部屋に
山積みになっていた
ビールの
空き缶。
それが子どもにも人気のアート作品に生まれ変わりました。
作者はこれまで芸術とは無縁に過ごしてきた大阪・西成区のおっちゃん。
作った理由をたずねると、意外な答えが返ってきました。
(大阪放送局 しあわせニュース取材班 高野祐美)
段ボールが敷き詰められた空間で…
大阪市内で
開かれている
一風変わったアートの
作品展。
会場には段ボールが敷き詰められていて、空き缶やチラシなど身近な物を使った作品が所狭しと並びます。
作ったのは
いずれも
大阪・
西成区のおっちゃんたち。
壁や天井には、半紙や段ボールに独特なメッセージがつづられていています。
「野垂れ死に」
「くよくよするな男じゃないか」
「苦しんだぶん底抜けに明るいおっちゃん」
その自由さにただただ
圧倒されます。
「幸せのラインなんか決まってないねん」
会場で
子どもたちに
人気の
作品がありました。
ビールの空き缶で作られたからくり人形です。
通天閣をイメージして
作られ、
手が
動いて、ひたすら
ビールを
飲み
続けます。
作者は仲間から「からくり博士」と呼ばれる武さん(75)です。
ビールが
大好きな
武さん。
1日6本は飲んでいて、いつも部屋には空き缶が山積みになっていました。
そんなある日、これを使って作品を作ればお金になるのではないかと思いつきます。週の半分は図書館に通い詰めて、作り方を勉強しました。
「小さい通天閣を持って行ったらほめてもろたわけや。これはすばらしい。人間ほめられたら頭なでてもろたら、なんぼ年いってもうれしいもんや」
作品を1
体作るのに
半年かかるそうで、
実際、
お金に
なることは
ほとんどありません。
ただ、
作品は
みんな笑顔であふれています。
「人前で暗い顔してたらあかん。周り暗くするがな。常に俺は笑顔や。心は泣いてんねんで。幸せのラインなんか決まってないねん。自分が決めるねん。自分が幸せじゃないのに、人を幸せにできひん」
いつしか作品は、お金のためではなく自分のために作るようになりました。
作品を見た人たちの反応が、今のやりがいにつながっています。
「
人間なんぼ
年取ってもね。
自分の
居場所がほしいわけやな。
社会とね。
どんな細い糸でもいいからつながっていないとアカン、という
考えで
作っとる。
これを
作らな、
俺は
社会との
存在感が
無くなるわけや。
これ作るからこそ、
俺のまだ
生きている
存在感があるわけや」
「ここには芸術の源泉みたいなものが」
おっちゃんたちがアートを
生み出すきっかけになったのは
詩人の
上田假奈代さん(53)です。
西成区のあいりん地区の商店街の一角で、ゲストハウスとカフェを営んでいます。
入り口には「
釜ヶ崎芸術大学」の
文字が。
ここにつどうおっちゃんたちと一緒にオペラを開催したり、合唱を披露したり。街全体を舞台にアート活動に取り組んでいます。
「
ここには
芸術の
源泉みたいなもの、
根源みたいなものが
あるんちゃうかな。
心の
苦しみやいろんな
苦しみをほどきながら
表して
くれるものは、
心打つものやし、
ぐっとくるし。
少なくとも私は
励まされた」
小さなこと積み重ねたら大きな幸せに
上田さんとの
出会いで、
生きる場所が
見つかったと
話す人がいました。
慶次郎さん(67)です。
慶次郎さんは、かつて
会社を
経営していましたが、
多額の
借金を
背負い、
路上生活を
経験したことも
あるといいます。
いろんな場所を転々とする中で、上田さんから言われた言葉が今も忘れられません。
「放浪の旅に出るわと言ったら、ふっと振り返って『あんたには帰るところがあるんやで!』って大きい声で怒られて。それは幸せさ。怒ってくれる人なんて、絶対おらんもん」
何かできることはないか。
慶次郎さんが欠かさず行っているのがトイレ掃除です。
上田さんから
飽きっぽいと
言われましたが、2
年続いています。
慶次郎さんにとっては自分を見つめ直す時間。
掃除終わりに、入れてもらうコーヒーを飲むのが何よりの楽しみだと言います。
みんなで詩を作る時間。慶次郎さんが詠んだのは…
「ゴロンコロンと
転がって
落ち着きはらって
夢ん
中」
慶次郎さんの詩には、ありのままの気持ちがつづられています。
「
出会いを
生かすも
本人次第。
この出会いを
大事にしたいなと
思って、
今まで
生きとる。
小さいことを
積み重ねたら、
自分にとって
大きな幸せになって
いくやん。
それで十分や、
欲張ったらあかんで。けっして
諦めず、けどあせらんでな。
生きているのも
表現の1つ。
生き
姿はすべて
表現に
なるんちゃう」
取材して感じた「幸せ」の言葉の重み
取材した
私も、
初めてアートを
見たときに
心が
動きました。
ビールの空き缶や、チラシや、画用紙がこんなにおもしろい作品になるんだと驚くとともに「私には作られへん、真似できひんな」って感動しました。
作品を作ったおっちゃんたちは個性的で楽しい方たちでしたが、これまでに苦労したことなども話してくれました。
でも、そんな経験もアートに変えていたんです。
そして何よりも、おっちゃんたちの口から語られる「幸せ」という言葉にとても重みを感じた取材でした。
