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日中国交正常化50年で記念式典
式典は日本の経済界や中国との友好団体などでつくる実行委員会が都内で開いたものでおよそ850人が参加しました。
続いて、岸田総理大臣と中国の習近平国家主席が国交正常化50年にあわせて交換したメッセージの内容が紹介されました。 このあと、会場では今から50年前に北京で当時の田中角栄総理大臣と中国の周恩来首相が日中共同声明に調印してからの歩みをまとめた映像が流され、参加者たちは両国の経済交流などが発展してきた歴史を振り返っていました。 経団連の十倉会長は、記者団に対し「感染症への対応やカーボンニュートラルなど、一つの国では解決できない課題で協力すべきで、短期的な思考にならないことが大事だ」と述べました。
そして、現在、日中両国は多くの困難や課題に直面しているとしたうえで「建設的かつ安定的な日中関係を構築するという共通の目標に向けて、率直な対話を積み重ねながらともに進んでいく必要がある。このことがわれわれが先人たちから受け継いだ使命であり、子孫に対する責務だ」と述べ、両国間で対話を重ねる必要性を強調しました。
孔大使は冒頭、習近平国家主席と岸田総理大臣がメッセージを交換したことに触れ「中日関係の改善、発展への両国指導者の強い意思が伝わってきます」と述べました。 そして、国交正常化以降の50年を振り返り「間違いなく中日関係の発展が最も速く、両国民にもたらした利益が最も多く、地域や世界に及ぼした影響が最も大きい、50年間だったと思います」と評価しました。 さらに今後の日中関係については「双方が50周年という機会を十分に活用して、中日関係の新しい未来を共に切り開いていくことを期待申し上げます」と述べ、両国の関係改善に期待を示しました。
岸田総理大臣は「建設的かつ安定的な日中関係の構築を進めていきたい」とし、習主席は「新しい時代の要求にふさわしい関係を構築するようけん引していきたい」としています。 この中で岸田総理大臣は、国交正常化以降、両国が経済や文化、人的交流など幅広い分野で関係を発展させてきたとしたうえで「現在、日中関係は、さまざまな可能性とともに、数多くの課題や懸案にも直面している。50年前に両国の国交正常化を成し遂げた原点を思い直し、ともに日中関係の新たな未来を切り開いていくことが重要だ」としています。 そのうえで「日中両国は、地域と世界の平和と繁栄に対して大きな責任を共有している。今後の50年も見据え、習主席とともに両国のみならず地域と世界の平和と繁栄のため建設的かつ安定的な日中関係の構築を進めていきたい」としています。 一方、習主席は「50年前のきょう、古い世代の指導者たちは重大な政治決断を下し、両国関係の新たな1ページを切り開いた」としています。 そして「私は両国関係の発展を非常に重視しており、首相とともに双方が国交正常化50周年を契機に時代の潮流に従い、新しい時代の要求にふさわしい関係を構築するようけん引していきたい」としています。 外務省によりますと、国交が正常化された9月29日に中国の国家主席からの祝電が発表されるのは初めてで、両国関係を重視する姿勢を示した形です。 また、李克強首相も岸田総理大臣とメッセージを交換し、「中国側は日本側とともに、両国関係の政治的な基盤を守りそれぞれの分野における交流と協力を深化させ、矛盾と意見の相違を適切にコントロールすることによって両国関係が国交正常化50周年を新たなスタート地点として、持続的に健全かつ安定的に前進するよう推進していきたい」としています。
台湾外交部の欧江安報道官は29日の記者会見で「台湾と日本は自由、民主主義、人権、法の支配などの基本的な価値観を共有している」と強調しました。 そして「台湾と日本が引き続き協力を深めてこそ、インド太平洋地域の平和と安定を促進できる」と述べ、経済、文化、安全保障など幅広い分野で協力をさらに強化していくことに期待を示しました。 一方、日本と中国の関係については「日本政府が自国の利益に基づいて適切な政策決定を行うと信じている」としたうえで「日本が中国との関係改善を進める際は同時に地域の平和と安定、繁栄と発展に役立つよう期待している」と述べ、やんわりとくぎを刺しました。
この中で福田氏は、総理在任中の2008年、日中両国が共通の利益を拡大する「戦略的互恵関係」の推進などを盛り込んだ「日中共同声明」をまとめたことを紹介しました。 そのうえで「中国が経済力をつけ、世界に冠たる強大な国になったことは誰も否定できない。これを前提に今後の日中関係を考えていかなければいけない」と述べ、国民どうしの幅広い交流が必要だという考えを示しました。 また、イベントには、中国と太いパイプを持つことで知られる自民党の二階元幹事長も出席し「国際情勢が変わろうとも、中国との関係は日本にとって最も重要な2国間関係であることを改めて心に刻む。お互いに大国として、国際社会の平和と繁栄にそれぞれの分野で貢献していかなければならない」と述べました。
また、日中首脳会談の予定について問われ「現時点で決まっていることはないが、日中間では、さまざまな対話が行われており、今後とも対話を継続をしていく」と述べました。
