そして1998年ねんから7年間ねんかんは日銀にちぎんの審議しんぎ委員いいんを務つとめ、1999年ねんの「ゼロ金利きんり政策せいさく」や2001年ねんの「量的りょうてき緩和かんわ政策せいさく」の導入どうにゅうを理論りろん面めんで支ささえました。

その後そのご、東京とうきょう大学だいがく大学院だいがくいん経済けいざい学がく研究けんきゅう科かの教授きょうじゅとして大学だいがくに戻もどり、2008年ねんには内閣ないかく府ふの調査ちょうさ会かいの会長かいちょうとして、日本にっぽんの成長せいちょう戦略せんりゃくを描えがく21世紀せいき版ばん「前川まえかわリポート」の取とりまとめにあたりました。2017年ねんからは共立きょうりつ女子じょし大学だいがくの教授きょうじゅを務つとめています。

長年ながねんにわたり大学だいがくで教きょうべんを執とる一方いっぽうで、現在げんざいも日本にっぽん政策せいさく投資とうし銀行ぎんこうの社外しゃがい取締役とりしまりやくや日銀にちぎん金融きんゆう研究所けんきゅうじょの特別とくべつ顧問こもんなど学外がくがいでも幅広はばひろく活動かつどうしています。

その後そのご、衆参しゅうさん両院りょういんの本ほん会議かいぎで採決さいけつが行おこなわれ、同意どういされれば、候補こうほ者しゃの総裁そうさい就任しゅうにんが正式せいしきに決きまります。今回こんかいの黒田くろだ総裁そうさいの後任こうにん人事じんじについて、政府せいふは、来週らいしゅう14日にちに、国会こっかい衆参しゅうさん両院りょういんの議院ぎいん運営うんえい委員いいん会かいの理事りじ会かいに人事じんじ案あんを提示ていじすることになりました。そして24日にちに衆議院しゅうぎいん議院ぎいん運営うんえい委員いいん会かいで所信しょしんの聴取ちょうしゅと質疑しつぎを行おこなう方向ほうこうです。

総裁そうさい人事じんじは衆議院しゅうぎいんの優越ゆうえつがなく、両院りょういんの同意どういを得える必要ひつようがあるため、手続てつづきは法律ほうりつや予算よさんより厳きびしくなっています。

2008年ねんには、当時とうじの福井ふくい俊彦としひこ総裁そうさいの後任こうにんとして政府せいふ・与党よとうが、財務ざいむ次官じかん経験けいけん者しゃで日銀にちぎんの副ふく総裁そうさいを務つとめていた武藤むとう敏郎としお氏しらを総裁そうさいに昇格しょうかくさせる人事じんじを国会こっかいに提出ていしゅつしましたが「財務省ざいむしょう出身しゅっしん者しゃはふさわしくない」として野党やとうが反対はんたいし、参議院さんぎいんで同意どういが得えられなかったことがあります。

その後そのごも与野党よやとうの調整ちょうせいが進すすまず、日銀にちぎんの総裁そうさいポストが戦後せんご初はじめて空席くうせきになるという異例いれいの事態じたいをへてこの時ときは日銀にちぎん出身しゅっしんの白川しらかわ方ほう明あきら氏しが総裁そうさいに就任しゅうにんしました。

このうち2003年ねんから2006年ねんにかけては金融きんゆう庁ちょうから派遣はけんされて主要しゅよう国こくの金融きんゆう監督かんとく当局とうきょくでつくるバーゼル銀行ぎんこう監督かんとく委員いいん会かいの事務じむ局長きょくちょうを日本人にっぽんじんとして初はじめて務つとめ、新あらたな資本しほん規制きせいの策定さくていなどに取り組とりくみました。

2007年ねんからは金融きんゆう庁ちょうでメガバンクを担当たんとうする銀行ぎんこう第だい一いち課長かちょうを務つとめ、よくとしのリーマンショックの際さいには大手おおて銀行ぎんこうグループの「三菱みつびしUFJフィナンシャル・グループ」が金融きんゆう危機ききで苦境くきょうに陥おちいったアメリカの大手おおて証券しょうけん「モルガン・スタンレー」への出資しゅっしを決きめるにあたって当局とうきょく側がわの担当たんとう者しゃとして再編さいへんの実務じつむをサポートしました。

