これまで医療いりょう機関きかんは「HER-SYS」と呼よばれるシステムで、すべての患者かんじゃの名前なまえや発症はっしょう日び、連絡れんらく先さきなどを保健所ほけんじょに報告ほうこくしていましたが、今後こんごは65歳さい以上いじょうの高齢こうれい者しゃや入院にゅういんが必要ひつような人ひとなどに限定げんていされることになります。

詳くわしい報告ほうこくの対象たいしょう外がいの人ひとも年代ねんだいと総数そうすうが報告ほうこくできるよう「HER-SYS」が改修かいしゅうされ、感染かんせん者しゃの総数そうすうの把握はあくも継続けいぞくされます。

簡略かんりゃく化かの導入どうにゅうにあたっては抗原こうげん検査けんさキットのインターネット販売はんばいの解禁かいきんや都道とどう府県ふけんが設置せっちする健康けんこうフォローアップセンター、オミクロン株かぶ対応たいおうのワクチン接種せっしゅなど詳くわしい報告ほうこくの対象たいしょう外がいの人ひとが安心あんしんして自宅じたくで療養りょうようできる体制たいせいを整備せいびしたほか、今後こんごの感染かんせん拡大かくだいへの備そなえを強化きょうかしたとしています。

また、希望きぼうする場合ばあいは宿泊しゅくはく療養りょうようや配はい食しょくなどの支援しえんを受うけることができるほか、自宅じたくで療養りょうよう中ちゅうに症状しょうじょうが悪化あっかした場合ばあいには健康けんこうフォローアップセンターが連絡れんらくや相談そうだんを受け付うけつけ、医療いりょう機関きかんにつなぎます。

ただ、これまでのように保健所ほけんじょによる健康けんこう観察かんさつができなくなるため、症状しょうじょうが悪化あっかした際さいに医療いりょう機関きかんの紹介しょうかいなどを迅速じんそくに行おこなえるよう健康けんこうフォローアップセンターの連絡れんらく先さきなどを周知しゅうちすることや外出がいしゅつ自粛じしゅくの要請ようせいなど感染かんせん対策たいさくをどう呼よびかけるかが今後こんごの課題かだいとなります。

また厚生こうせい労働ろうどう省しょうは詳くわしい報告ほうこく対象たいしょうが限定げんていされることで、今後こんご、クラスターの把握はあくが困難こんなんになるとしていて、高齢こうれい者しゃ施設しせつなどでは引き続ひきつづき拡大かくだい防止ぼうしに向むけた取り組とりくみを行おこなうよう各かく都道とどう府県ふけんに求もとめられます。

保健所ほけんじょの負担ふたんの変化へんかについては「単純たんじゅんな業務ぎょうむ量りょうは大幅おおはばに減へるが、軽症けいしょう者しゃの詳くわしい情報じょうほうが登録とうろくされなくなるので、支援しえんが必要ひつようになった場合ばあい、詳くわしい症状しょうじょうの確認かくにんなど複雑ふくざつな業務ぎょうむが発生はっせいする。本当ほんとうの意味いみで業務ぎょうむ量りょうが削減さくげんされたとはなかなか言いいにくい状況じょうきょうだ」と指摘してきしました。

一方いっぽう、全数ぜんすう把握はあくの簡略かんりゃく化かで、詳くわしい報告ほうこくの対象たいしょう外がいの人ひとは健康けんこうフォローアップセンターに登録とうろくすることで、自宅じたくで療養りょうよう中ちゅうに症状しょうじょうが悪化あっかした場合ばあい、健康けんこうフォローアップセンターに連絡れんらくや相談そうだんをして医療いりょう機関きかんにつないでもらうなど、支援しえんを受うけることができます。

このため前田まえだ所長しょちょうは「円滑えんかつに支援しえんを受うけることができるように、確実かくじつに健康けんこうフォローアップセンターなどに届け出とどけでをしてほしい。自治体じちたい側がわも支援しえんが必要ひつようになった際さいに速すみやかに対応たいおうできる受け皿うけざらを整備せいびしておくことが重要じゅうようだ」と述のべました。