1972年9月29日、当時の田中角栄総理大臣と中国の周恩来首相が日中共同声明に調印し、日本と中国の国交正常化が実現しました。 【背景には米中接近】 背景には当時の国際情勢の変化がありました。同じ年の2月、アメリカの当時のニクソン大統領が国交のなかった中国を訪問。世界はアメリカと中国の接近に衝撃を受けます。一連の動きは「ニクソン・ショック」と言われています。日本の頭越しだったため「日本が『置き去り』になるのではないか」といった懸念が国内で出ます。このため、日本は中国との国交正常化を急ぐべきだという声が強まり、中国側との交渉を経て共同声明の調印に至りました。 【日中友好・パンダブーム】 国交正常化にあたり、友好のしるしとして中国から2頭のパンダ「カンカン」と「ランラン」が日本に贈られ、日本人の間で中国への親近感が高まりました。 【中国 日本の経済成長をモデルに】 中国は日本を経済成長のモデルにします。両国の経済関係が深まるきっかけとなったのが、1978年、当時の最高実力者、※トウ小平氏の日本訪問でした。日本で新幹線に乗った際「近代化とは何かがわかった」と述べ、日本の技術支援に期待を示しました。そして、市場経済の考え方を取り入れた「改革開放」政策の実施にかじを切りました。 【日本は中国に対するODA=政府開発援助を開始】 翌1979年に日本は中国に対するODA=政府開発援助を開始しました。企業が中国からの研修生を受け入れ技術協力を進めるなど、官民一体となって中国の経済発展を積極的に支援します。 【天安門事件】 1989年6月。北京で民主化を求める学生らの運動が武力で鎮圧され、大勢の死傷者が出た天安門事件が発生すると、日本政府は円借款とハイレベルの往来を停止します。 【中国の孤立化回避へ動く】 欧米各国が制裁を続ける中、翌1990年のサミット=主要国首脳会議で、当時の海部俊樹総理大臣は円借款の再開を宣言。国際社会で孤立していた中国にいち早く手を差し伸べました。 【日本からの対中投資が再びブームに】 このあと日本からの対中投資は再びブームとなり、国際収支ベースの直接投資額は、1995年には1990年のおよそ8倍の31億ドルあまりに急増しました。 【中国「愛国主義教育」を推進】 日本からの援助や投資を積極的に受け入れる一方で、当時の江沢民国家主席は、共産党政権の正統性を保とうと、党が日本との戦争に勝利したと強調する「愛国主義教育」を推進します。 【宮中晩さん会での江沢民主席の発言に波紋】 1998年、その江沢民主席が宮中で開かれた天皇陛下主催の晩さん会で「軍国主義の道を歩んだ近代日本は中国とアジアの人民に多大な災難を与えた」と述べ、過去の歴史に言及し波紋を呼びます。 【歴史問題が】 2005年には、当時の小泉純一郎総理大臣の靖国神社参拝や日本の歴史教科書検定などに反発する大規模な反日デモが中国各地で発生。歴史問題が大きくクローズアップされました。 【中国「世界の工場」として経済発展】 日本経済が長期の低迷にあえぐ中、中国は「世界の工場」としてめざましい経済発展を遂げます。2008年には北京でオリンピックを開催。2010年にはGDP・国内総生産が日本を抜いて世界第2位の経済大国となりました。 【日本の領海内で中国漁船と海保巡視船が衝突】 同じ2010年。沖縄県の尖閣諸島沖の日本の領海内で中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突する事件が発生します。 【日本政府が尖閣諸島を国有化】 2012年に日本政府が尖閣諸島を国有化すると、中国側は激しく反発。反日デモが全土に拡大し、日系のスーパーや工場などが略奪や放火に遭う事態になりました。尖閣諸島周辺海域では、中国当局の船が領海侵入を繰り返し、近年は船の大型化や武装化も進んでいます。 【中国 覇権主義的な動き強める】 習近平国家主席の体制になると、中国は東シナ海や南シナ海で海洋進出を活発化させるなど覇権主義的な動きを強めていきます。さらに途上国に対して返済できないほど多額の貸し付けを行うことで影響力を増す、いわゆる「債務のわな」の問題なども指摘されています。 【台湾めぐる米中の緊張高まる】 ことしに入ってからは、台湾をめぐる米中の緊張が高まっています。アメリカのペロシ下院議長の台湾訪問に反発した中国が台湾を取り囲むように大規模な軍事演習を実行。中国が発射した弾道ミサイルの一部が日本のEEZ=排他的経済水域の内側に落下しました。中国が台湾への圧力をさらに強めれば、台湾有事につながりかねないと懸念する声が出ています。 【日本と中国 どう向き合うか】 日中国交正常化から50年。地域の平和と安定を維持していくために、中国とどう向き合い、関係改善を模索するのか。日本外交が直面する大きな課題です。
林外相 対話の必要性強調
中国 孔駐日大使「未来を共に切り開いていくことを期待」
岸田首相と習主席がメッセージ交換
台湾報道官「台湾と日本は基本的な価値観を共有している」
トークイベントに福田元首相 自民 二階元幹事長が出席
松野官房長官「安定的な関係を双方の努力で構築していく必要」
自民 茂木幹事長「原点に立ち返り日中関係の構築模索したい」
公明 山口代表「対話を重ねて建設的で安定的な関係を」
国交正常化から50年 日本と中国の関係はどう変化した?