2016年ねんに金融きんゆう庁ちょうの国際こくさい担当たんとうで次官じかん級きゅうの金融きんゆう国際こくさい審議しんぎ官かんに就任しゅうにんし、2019年ねんには、各国かっこくの金融きんゆう当局とうきょくなどでつくるFSB＝金融きんゆう安定あんてい理事りじ会かいで、当局とうきょく間かんの協調きょうちょう促進そくしんに向むけた活動かつどうを行おこなう常設じょうせつ委員いいん会かいの議長ぎちょうを務つとめました。

そして2020年ねんから1年間ねんかん、金融きんゆう庁ちょうの長官ちょうかんを務つとめ、新型しんがたコロナウイルスの影響えいきょうを受うけた企業きぎょうへの資金繰しきんぐり支援しえんなどの対応たいおうにあたりました。

退任たいにん後ごは、東京とうきょう大学だいがく公共こうきょう政策せいさく大学院だいがくいんで客員きゃくいん教授きょうじゅを務つとめているほか、去年きょねんからは生命せいめい保険ほけん系けいのシンクタンクニッセイ基礎きそ研究所けんきゅうじょでエグゼクティブ・フェローを務つとめています。

氷見ひみ野の氏しはフランスの彫刻ちょうこく家か、アリスティド・マイヨールの研究けんきゅう者しゃとしても知しられマイヨールの生涯しょうがいをつづった評伝ひょうでんを出版しゅっぱんしています。また漢籍かんせきにも造詣ぞうけいが深ふかく中国ちゅうごくの経典きょうてん「易えき経けい」の入門にゅうもん書しょも執筆しっぴつしています。

局長きょくちょう就任しゅうにんのよくとしには黒田くろだ総裁そうさいが就任しゅうにんし、2％の物価ぶっか目標もくひょうの達成たっせいに向むけた大だい規模きぼな金融きんゆう緩和かんわやマイナス金利きんりの導入どうにゅう、そして、長期ちょうき金利きんりと短期たんき金利きんりに誘導ゆうどう目標もくひょうを設もうけるいわゆる「イールドカーブコントロール」の策定さくていに携たずさわりました。

その後そのご、名古屋なごや支店してん長ちょうを経へて2018年ねんに理事りじに就任しゅうにんし、去年きょねん再任さいにんされましたが、この間このかん、大だい規模きぼな金融きんゆう緩和かんわ政策せいさくで中心ちゅうしん的てきな役割やくわりを担になってきました。

日銀にちぎんは、2013年ねん3月つきに就任しゅうにんした黒田くろだ総裁そうさいのもと、2％の物価ぶっか目標もくひょうを2年ねん程度ていどで実現じつげんすることを掲かかげ、国債こくさいなどの買い入かいいれを大幅おおはばに増ふやし、市場しじょうに大量たいりょうの資金しきんを供給きょうきゅうする政策せいさくを打ち出うちだしました。

「黒田くろだバズーカ」とも呼よばれた大だい規模きぼな金融きんゆう緩和かんわで、当時とうじの歴史れきし的てきな円えん高だかは修正しゅうせいされ株かぶ高だかが進すすみ、マイナスで推移すいいしていた消費しょうひ者しゃ物価ぶっか指数しすうの上昇じょうしょう率りつもプラスに転てんじました。

2016年ねん1月つきには、日銀にちぎん史上しじょう初はじめてとなる「マイナス金利きんり政策せいさく」の導入どうにゅうに踏み切ふみきりました。2016年ねん9月つきには、短期たんき金利きんりをマイナスにした上うえで、長期ちょうき金利きんりをゼロ％程度ていどに抑おさえるという国際こくさい的てきにも珍めずらしいいまの大だい規模きぼな金融きんゆう緩和かんわ策さくを導入どうにゅうしました。2020年ねんには、新型しんがたコロナウイルスの影響えいきょうを受うけた経済けいざいを下支したざさえするため金融きんゆう緩和かんわを強化きょうかし、国債こくさいや複数ふくすうの株式かぶしきをまとめて作つくるETF＝上場じょうじょう投資とうし信託しんたくなどの買い入かいいれの上限じょうげんを引き上ひきあげました。

