「経団連」の十倉会長と「連合」の芳野会長は22日午前、東京都内で会談し、ことしの春闘が事実上、スタートしました。
この中で、経団連の十倉会長は「賃上げの定着にはおよそ7割の働き手を雇用する中小企業と、4割近くを占める非正規労働者などの賃上げが不可欠だ。適正な価格転嫁と販売価格アップへの理解と共感の輪を社会全体に広げていく必要がある」と述べ、およそ30年ぶりの高い水準となった去年とおととしの賃上げの勢いを定着させ、中小企業や非正規労働者へと波及させることが重要だという考えを示しました。
これに対し、連合の芳野会長は「日本経済全体の底上げのためには中小・小規模事業者、日本経済の隅々まで賃上げが波及しなければならない。賃金、経済、物価を安定した巡航軌道に乗せることを労使で努力する春闘にしたい」と述べ、中小企業にも賃上げが広がるよう取り組みを強化していくことで一致しました。
一方、賃上げの水準について、経団連は、連合が求める中小企業での6%以上の賃上げは極めて高い水準だと言わざるを得ないと指摘していて価格転嫁や生産性の向上をどう進めていくかを含めて労使間で踏み込んだ議論が進められる見通しです。
春闘は2月から自動車などの労働組合が要求書を提出して交渉が本格化します。
経団連 十倉会長“賃上げの原資確保できる環境づくり強化”
経団連の十倉会長は会談のあと報道各社の取材に応じ、連合が中小企業では6%以上の賃上げを求めていることについて「非常に高い目標は運動論としては理解できるし、心意気はよしと思う。ただ、現実では、そういう方針のもとで各企業の労使がよく協議し、賃上げの原資の問題なども議論して決めていくことだ」と述べました。
そのうえで、「いいモノ、いいサービスには値が付くということを世の中が受け入れていく社会的規範を築いていかなくてはいけない。一朝一夕でできることではないが、しつこく食らいつき、そういう努力を労使ともにサプライチェーン全体でやる。連合の問題意識でもあり、経済界でも価格転嫁に対する社会的規範の形成に力を入れて取り組みたい」と述べ、中小企業が賃上げに向けて、必要な原資を確保できる環境づくりを強化していく考えを示しました。
連合 芳野会長「労使で考え方は同じ方向性」
会談のあと連合の芳野会長は「おおむね労使で考え方は同じ方向性を向いている。ことしの賃上げも非常に重要だと共有した」と述べました。
そのうえで、連合が中小企業については6%以上とより高い賃上げの目標を掲げたことについて、「昨年の賃上げの結果、大手と中小企業で格差が広がってしまったことが根底にある。好調な企業と厳しい企業があるかと思うが、労使の交渉で状況を把握しながら、ことしの賃上げと、来年につながる交渉をしてほしい」と述べました。
また、賃上げに必要な価格転嫁の取り組みについて、芳野会長は「道半ばで、中小・小規模事業所からはなかなか労務費を含めた価格転嫁が実現できていないという声があがっているので、交渉のなかでしっかり確認してほしい」と話しました。