※一※ (名)
(1)周りの土地より著しく高くなった所。 古くから信仰の対象となり, 俗世間を離れた清浄の地とされた。
(2)鉱山。
(3){(1)}の形をしたもの。 (ア)庭園などに小高く土を盛って作ったもの。 築山。 (イ)物をうず高く積み上げたもの。
「書類の~」「~盛り」(ウ)数量がきわめて多いこと。 「人の~」「借金の~」
(4)物の一部で, 高くなっている所。
「ねじの~」
(5)進行するに従って次第に高まり, やがて徐々におさまる物事の全体を{(1)}に見立てていう。 (ア)最も重要なところ。 絶頂。 クライマックス。
「~のない小説」(イ)成否を決定するような緊迫した場面。 「病人は今夜が~だ」
(6)〔(2)の鉱脈を探し当てるのは, きわめて確率の低い賭(カ)けであったことから〕
万一の僥倖(ギヨウコウ)に賭けること。
(7)犯罪事件。 警察や新聞記者などが用いる。
「大きな~だ」
(8)山登り。
「趣味は~だ」
(9)「山鉾(ヤマボコ)」に同じ。
(10)(園城寺(オンジヨウジ)を寺というのに対して)比叡山。 延暦寺。
「昨日~へ罷り登りにけり/源氏(夕顔)」
(11)高く, ゆるぎないもの。 よりどころとすべきもの。
「~と頼みし君をおきて/後撰(離別)」
(12)〔多く(1)にあったことから〕
墓。 山陵。
「御~に参り侍るを/源氏(須磨)」
(13)詐欺。 また, もくろみ。
「女郎の~で, …茶屋とぐるになつてしかけたところが/洒落本・蕩子筌枉解」
(14)動植物の名の上に付けて, 同類のうちで野生のもの, あるいは山地に産するものであることを表す。
「~ねこ」「~ぶどう」「~つつじ」
※二※ (接尾)
助数詞。
(1)盛り分けた物を数えるのに用いる。
「みかん一~五百円」
(2)山, 特に山林や鉱山を数えるのに用いる。
<i>~が当た・る</i>
予想がぴったり適中する。
「試験の~・る」
<i>~が見・える</i>
前途の見通しがつく。 困難を乗りきって見通しが立つ。
<i>~高きが故に貴からず</i>
〔実語教〕
物事は見かけだけで判断してはならない。
<i>~高く水長し</i>
君子の徳の高いことを山に, 広く人民をうるおすことを大河の流れるのにたとえていう語。
<i>~と言えば川</i>
人の言葉に常に逆らうたとえ。 右と言えば左。
<i>~なす</i>
「山をなす」に同じ。
<i>~に千年海に千年</i>
⇒ 海千山千
<i>~眠る</i>
俳句で, 生気を失って静まり返っている冬の山の形容。 ﹝季﹞冬。 《~大和の国に来て泊る/山口青邨》
<i>~装(ヨソオ)う</i>
俳句で, 紅葉で美しく彩られた山の形容。 ﹝季﹞秋。 《搾乳の朝な夕なを~/波多野爽波》
<i>~笑う</i>
俳句で, 草木が萌(モ)え始めた, のどかで明るい春の山の形容。 ﹝季﹞春。 《腹に在る家動かして~/虚子》
〔「臥遊録」の「春山淡冶(タンヤ)にして笑うが如く, 夏山蒼翠(ソウスイ)にして滴るが如く, 秋山明浄にして粧うが如く, 冬山惨淡として眠るが如し」から〕
<i>~を当・てる</i>
(1)鉱脈を掘り当てる。
(2)可能性の少ないものにかけて当てる。
「ダービーで~・てた」
<i>~を鋳(イ)、海を煮る</i>
〔山の鉱物を掘り出して銭を鋳, 海水を煮て塩を得る意〕
国中に産物の豊かなたとえ。
<i>~を掛・ける</i>
(1)万一の幸運をねらって投機的な冒険をする。 山を張る。
(2)幸運をあてにし, 推定をもとにして準備する。
「~・けて試験勉強をする」
<i>~を越・す</i>
「峠(トウゲ)を越す」に同じ。
「春闘も~・した」
<i>~を立・てる</i>
山や岬などを目じるしにして, 釣り場や船の位置を確認する。
<i>~を止(ト)・める</i>
仕事を途中でやめる。
<i>~をな・す</i>
山のように高くなる。 また, 物がうず高く積もる。 山なす。
「~・す大波」
<i>~を抜・く</i>
〔史記(項羽本紀)〕
山を抜き通すほどの強い力のたとえ。
「力~・く」
→ 抜山蓋世
<i>~を張・る</i>
「山を掛ける」に同じ。
「直球に~・る」
<i>~を踏・む</i>
〔警察・犯罪関係の隠語〕
犯罪を犯す。
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