しかし日銀にちぎんがめざす賃金ちんぎんの上昇じょうしょうを伴ともなった形かたちでの2％の物価ぶっか目標もくひょうは実現じつげんできず当初とうしょ、2年ねん程度ていどとしていた大だい規模きぼな金融きんゆう緩和かんわ策さくが常態じょうたい化かしています。

【異い次元じげん緩和かんわの功罪こうざい】

異い次元じげんとも言いわれた大だい規模きぼな金融きんゆう緩和かんわは、当時とうじ、産業さんぎょう界かいを苦くるしめていた行き過いきすぎた円えん高だかを是正ぜせいし、デフレでない状況じょうきょうを実現じつげんしました。専門せんもん家かの間までも景気けいきや物価ぶっかに一定いっていのプラスの効果こうかがあったという見方みかたが少すくなくありません。

その一方いっぽうで、金融きんゆう緩和かんわの長期ちょうき化かでさまざまな副作用ふくさようも指摘してきされています。金利きんりの上昇じょうしょうを抑おさえて景気けいきを下支したざさえするために大量たいりょうに国債こくさいを買かい続つづけた副作用ふくさようとして、債券さいけん市場しじょうの機能きのうが低下ていかするなど市場しじょうのゆがみを無視むしできなくなり去年きょねん12月つきには、金融きんゆう緩和かんわ策さくを一部いちぶ修正しゅうせいし長期ちょうき金利きんりの変動へんどう幅はばの上限じょうげんを引き上ひきあげました。

大量たいりょうの国債こくさいの買い入かいいれで、日銀にちぎんが保有ほゆうする国債こくさいの残高ざんだかは去年きょねん9月末げつまつの時点じてんで500兆ちょう円えんを超こえ、短期たんきを除のぞくと、半分はんぶん以上いじょうを日銀にちぎんが保有ほゆうする異例いれいの状況じょうきょうとなっています。日銀にちぎんの買い入かいいれによって国くにの財政ざいせい規律きりつが緩ゆるんでいるという批判ひはんが出でています。

また、株価かぶか指数しすうに連動れんどうしたETF＝上場じょうじょう投資とうし信託しんたくの去年きょねん9月末げつまつの時点じてんの保有ほゆう額がくは帳簿ちょうぼ上じょうの価格かかくで36兆ちょう9057億おく円えん。時価じかで見みると48兆ちょう208億おく円えんに上のぼっています。市場しじょう関係かんけい者しゃなどからは日銀にちぎんが実態じったいとして筆頭ひっとう株主かぶぬしになっている日本にっぽん企業きぎょうも多おおく、日銀にちぎんが市場しじょうをゆがめているという批判ひはんもでています。

【新しん体制たいせいの課題かだい】

新あたらしい体制たいせいの大おおきな方向ほうこう性せいとしてはこれまでの路線ろせんを受け継うけつぎ、賃金ちんぎんの上昇じょうしょうをともなって物価ぶっかが安定あんてい的てきに上昇じょうしょうする経済けいざいの実現じつげんを目指めざすと見みられます。

ただ去年きょねん、エネルギー価格かかくの高騰こうとうに、日銀にちぎんの金融きんゆう緩和かんわを背景はいけいにした記録きろく的てきな円えん安やすがかさなって消費しょうひ者しゃ物価ぶっか指数しすうの上昇じょうしょう率りつは日銀にちぎんが望のぞまない形かたちで4％に達たっしています。

実質じっしつ賃金ちんぎんもマイナスが続つづき暮くらしに影響えいきょうが広ひろがっています。市場しじょうには、大量たいりょうの国債こくさいの買い入かいいれを続つづける今いまの政策せいさくはいつまでも持続じぞくできないという見方みかたが広ひろがり、海外かいがいの投資とうし家かなどの間まで緩和かんわ策さくの修正しゅうせい観測かんそくがくすぶり続つづけています。緩ゆる

和わ策さくの修正しゅうせいを見越みこした投資とうし家かが国債こくさいを売うって長期ちょうき金利きんりに上昇じょうしょう圧力あつりょくがかかるなど日銀にちぎんと市場しじょうの攻防こうぼうも激はげしくなっています。日銀にちぎんは難むずかしいかじ取かじとりを迫せまられています。