このヘッジファンド、日銀が12月に金融緩和策を修正したことで大きな利益をあげたといいます。
日本国債の先物と円金利スワップを組み合わせて去年夏ごろからショートポジション(国債の空売りポジション)を構築。日銀が金融緩和策の修正に迫られ、長期金利が上昇すると読んでいました。
「日本の経済活動が再開し、物価が上昇してきた。YCC=イールドカーブコントロール(長短金利を操作する日銀の金融緩和の枠組み)という政策は物価の上昇を目的にしたもので、それが順調に進んでいるのでYCCの役割が終わりつつあるという認識を強めた。これがショートポジションをとった理由だ。このときの10年国債の利回りは0.22%だったが、金利がこれより下がる可能性はかなり低く、金利が上昇する可能性は高いという確信をもっていた。低リスクで高いリターンを上げることができる。実際、12月に日銀は緩和策を修正したが、年間の目標リターンの半分ほどを日本国債のショートポジションから得ることができた」
「私たちは日銀の予想よりも物価上昇の勢いが強いと考えている。物価の上昇率が4%を超えてくれば早ければ3月にも政策変更があると予想する。長期金利の変動幅を0.5%から0.75%に引き上げ、最終的にYCCを撤廃するという流れは避けられない。もともとYCCは物価を上昇させるための政策、デフレに対する政策なので、今や成功裏に目的が達成できており、役割が終わった政策だと考えている」 近い将来、日銀が緩和策の修正に迫られ、長期金利がさらに上昇するとみるヘッジファンド。 これに対し日銀の黒田総裁は18日の金融政策決定会合のあとに行われた記者会見でこうした見方を強く否定しました。
今回の日銀の会合を前に、市場では日銀が12月に続いて緩和策を修正するのではないかという見方から長期金利の上昇を見込んだ国債の売り注文が膨らみ、大量の国債を買って金利を抑えようとする日銀との間で激しい攻防が繰り広げられました。 これを踏まえ、日銀は、今回、資金供給策を拡充するという市場への対抗策を打ち出しました。金融機関が日銀に差し出す担保をもとに低利で資金を貸し出す「共通担保資金供給オペ」の制度を拡充。金融機関に国債を購入するための資金を供給することで、日銀が直接国債を買わなくても金融機関が国債を買ったり市場でさまざまな裁定行動をとったりすることを通じて長めの金利の低下を促します。 これについて黒田総裁は、「イールドカーブを適正にするための手段となる」と述べ、YCCを軸とした金融緩和策の枠組みを継続する姿勢を鮮明にしました。 こうした日銀の対応もあって長期金利は低下傾向にありますが緩和策の修正観測が市場にくすぶり続ける中、修正を見越した投資家の動きが活発になれば債券市場や外国為替市場が再び大きく変動する可能性も指摘されています。
「『共通担保資金供給オペ』の拡充によって民間銀行のバランスシートを通じた長期資金がスムーズに供給されればイールドカーブのゆがみの修正などに寄与する一定の効果は見込まれるが、YCCの代替としての強力な力まではないと考える。日銀の将来の物価見通しが、目標とする2%には届かなかったことで行き過ぎた緩和修正期待はいったん遠のいたが、今後も市場が日銀に緩和修正を催促し続ける構図に変化はないのではないか。日本と欧米との金利差は依然として大きく、日本国債に対する売り圧力は継続するだろう」
そして市場はどう反応するのか。 日銀対市場の攻防、次のラウンドも引き続き注目です。
また、アメリカでGDPや主要企業の決算の発表もあり、利上げが続く中でアメリカ経済の現状を見るうえでも注目です。
市場と日銀との攻防再燃?
日銀対市場 次のラウンドの攻防は
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