そのうえで「20年間ねんかんも被害ひがい者しゃを取り返とりかえせない異常いじょうな事態じたいが続つづいていることを分わかってほしい。この状況じょうきょうを早はやく打破だはし、すべての拉致らち被害ひがい者しゃの帰国きこくを実現じつげんさせるため、岸田きしだ政権せいけんには北朝鮮きたちょうせんへの新あらたなアプローチも検討けんとうしてほしい」と話はなし、政府せいふの具体ぐたい的てきな行動こうどうを求もとめました。

去年きょねん暮くれ、耕一郎こういちろうさんを引き取ひきとって実みの子ことして育そだててきた飯塚いいづか繁雄しげおさんが83歳さいで死去しきょ。

繁雄しげおさんの墓はかに線香せんこうを手向たむけ、静しずかに手てを合あわせた耕一郎こういちろうさんは「日にち朝ちょう首脳しゅのう会談かいだんから20年ねんがたつのに、いまだに被害ひがい者しゃを救すくえず申し訳もうしわけないと。継続けいぞくして頑張がんばるので力ちからを貸かしてくださいと祈いのりました」と話はなしました。

繁雄しげおさんの自宅じたくには、この20年ねんの活動かつどうを記録きろくした手帳てちょうが残のこされています。

20年ねん前まえの9月つき17日にちのページには「首相しゅしょう訪朝ほうちょう」。

翌日よくじつの欄らんには「外務省がいむしょう訪問ほうもん　死亡しぼう報告ほうこく」の文字もじ。

しかし、裏付うらづけを取とらないまま政府せいふが「死亡しぼう」と発表はっぴょうしたことを知しった繁雄しげおさんは、以来いらい、八重子やえこさんの生存せいぞんを信しんじて救出きゅうしゅつ活動かつどうに身みを投とうじてきました。

部屋へやに置おかれたトレーニング用ようのバイク。

晩年ばんねん、繁雄しげおさんが健康けんこうを維持いじしようと使つかっていたものです。

しかし、耕一郎こういちろうさんと母親ははおやを再会さいかいさせるという宿願しゅくがんは果はたせませんでした。

耕一郎こういちろうさんは「元気げんきな姿すがたで八重子やえこさんと会あうために少すこしでも体力たいりょくを維持いじしようとしていたのではないか。家族かぞくは命いのちを削けずってこの問題もんだいに取り組とりくんでいますが、おやじにはそのリミットが来きてしまった。ただただ寂さびしいし、八重子やえこさんに会あわせたかった。おやじの努力どりょくを水泡すいほうに帰きすわけにはいかない」と語かたりました。

日にち朝ちょう首脳しゅのう会談かいだん当時とうじ、25歳さいだった耕一郎こういちろうさん。

ことし45歳さいになりました。　

「この20年ねん、日本にっぽん政府せいふは何なにをやってきたのか。本気ほんきで被害ひがい者しゃを取り返とりかえすための行動こうどうを何なにか起おこしたのか。家族かぞくが亡なくなっても『痛恨つうこんの極きわみ』というフレーズで終おわり。『一刻いっこくも早はやく救すくいます』とか、キム・ジョンウン（金きむ正ただし恩おん）総そう書記しょきに『拉致らち問題もんだいを解決かいけつしたいので首脳しゅのう会談かいだんをやりましょう』といったメッセージをなぜ言いえないのか。総理そうり大臣だいじんがみずからのことばに意思いしを乗のせて伝つたえることが重要じゅうようなので、局面きょくめんを変かえるために一いち石せきを投とうじてほしい」。

拉致らちから44年ねん。

いまだ母親ははおやの面影おもかげを手繰たぐり寄よせることができない耕一郎こういちろうさんの願ねがいです。

夫おっとの滋しげるさんは、おととし、娘むすめとの再会さいかいを果はたせないまま87歳さいでこの世このよを去さりました。

夫婦ふうふで全国ぜんこくを回まわって続つづけてきた救出きゅうしゅつを訴うったえる講演こうえんは1400回かい以上いじょう。

しかし、高齢こうれいとなった今いま、もうそれだけの体力たいりょくは残のこっていません。

「何なんとか頑張がんばってめぐみちゃんを迎むかえてあげたい一心いっしんで、私わたしが死しなないように、病気びょうきをしないようにと、栄養えいようをとるようにしてるんです」。

自宅じたく近ちかくのスーパーで買い物かいものをしながらそう話はなした早紀さき江こうさん。

今いまは何なにより健康けんこう管理かんりに気きを配くばっていますが、それもすべて「娘むすめを抱き締だきしめるまで倒たおれるわけにはいかない」という覚悟かくごからです。