都内とないでは64歳さい以下いかの人ひとは都との陽性ようせい者しゃ登録とうろくセンターにオンラインで登録とうろくできるようになりますが、これについて前田まえだ所長しょちょうは「オンラインになじめなかったり対応たいおうが難むずかしかったりする人ひとは無理むりをせずに医療いりょう機関きかんや発熱はつねつ外来がいらいを受診じゅしんするのが適切てきせつな対応たいおうだ」と述のべました。

また、政府せいふが10月つき11日にちから全国ぜんこくを対象たいしょうにした旅行りょこうの支援しえん策さくなどを開始かいしする方針ほうしんを示しめしたことを踏ふまえ「新型しんがたコロナはまだ変異へんいが起おこる可能かのう性せいがある不安定ふあんていなウイルスだ。ウィズコロナと言いわれるが、ウィズリスクとも捉とらえて、リスクが隣となりにあることを忘わすれずに対応たいおうしてほしい」と述のべました。

そのうえで、今後こんごの課題かだいについて「陽性ようせいとなった場合ばあいは自宅じたくで一定いってい期間きかん療養りょうようすることなど、患者かんじゃ自身じしんが責任せきにんを持もって対応たいおうしなければならないことを国くにや自治体じちたいは周知しゅうちする必要ひつようがある。また、今後こんごどういうふうな道筋みちすじでコロナへの対応たいおう策さくを変かえていくのかを国民こくみんに対にたいして分わかりやすく説明せつめいしながら進すすめていくことが求もとめられる」と指摘してきしています。

この中なかで、オミクロン株かぶについては、若者わかものは重症じゅうしょう化かリスクが低ひくいことや感染かんせんの中心ちゅうしんが飲食いんしょく店てんから高齢こうれい者しゃ施設しせつや学校がっこうなどの施設しせつや家庭かてい内ない感染かんせんへと変かわってきたことから、新あらたな行動こうどう制限せいげんを行おこなわず、感染かんせん拡大かくだい防止ぼうしと社会しゃかい経済けいざい活動かつどうの両立りょうりつを図はかる方針ほうしんに転換てんかんしました。

そのうえでオミクロン株かぶに対応たいおうしたワクチン接種せっしゅが開始かいしされたことや海外かいがいで、社会しゃかい・経済けいざい活動かつどうの正常せいじょう化かの動うごきが進すすんでいることなどを踏ふまえ、今回こんかい、感染かんせん者しゃの全数ぜんすう把握はあくを簡略かんりゃく化かして高齢こうれい者しゃなど重症じゅうしょう化かリスクのある人ひとに医療いりょうの重点じゅうてんをおくほか、患者かんじゃの療養りょうよう期間きかんの見直みなおしや水際みずぎわ対策たいさくの緩和かんわなどを行おこない、新型しんがたコロナ対策たいさくの新あらたな段階だんかいへの移行いこうを表明ひょうめいしました。

国くには今後こんご、感染かんせん拡大かくだいが生しょうじても、保健ほけん医療いりょうを機能きのうさせながら社会しゃかい経済けいざい活動かつどうを維持いじできるようにするとしていて、今後こんごの世界せかい的てきな感染かんせんの動向どうこうを踏ふまえ専門せんもん家かの意見いけんも参考さんこうにさらにウィズコロナに向むけた感染かんせん対策たいさくのあり方ありかたについて引き続ひきつづき検討けんとうしていくとしています。

これまでは感染かんせん者しゃの情報じょうほうを登録とうろくする厚生こうせい労働ろうどう省しょうのシステム「HER-SYS」に集積しゅうせきされた感染かんせん者しゃ全員ぜんいんの居住きょじゅう地ちや発症はっしょう日び、感染かんせん経路けいろなどといった詳くわしい情報じょうほうをもとに、専門せんもん家かが感染かんせんが多おおい場所ばしょや経路けいろ、地域ちいきで感染かんせんが広ひろがるスピードなどについて詳くわしい分析ぶんせきを行おこなっていて、その結果けっかが厚生こうせい労働ろうどう省しょうの専門せんもん家か会合かいごうで報告ほうこくされ、対策たいさくに役立やくだてられてきました。

