衆議院予算委員会の理事懇談会が29日午後開かれ、新年度予算案の審議日程と、野党側が求める自民党旧安倍派の会計責任者の参考人招致について、与野党が協議しました。
この中では参考人招致について、野党側が派閥の政治資金パーティーをめぐる問題の実態解明のため必要だとして求めたのに対し、自民党は司法で判断が出ていることに立法府が立ち入るべきではないなどと重ねて主張し、折り合いませんでした。
このため、予算委員会の安住委員長が30日の委員会で採決することを提案し、採決が行われることになりました。
一方、自民党は「委員長の判断なので採決はやむをえないが反対する」と表明しました。
予算委員会は、先の衆議院選挙のあと野党側が多数を占めることから、旧安倍派の会計責任者の参考人招致が賛成多数で決まる見通しです。
このあと、与野党は新年度予算案の日程を協議し、30日参考人招致の採決のあと、予算案の趣旨説明を行うことに加え、31日と来月3日、4日の3日間、石破総理大臣とすべての閣僚が出席して基本的質疑を行うことで合意しました。
これにより、予算案の実質的な審議入りは31日となり、与党側が目指していた30日から1日ずれ込むことになりました。
参考人招致とは
国会では、法案の審議や調査にあたって必要がある場合、当事者や有識者などを参考人として委員会に呼んで意見を聴くことができます。
参考人の出席は任意とされ、証言にあたって宣誓を行う「証人喚問」とは異なり、うその発言をした場合の罰則はありません。
招致にあたっては、国会の意思を示すため慣例上、全会一致での議決が原則とされています。
衆議院予算委員会で全会一致ではなく採決で参考人招致が行われたのは、50年以上前の1974年3月に石油危機を受けた物価高騰をめぐり、石油会社の幹部らを招致した例があります。
今回、旧安倍派の会計責任者は、弁護士を通じて「裁判で証言した以上の話はなく、公の場に出ていくことは負担になるため差し控えたい」などと説明し、応じられないという意向を示しているということです。
安住予算委員長「苦渋の決断」
安住予算委員長は「参考人招致は真相解明に不可欠だということで、できるだけ円満な形で行いたいとこんにちまで議論してもらったが、残念ながら与野党が完全に合意するところまでは至らなかった。最終的には私から委員長提案を行い、採決を行うことで与野党が合意した」と述べました。
その上で「新年度予算案の審議をこれ以上遅らせることは、わが国にとって決してプラスではないと判断した。全会一致でないことは苦渋の決断だが、過去に前例があるのでそれに沿って対応するのもやむをえない。本当に残念な気持ちで、私自身のリーダーシップのなさも痛感している」と述べました。
自民 井上 元万博担当相「参考人招致にも議決にも反対」
与党側の筆頭理事を務める、自民党の井上・元万博担当大臣は記者団に対し「従来から主張してきた通り、参考人招致にも議決にも反対だ。一般の私人で、確定判決も出ており、本人に出席する意向もない。大変残念だが、安住委員長が判断されたことだ。実質の審議入りは1日遅れたが、新年度予算案の年度内成立に向けて全力で取り組んでいく」と述べました。
立民 山井氏「全会一致にならず残念」
野党側の筆頭理事を務める、立憲民主党の山井和則氏は記者団に対し「野党としては円満に全会一致で参考人招致を決めたかったが、最後まで自民党が大反対し、全会一致にならないことは残念だ。『裏金問題』は1年以上、長引いているが、この期に及んでも自民党が参考人招致に強く反対し、新年度予算案の審議が結果的に1日ずれてしまったことも、非常に残念だ」と述べました。
維新 岩谷幹事長「自民も参考人招致に賛成を」
日本維新の会の岩谷幹事長は記者会見で「この問題にけりをつけて、うみを出し切り、政治資金をクリアにしていく思いがあるなら、自民党も参考人招致に賛成してしっかりと事実解明をしていくべきだ」と述べました。
その上で「自民党が賛成すれば済む話なので、一刻も早く賛成し、日程をしっかり決めて進めていくべきだ。日程がころころ直前に変わる今の国会運営は、本当に非効率であり、一刻も早く改めるべきだ」と述べました。
公明 各党の賛否などを見極めた上で判断
公明党は、採決が行われれば賛成する考えを28日に自民党に伝えましたが、党内に慎重な意見もあることから、29日改めて斉藤代表や西田幹事長ら幹部が協議しました。
その結果、参考人招致は全会一致で行うことが原則で、与野党が合意しないまま採決で招致を決めることは認められないという方針を、改めて確認しました。
そして、自民党を含む各党の賛否などを見極めた上で、30日の採決の対応を判断することになりました。
国民 古川代表代行 “自民は参考人招致の議決を”
国民民主党の古川代表代行は記者会見で「自民党は自分たちに向けられている不信に対してきちんと応える気が全くなく、いつまでたっても政治不信は払拭(ふっしょく)されない。国会の意思で判断することであり、司法で判断が出たものへの介入ではない」と述べました。
その上で「われわれは、旧安倍派の会計責任者が参考人として出席することまで担保されなければ審議をしないと言っているのではなく、議決をしろと言っているだけだ。それさえも拒否すれば予算案の審議が遅れてしまうが、そんな余裕があるのか」と述べました。
橘官房副長官「真摯な政策協議でよりよい成案を」
橘官房副長官は午後の記者会見で「党派を超えた合意形成を図っていくためには、与野党ともに責任ある立場で熟議し、国民の納得と共感を得られるように努めることが必要だ。多様な国民の声を反映した真摯(しんし)な政策協議によって、よりよい成案を得るという民主主義の本来の姿に立つ形で政権運営にあたっていく」と述べました。