おっちゃんたちの作品は2月13日まで、大阪市の船場エクセルビルで開かれている「Study:大阪関西国際芸術祭2023」で見ることができます。
しあわせニュース募集中
街なかで
起きている「えぇ
話やなぁ」「
感動するわ!」という
出来事ありませんか。
小さな幸せをみんなでシェアしていきたいと思います。
あなたの「しあわせニュース」投稿フォームからお寄せください。
しあわせニュース
小林製薬「紅麹」問題 製品摂取後の死亡判明は4人に 影響拡大
「小林製薬」の「紅麹」の成分を含む健康食品を摂取した人が腎臓の病気などを発症した問題で、新たに2人が亡くなっていたことがわかったと会社が発表しました。いずれも遺族から「紅麹コレステヘルプ」を摂取し腎臓の病気が疑われる症状があったと連絡があったということで会社は「原因となった疑いがある」として詳しい調査を進めています。この問題で、複数の入院患者を診察した大学病院の医師が、NHKの単独インタビューに応じました。医師によりますと問題が明らかになる前の去年11月から先月にかけて、70代女性1人と50代の女性2人が、尿が泡立つなどの症状が出たり健康診断で腎機能の異常が指摘されたりしたためこの病院を受診したということです。3人はいずれも腎臓の病気も含めて持病はありませんでしたが、腎機能が低下していたということです。※記事では診察にあたった医師のインタビューのほか「回収対象」となっている製品の一覧表をまとめています。
Source: NHK
Mar 28, 2024 15:03
太陽光発電施設での爆発は蓄電設備 安全確認されしだい検証へ
27日夜、鹿児島県伊佐市の太陽光発電施設の建物から火が出て消火にあたっていた隊員4人がけがをしました。消防によりますと、爆発した建物は蓄電設備で、放水によって感電などのおそれがあることから、消防や警察は発電施設の電源を遮断し、安全が確認されしだい鎮火の確認や検証にあたることにしています。
Source: NHK
Mar 28, 2024 04:03
“イヤホン装着 列車接近気付かなかったか” 佐賀踏切死亡事故
去年7月、佐賀県小城市の遮断機のない踏切でランニングをしていたとみられる男性が列車にはねられて死亡する事故があり、国の運輸安全委員会は男性がイヤホンを装着していて列車の接近に気付かなかった可能性があるとする調査報告書を公表しました。
Source: NHK
Mar 28, 2024 04:03
「特別なものではなく、ただ日常を取り戻したいだけなんです」
眠れない。食べられない。起き上がれない。言いようのない虚脱感にさいなまれる。そんな状態が、10日間ほども続きました。経営する民宿が被災し、心身の不調を経験した珠洲市の女性がインタビューの途中、ふとこう漏らしました。「何も特別なものではなく、日常を取り戻したいだけなんです。いったい元に戻りつつあるんだろうかって、本当に思います」
Source: NHK
Mar 28, 2024 00:03
マダニ媒介の感染症 SFTSは過去最多 人から人も?【徹底解説】
マダニが媒介するウイルスが原因の感染症が年々増えています。国内で去年過去最多を記録したものでは、初めてヒトからヒトに感染したケースも確認。「マダニはわれわれの日常生活に近づいてきている」専門家は警告します。一体何が起きているのか。春本番、お花見やハイキングに行く前に知っておきたいマダニと病気の関係です。
Source: NHK
Mar 27, 2024 15:03
吉本興業 タレント対象の大規模研修会で危機管理の重要性強調
芸能事務所のトップによる性加害問題をはじめ、薬物の使用やハラスメントなど不祥事やトラブルが相次ぐ芸能界。所属タレントをめぐって、SNSのトラブルや法令違反の事故などが起きている大手芸能プロダクションの吉本興業は27日に、タレントを対象にした大規模な研修会を開き、「破天荒でいいといった考え方は大きな落とし穴に落ちる可能性がある」などと危機管理の重要性を強調しました。
Source: NHK
Mar 27, 2024 09:03
モスクワのテロ事件 ロシアがウクライナ側の関与主張強める
ロシアの首都モスクワの郊外で起きたテロ事件について、プーチン大統領に続き側近たちもウクライナ側の関与が疑われると相次いで発言しました。プーチン政権はウクライナ侵攻を正当化するためにもこうした主張を一段と強めている可能性もあり、ウクライナ側は関与を否定するとともに反発しています。
Source: NHK
Mar 27, 2024 00:03
Upgrade to use this feature
Are you sure you want to test again?
The number of free newspaper readings has been used up today.
Please upgrade your account to read unlimited newspapers
This feature is only available for registered users!
Login
or
Register