先月(1月)27日に開かれた記者会見。
この日、政府は新型コロナの感染症法上の位置づけを、5月に例年流行するインフルエンザと同じ「5類」にすることを決めました。 「病原性が大きく強まる変異が起きたり、同じオミクロン株であってもどんなに頑張っても医療ひっ迫が起きてしまう事態が起きてしまったりした場合は、対応を見直すことは当然必要になると思う」
アメリカでは、去年12月ごろからニューヨークなど東部を中心に急増し、1月28日までの1週間では61.3%を占めるに至ったとみられています(CDC=疾病対策センター)。
WHO=世界保健機関の1月25日の週報によりますと「XBB.1.5」はこれまでに54か国で報告されています。 国別では、アメリカが75.0%とほとんどを占め、イギリスが9.9%、カナダが3.0%、デンマークが2.0%などとなっています。 一方で、東京都のモニタリング会議の資料によりますと、東京都内では12月初め以降これまでに31例確認されていますが、検出される割合は1月9日までの1週間でも0.1%で、大きく増加している状況ではありません。
▼ウイルスの広がりやすさについては、アメリカやイギリス、ヨーロッパ各国のデータではほかのオミクロン株の変異ウイルスより広がりやすいとしています。 ▼過去の感染やワクチン接種で得た免疫から逃れる性質は、これまでの変異ウイルスで最も強いとしています。ただ、オミクロン株の「BA.5」に対応したワクチンを接種した人や、ワクチンを接種し感染の経験もある「ハイブリッド免疫」がある人では、「XBB.1.5」に似た「XBB.1」に対する抗体の値は高くなっているとしています。 ▼感染した場合の重症度が上がっているという兆候は初期の段階では見られないとしています。 WHOは「XBB.1.5」によって「世界的な感染者数の増加につながる可能性がある」としています。
海外の感染状況に詳しい東京医科大学の濱田篤郎特任教授は「WHOも警戒はしているが、世界で感染者数そのものが増えているわけではなく、感染力がどの程度なのか、まだ分析が必要な段階だ。一方で、アメリカでは死亡者数が多い状態が続いている。報告される感染者数は増えていないが実は把握されていないだけで、ある程度、感染者数が増えている可能性も考えておく必要はある」と指摘しました。
研究グループは、ワクチンの接種後に、2022年夏以降の第7波で主流だったオミクロン株の「BA.5」に感染した人の血液を使って、「XBB.1.5」に対する免疫の反応を調べました。その結果、ウイルスを抑える中和抗体の働きは「BA.5」に対する場合のおよそ10分の1にとどまり、免疫を逃れる性質がはっきりしたということです。 さらに、研究グループは、感染力も高まっているのではないかとしています。 新型コロナウイルスが人に感染する際には、細胞の表面にある「ACE2」というたんぱく質にくっつきます。人の細胞にくっつきやすいと感染力が高まります。 「XBB.1.5」には新たに「F486P」という変異が加わっています。 佐藤教授によりますとこの変異があることで、「XBB.1.5」は細胞の表面のたんぱく質に結合する力が、無いタイプの変異ウイルスと比べて4.3倍になっていたということです。 これまでの変異ウイルスでは「中和抗体を逃れること」と「結合力が上がること」は両立しにくかったのが、「XBB.1.5」は両立していて、感染力も高まっているのではないかとしています。
「免疫をかいくぐる力が高まり、いわば『完成形』だった『XBB』に、さらに変異が加わることで細胞への感染力も高まり、より広がりやすくなっていると考えられる。これほど大きな変異はこれまでにほとんどなかった」
発表したのは、アメリカのCDC=疾病対策センターです。