めぐみさんは45年ねん前まえの中学ちゅうがく1年生ねんせいのとき、バドミントン部ぶの練習れんしゅうを終おえて帰かえる途中とちゅう、拉致らちされました。

部ぶ活動かつどうのあと髪かみをとかすのに使つかっていたということですが、拉致らちされた日ひは学校がっこうに持もって行いっておらず、早紀さき江こうさんが45年間ねんかん、大切たいせつに保管ほかんしてきました。

練習れんしゅう着ぎの胸元むなもとには紺色こんいろの糸いとで「横田よこためぐみ」と刺ししゅうがされていて、ユニフォームにはゼッケンを付つけるためのボタンが6つ、縫ぬい付つけられています。

このとき初はじめてめぐみさんにボタンの付け方つけかたを教おしえたという早紀さき江こうさん。

「『友達ともだちはお母おかあさんが付つけてくれるのに』と言いっていましたが、『それは分わかっているけど、やっておいたほうが絶対ぜったいいいよ』と言いって、やらせてみたんです。そうしたら一生懸命いっしょうけんめいにやり遂やりとげたんですよ」と、当時とうじを思い返おもいかえしていました。

年としを重かさねてきた早紀さき江こうさんは今いま、自分じぶんの命いのちには限かぎりがあり、残のこされた時間じかんが決けっして多おおくないことを強つよく意識いしきせざるをえなくなっています。

早紀さき江こうさんは「これだけ総理そうり大臣だいじんが代かわって、絶え間たえまなく言いい続つづけて国民こくみん運動うんどうにもなっているのに、なぜ事態じたいが動うごかないのか分わからない。岸田きしだ総理そうり大臣だいじんには一刻いっこくも早はやく日にち朝ちょう首脳しゅのう会談かいだんを開ひらいて、キム・ジョンウン（金きむ正ただし恩おん）総そう書記しょきと直接ちょくせつ対話たいわをしてほしい」と話はなしました。

北朝鮮きたちょうせんのキム・ジョンウン総そう書記しょきには「拉致らちはお父様とうさまがなさったことで、あなたの罪つみではない。被害ひがい者しゃを帰かえしてくれたら、その喜よろこびで『ありがとう』と言いって、日本にっぽんから北朝鮮きたちょうせんに必要ひつようなものを送おくることができます。日にち朝ちょう関係かんけいが回復かいふくすればお互おたがいによい未来みらいを描えがけるんです」と呼よびかけました。

蓮池はすいけ薫かおるさんは1978年ねんに新潟にいがたの海岸かいがんから北朝鮮きたちょうせんに拉致らちされ、2002年ねんの日にち朝ちょう首脳しゅのう会談かいだんのあと帰国きこくを果はたしました。

NHKのインタビューに応おうじた蓮池はすいけさんは20年ねん前まえの首脳しゅのう会談かいだんについて「日にち朝ちょうの国交こっこう正常せいじょう化かという目標もくひょうが明確めいかくなものになって、『そのためには拉致らちを認みとめるしかない』という状況じょうきょうを作り出つくりだしたのは大おおきな成果せいかだったと思おもう」と振り返ふりかえりました。

一方いっぽう、ほかの被害ひがい者しゃの安否あんぴ情報じょうほうに関にかんする当時とうじの政府せいふの対応たいおうについては「被害ひがい者しゃを徹底てってい的てきに取り戻とりもどすという姿勢しせいが崩くずれて、北朝鮮きたちょうせんにこのままで行いけると思おもわせた部分ぶぶんがあったのではないか。とことん突き詰つきつめたうえで交渉こうしょうに当あたっていれば、あのようなずさんな証拠しょうこを出だしてきたりはできなかったと思おもう」と指摘してきしました。

そして「20年間ねんかんも解決かいけつしなかったということは、もちろん北朝鮮きたちょうせんにいちばんの責任せきにんがあるが、日本にっぽん政府せいふもなすべきことが十分じゅうぶんできていなかったということではないか。その教訓きょうくんを生いかしてほしい」と話はなしました。

