トランプ大統領の一手が早速、金融市場を揺さぶっています。世界経済の先行きに対する警戒感が強まり、取り引き開始直後から売り注文が膨らんで日経平均株価は一時、1100円以上、値下がりしています。
アメリカのトランプ大統領は1日、カナダからの輸入品に25%の関税を課すなどとした大統領令に署名し、これに対し、カナダのトルドー首相は報復措置としてアメリカからの輸入品に25%の関税を課す意向を示しました。
こうしたなか、トランプ大統領は2日、SNSに「われわれはカナダの持っているものなど何も必要ない。無限のエネルギーがあり、車は自分たちでつくるべきだ。木材も使い切れないほどある」と投稿しました。
そして「カナダはアメリカの51番目の州になるべきだ」とあらためて主張し「カナダの人々にとって税金はとても少なくなり、軍による保護もはるかによくなる。そして、関税もなくなる」としています。
カナダへの課税の開始は今月4日からで、世界経済への影響のほか、アメリカにとってもインフレが再加速する懸念が指摘されていますが、トランプ大統領としてはアメリカ経済は打撃を受けることはないという考えを強調した形です。
トランプ大統領「カナダと3日朝に話す メキシコも」
トランプ大統領は2日、ホワイトハウスに戻る途中、首都ワシントン近郊の空軍基地で記者団に対し「3日の朝にカナダのトルドー首相と話す。メキシコ側とも話す。劇的な変化は期待していない。われわれに多くの借金がある彼らに関税をかける。彼らは、借金を返済することになると確信している」と述べ、課税の開始前に両国と意見を交わすことを明らかにしました。
カナダでは自国製品の購入呼びかけ
カナダではアメリカ製品の代わりに消費者に自国の製品の購入を呼びかける動きが広がっています。
トルドー首相は2日、SNSで「今こそ、ここカナダで作られた製品を選ぶときだ。ラベルを確認し、自分たちの役割を果たそう。できるかぎり、カナダ製品を選ぼう」と呼びかけました。
また、首都オタワや最大都市トロントがあるオンタリオ州のフォード首相は2日、SNSで「州内では4日火曜日からアメリカ産のアルコール類を卸し売りのカタログから削除する。州内のレストランや小売店はアメリカ産のものは注文できなくなる」と明らかにしました。
また、西海岸のブリティッシュ・コロンビア州のイービー首相も1日、会見で「アメリカの存在は大きいが、われわれが立ち向かわなければ、彼らはまたさらに多くを求めてくるだろう」と述べ、アメリカの共和党が支持基盤とする州からのアルコール類の購入を即座に停止することなどを指示したとしています。
日経平均株価 一時1100円以上 値下がり
週明けの3日の東京株式市場は、アメリカのトランプ大統領がカナダとメキシコからの輸入品への25%の関税と、中国に10%の追加関税を課す大統領令に署名したことを受け、ほぼ全面安の展開となり、日経平均株価は先週末の終値と比べて一時、1100円以上、値下がりしました。
▽日経平均株価、午前の終値は先週末の終値より959円53銭、安い3万8612円96銭。
▽東証株価指数、トピックスは62.75下がって2725.91。
▽午前の出来高は11億9953万株でした。
市場関係者は「カナダやメキシコ、中国が今後、アメリカに対して報復措置に出る姿勢を示していることで、世界経済の先行きに対する警戒感が強まっている。また、関税の引き上げによってアメリカ国内で物価が上昇し、消費が落ち込めば、アメリカ経済が減速するという見方もあり、売り注文につながっている」と話しています。
林官房長官「措置の影響を十分に精査し 適切に対応」
アメリカのトランプ大統領の経済政策をめぐっては、カナダとメキシコ、中国への関税措置が正式に発表され、日本政府内からは、今後、関税措置の対象が拡大しないか警戒する声が出ています。
これについて、林官房長官は3日午前の記者会見で「わが国としては、措置の影響を十分に精査した上で、適切に対応していく考えだ」と述べました。その上で、影響を受ける可能性のある日本企業を支援するため、経済産業省とJETRO=日本貿易振興機構が相談窓口を共同で設置し、対応すると説明しました。
また、日本に対しても関税が強化される懸念はないのかと問われたのに対しては「アメリカの政策について予断を持って答えることは差し控えたい」と述べるにとどめました。
一方、林官房長官は今週、石破総理大臣がアメリカを訪問しトランプ大統領との初めての首脳会談を行う方向で調整していると明らかにし「率直な意見交換を通じて個人的な関係を構築するとともに、安全保障や経済などの諸課題について認識の共有を図っていっそうの協力を確認し、日米同盟をさらなる高みに引き上げる機会としたい」と述べました。