その結果、従来型のワクチンを複数回接種したあと、オミクロン株の「BA.5」に対応する成分を含むワクチンを追加接種すると、追加接種しない場合と比べてXBB系統のウイルスによる発症を防ぐ効果は、 ▼18歳から49歳で49%、 ▼50歳から64歳で40%、 ▼65歳以上では43%でした。 CDCは、オミクロン株対応のワクチンの追加接種によって「XBB」や「XBB.1.5」で症状が出るのを抑える効果が上がるとしていて、可能な人は最新のワクチンの追加接種を受けるべきだとしています。 「XBB.1.5」に対してはワクチンや感染することでできた抗体の働きは下がるという報告がありますが、最近、体の免疫細胞によってウイルスを排除する働きは維持されるという分析結果が出されました。 アメリカ・ボストンにある「ベス・イスラエル・ディーコネス・メディカル・センター」などの研究グループはオミクロン株に対応したワクチンを追加接種した人の血液を使って、「XBB.1.5」に対する免疫の働きを調べた結果を第三者の査読を受ける前の論文として、1月下旬に公表しました。 その結果、追加接種から3か月の時点で、「XBB.1.5」に対する中和抗体の値は「BA.5」に対する働きの16分の1に下がり、接種前とほぼ同じ水準になりました。 一方で、細胞性免疫の働きを示す値は従来型のウイルスや「BA.5」に変異が加わった「BQ.1.1」の場合と同じ程度でした。
また、世界、そして日本でも、これまでのようにある特定の変異ウイルスがほぼすべてを占めるということにもなっておらず、いわば、さまざまなウイルスが併存する形になっています。 東京都のモニタリング会議で出されたデータによりますと、1月上旬までの1週間で検出されている変異ウイルスはいずれもオミクロン株の1つで、多い順に ▽「BA.5」48.5%(2022年夏以降主流) ▽「BF.7」16.2%(「BA.5」に変異加わる 中国で拡大) ▽「BQ.1.1」16.1%(「BQ.1」に変異加わる) ▽「BN.1」10.5%(「BA.2.75」に変異加わる) ▽「BQ.1」3.4%(「BA.5」に変異加わる) ▽「BA.2.75」3.4%(「BA.2」に変異加わる) ▽「BA.2」1.5%(2022年春~夏に主流) ▽「XBB」0.2% ▼「XBB.1.5」0.1% となっています。
委員会の後でWHOが出した声明では、現在感染が広がっているオミクロン株の変異ウイルスについて「これまでの変異ウイルスと比べると重症化につながっていない傾向が見られるが、予測不可能な特徴を持つ新たな変異ウイルスに進化する能力を保持している」と指摘しました。 WHOは各国に対し、ワクチンの追加接種を進めることや、変異ウイルスへの警戒を続けることなどを求めています。 東京医科大学の濱田特任教授は、日本国内でも今後「5類」に移行することで、感染を広げないための個人や企業の判断がこれまで以上に大事になるとしています。
「『XBB.1.5』は東京でもまだ検出されるのは少ないが、今後、アメリカなどから入ってくる数が増えることは予想される。いま、『第8波』がピークアウトしつつあるが、『第9波』のような形で感染の波につながる可能性がある」 「今後『5類』になると、自分自身の感染を防ぐための対策は個人の判断に任されることになる。隔離や療養の規定もなくなるが、新型コロナを野放しにはできないので、インフルエンザの欠勤規定のように、企業が独自に判断して対応策を作らなければいけない。オミクロン株対応ワクチンは『XBB.1.5』にも効果があるようなので、接種を受けてない人はぜひ受けてもらいたい。ヨーロッパでも緩和が進んだあとで感染が拡大したときには、公共交通機関でマスクの着用を求めるなど、状況に応じた対応を取っていた。日本でも流行状況を見ながら対応していくことは必要だろう」
XBB.1.5 米国で拡大続く
WHOリスク評価 “世界的な感染者数増加につながる可能性”
免疫逃避“最大” 結合力“強化”
ワクチン効果は維持か
変異ウイルスは“併存”
感染の再拡大につながるのか
感染状況は今後どうなるのか、状況を左右しそうなのが変異ウイルス、「XBB.1.5」です。
アメリカでは6割を超えていて、免疫が効きにくく広がりやすいおそれがあるとされています。
「XBB.1.5」によって「第8波」が長引くことはあるのか。
これまでのワクチンは効くのか。
「第9波」は。
わかってきたことをまとめました。(2月1日時点)
「5類」移行でも 変異ウイルス警戒を