蓮池はすいけさんが強調きょうちょうしたのは、高齢こうれい化かが進すすみ被害ひがい者しゃとの再会さいかいを果はたせずに亡なくなる親おやが増ふえていることです。

蓮池はすいけさんは「拉致らち問題もんだいの本質ほんしつは『親子おやこの再会さいかい』であり、それが果はたせて初はじめて結果けっかを出だせたと言いえる。日本にっぽん政府せいふがそれを北朝鮮きたちょうせんに伝つたえ、このままだと大おおきなチャンスを失うしなってしまうのではないかという危機きき感かんを北朝鮮きたちょうせんに持もたせないといけない」と指摘してきしました。

そして、北朝鮮きたちょうせんが核かく・ミサイル開発かいはつを加速かそくさせる姿勢しせいを鮮明せんめいにしていることに触ふれ「核かくの問題もんだいがなかなか動うごかない状況じょうきょうになっている中なかで、日本にっぽんは核かくと拉致らちの問題もんだいの両方りょうほうを北朝鮮きたちょうせんと交渉こうしょうするのではなく、拉致らちだけでも取り出とりだして交渉こうしょうしなければ早期そうき解決かいけつは難むずかしい。被害ひがい者しゃを帰かえせば一定いっていの人道じんどう支援しえんができることを伝つたえ、そのカードを今いまのうちに北朝鮮きたちょうせんに示しめしておく必要ひつようがある」と強調きょうちょうし、政府せいふに具体ぐたい的てきな行動こうどうを求もとめました。

ことし、94歳さいになりました。

妻つまの嘉代子かよこさんとともにおよそ30年ねんにわたって救出きゅうしゅつ活動かつどうを続つづけてきましたが、嘉代子かよこさんはおととし、94歳さいで亡なくなりました。

明弘あきひろさんは、足腰あしこしの衰おとろえから、日課にっかとしていた散歩さんぽも次第しだいに難むずかしくなり、出でかけるときは車くるまいすに乗のることが増ふえました。

1983年ねんにイギリス留学りゅうがくを終おえてヨーロッパを旅行りょこう中ちゅうに北朝鮮きたちょうせんに拉致らちされた恵子けいこさん。

神戸こうべ市しの自宅じたくには今いまも、恵子けいこさんの大学だいがく時代じだいの写真しゃしんや、海外かいがいの滞在たいざい先さきから家族かぞくに宛あてて送おくられた手紙てがみが大切たいせつに保管ほかんされています。

明弘あきひろさんは「みずから動うごかなければならないと考かんがえ、娘むすめの救出きゅうしゅつに結び付むすびつくと思おもったことはすべてやってきた。今後こんごも政府せいふや政治せいじ家かには、自分じぶんがこの世このよを去さるまで対応たいおうを求もとめていきたい」と話はなしていました。

京子きょうこさんの帰国きこくを一緒いっしょに待まっていた母ははの三江みつえさんは10年ねん前まえに亡なくなりました。

京子きょうこさんと再会さいかいし、三江みつえさんの墓前ぼぜんで帰国きこくの報告ほうこくができる日ひを願ねがっていますが、孟たけしさんもことし75歳さい。

体からだの衰おとろえもあって、1日にち4回かいに分わけて、およそ10種類しゅるいの薬くすりを服用ふくようしています。

孟たけしさんは「今いままでは、とにかく妹いもうとが帰かえるまでは頑張がんばらないといけない、どんな形かたちにせよ頑張がんばっていくんだという気持きもちでした。しかし、このごろは妹いもうとのことを思おもっても、ふと肩かたの力ちからが抜ぬけるような気きがします」と話はなし、どこまで体力たいりょくがもつか不安ふあんをにじませました。

先月せんげつ、新型しんがたコロナの影響えいきょうでおよそ1年ねんぶりとなった鳥取とっとり県内けんないでの講演こうえん会かい。

孟たけしさんは改あらためて妹いもうととの再会さいかい実現じつげんを訴うったえました。

「多おおくの人ひとに私わたしたちの気持きもちを分わかってもらうためには直接ちょくせつ伝つたえないといけない」。

孟たけしさんは、被害ひがい者しゃの救出きゅうしゅつを最後さいごまで求もとめていく覚悟かくごです。

また、拉致らち問題もんだいについて「5人にんの被害ひがい者しゃが帰国きこくして以来いらい、1人にんの帰国きこくも実現じつげんしていないことは痛恨つうこんの極きわみで、ご家族かぞくの切迫せっぱく感かんをしっかり受け止うけとめなければならない。私わたし自身じしん、条件じょうけんを付つけずにキム・ジョンウン総そう書記しょきと直接ちょくせつ向き合むきあう決意けついを述のべてきているが、あらゆるチャンスを逃のがすことなく、全力ぜんりょくで行動こうどうしていかなければならない」と述のべました。