を発する機器や施設があると、まれに電波干渉を起こしてロックがかかることもありうるということです。 国沢さんは「こうしたキーは非常に便利だし盗難防止にもなるが、メンテナンスも含め、きちんと理解して使う必要がある。取り扱い説明書を改めて読んでおくことも大切」と話しています。
JAF東京支部の栗原悠羽さんは「車外に出る時はキーをカバンの中に入れたり子どもに持たせたりせず、肌身離さないことがいちばんの対策」と話しています。 そのうえで、万が一、子どもが中に閉じ込められたら、警察か消防、JAFに連絡するとともに、子どもに異変が生じたら、近くの人に助けを求め、脱出用のハンマーがあれば窓を割ることも検討してほしいとしています。 栗原さんは「猛暑の中だと、車内の温度は命に関わるレベルにまで短時間で上昇してしまう。子どもの命を守るためにも、短時間であっても子どもを車内に残すのはやめてほしい」と呼びかけています。
ドアが突然ロック 子ども閉じ込められた 母親体験
車内温度が急上昇の実験結果は
なぜロック? 利便性の裏で
子どもの命守るため必要な対策は…