しかし、先行せんこうして詳くわしい報告ほうこくを求もとめる対象たいしょうを重症じゅうしょう化かリスクの高たかい人ひとに限かぎってきた県けんでは「HER-SYS」に入力にゅうりょくされる感染かんせん者しゃ数すうが、実際じっさいの感染かんせん者しゃ数すうより大幅おおはばに少すくなくなっているところも出でていて、分析ぶんせきを行おこなってきた京都大きょうとだい学がくの西浦にしうら博ひろし教授きょうじゅは、1人にんが何なん人にんに感染かんせんを広ひろげたかを示しめす「実効じっこう再さい生産せいさん数すう」を即時そくじに分析ぶんせきすることができなくなっていると指摘してきしています。

西浦にしうら教授きょうじゅは全国ぜんこく一律いちりつで報告ほうこくが簡略かんりゃく化かされたことから今後こんごは

▽緊急きんきゅう事態じたい宣言せんげんやまん延まんえん防止ぼうし等とう重点じゅうてん措置そちのような対策たいさくの効果こうかや

▽連休れんきゅうなどで人ひとの行動こうどうが変化へんかして感染かんせん状況じょうきょうがどう変かわったのかといった分析ぶんせきができなくなるとしています。

また、ワクチンの接種せっしゅ歴れきも報告ほうこくされなくなるため、

▽実じつ社会しゃかいでのワクチンの効果こうかや

▽どのくらいの割合わりあいの人ひとが免疫めんえきを持もっているかといった分析ぶんせきもできなくなり、追加ついか接種せっしゅを行おこなうタイミングの判断はんだんにも影響えいきょうしかねないとしています。

西浦にしうら教授きょうじゅは「新あらたな変異へんいウイルスが出現しゅつげんしたときに感染かんせんの広ひろがりの状況じょうきょうを把握はあくするのに時間じかんがかかることや、一気いっきに対策たいさくが必要ひつようなときの評価ひょうかが難むずかしくなることを危惧きぐしている。重層じゅうそう的てきにデータを集あつめて、どのようなリスク評価ひょうかができるのか考かんがえる必要ひつようがある」と話はなしています。

また、これまで国立こくりつ感染かんせん症しょう研究所けんきゅうじょでは、新型しんがたコロナの症状しょうじょうが出でた人ひとの発症はっしょう日びのデータをもとに、1人にんが何なん人にんに感染かんせんさせるか示しめす感染かんせんの指標しひょう、「実効じっこう再さい生産せいさん数すう」を分析ぶんせきしてきましたが、今後こんごは多おおくの人ひとの発症はっしょう日びが分わからなくなるため、感染かんせんが報告ほうこくされた日ひのデータをもとに分析ぶんせきすることになり、厳密げんみつな分析ぶんせきが難むずかしくなるとみられています。

これについて国立こくりつ感染かんせん症しょう研究所けんきゅうじょの鈴木すずき基はじめ感染かんせん症しょう疫学えきがくセンター長ちょうは今月こんげつ21日にちの専門せんもん家か会合かいごうのあと「感染かんせんしたと推定すいていされる日にちごとの実効じっこう再さい生産せいさん数すうや、年齢ねんれい層そうごとの人口じんこう10万まん当あたり累積るいせき感染かんせん者しゃ数すうの推移すいいなどについては今後こんごは示しめすことができない。当面とうめんは各かく自治体じちたいや医療いりょう機関きかんも試行しこう錯誤さくごすることになると予想よそうされる。状況じょうきょうをみながら分析ぶんせき資料しりょうを工夫くふうしていく」とコメントしました。