がん治療ちりょうの医療いりょう費ひ 増加ぞうか続つづく 専門医せんもんいらが治療ちりょう費ひの実態じったい調査ちょうさ開始かいし

調査ちょうさを始はじめたのは、全国ぜんこくのがんの専門医せんもんいらで作つくる「JCOG＝日本にっぽん臨床りんしょう腫瘍しゅよう研究けんきゅうグループ」です。

がんの治療ちりょうをめぐっては、画期的かっきてきな新薬しんやくの開発かいはつで治療ちりょうが可能かのうになるケースが増ふえる一方いっぽうで、保険ほけん料りょうや税金ぜいきん、患者かんじゃの自己じこ負担ふたんで賄まかなわれる医療いりょう費ひは年々ねんねん、増ふえ続つづけ、医療いりょう保険ほけん財政ざいせいへの影響えいきょうが懸念けねんされています。

今回こんかいの調査ちょうさは、持続じぞく可能かのうな医療いりょうのあり方ありかたを考かんがえるきっかけにするのがねらいで、このうち、男性だんせいで最もっとも発症はっしょう者しゃ数すうが多おおい前立腺ぜんりつせんがんについて調査ちょうさの速報そくほう値ちがまとまりました。

それによりますと、全国ぜんこく38の病院びょういんで「ステージ4」と診断しんだんされた患者かんじゃ700人にんについて去年きょねん3月つきまでの1年間ねんかんの1か月かげつ当あたりの薬剤やくざい費ひを調しらべたところ、従来じゅうらいの薬くすりを使つかった治療ちりょうでは1万まん6383円えんだったのに対にたいし、従来じゅうらいの薬くすりに加くわえて2015年ねん以降いこうに登場とうじょうした新あたらしい薬くすりを使つかった治療ちりょうは27万まん2874円えんから42万まん4746円えんと、16.7倍ばいから最大さいだいで25.9倍ばいになっていました。

また、従来じゅうらいの薬くすりによる治療ちりょうを受うけていた患者かんじゃの割合わりあいは全体ぜんたいの14％だったのに対にたいし、新あたらしい薬くすりを使つかった治療ちりょうを受うけていた患者かんじゃは56％にのぼり、より高額こうがくな治療ちりょうを多おおくの患者かんじゃが受うけていたことがわかったということです。

新あたらしい薬くすりは従来じゅうらいの薬くすりと併用へいようすることで患者かんじゃの生存せいぞん期間きかんの延長えんちょうが確認かくにんされていますが、調査ちょうさにあたったグループによりますと、欧米おうべいでは、新あたらしい薬くすりを使つかった治療ちりょうを受うける患者かんじゃの割合わりあいは3割わりから4割わり程度ていどと、日本にっぽん国内こくないでの今回こんかいの調査ちょうさ結果けっかより低ひくかったということです。

調査ちょうさにあたるグループでは、前立腺ぜんりつせんがんをはじめ、胃いがんや乳にゅうがんなど17種類しゅるいのがんの治療ちりょう費ひについて年内ねんないにも取とりまとめて公表こうひょうし、学会がっかいなどで議論ぎろんしていくということです。

「JCOG」のメンバーで、前立腺ぜんりつせんがんの調査ちょうさにあたった北海道ほっかいどう大学だいがく病院びょういんの大澤おおさわ崇たかし宏ひろし医師いしは、「良よい薬くすりの効果こうかを患者かんじゃが享受きょうじゅすることは大事だいじだが、日本にっぽんでは医師いしも患者かんじゃも薬くすりの値段ねだんを意識いしきすることはほぼなかった。医療いりょうの財源ざいげんには限かぎりがあるので調査ちょうさで実態じったいを把握はあくし、どう解決かいけつしていくのか議論ぎろんのきっかけにしたい」と話はなしています。

専門せんもん家か「医療いりょう費ひについて考かんがえるきっかけに」

医療いりょう経済けいざいに詳くわしい東京とうきょう大学だいがく大学院だいがくいん薬学やくがく系けい研究けんきゅう科かの五十嵐いがらし中ちゅう特とく任にん准じゅん教授きょうじゅは「医学いがくの進歩しんぽによって、効果こうかがあるものの非常ひじょうに高額こうがくな薬くすりが出でてきたことで財政ざいせいへの影響えいきょうが無視むしできなくなってきた。これまで医療いりょうは聖域せいいきのように思おもわれてきたが、医療いりょうに使つかえる資源しげんにも限かぎりがあり、使い方つかいかたを考かんがえないといけない時代じだいになった」と指摘してきしています。

その上うえで、診療しんりょうにあたる専門医せんもんいらが調査ちょうさを始はじめたことについては「単純たんじゅんにこれは安やすいからよくて、これは高たかいからダメという形かたちではなく、医療いりょうの質しつを保たもちながら、医療いりょう者しゃと患者かんじゃが日本にっぽんの医療いりょう費ひについて考かんがえるきっかけになるデータが初はじめてまとめられる意義いぎは非常ひじょうに大おおきい」と話はなしています。