※一※(自動詞)
(1)物の表面などを一面におおうように広がる。
「池に氷が~・る」「蜘蛛(クモ)の巣が~・った廃屋」
(2)木の根や枝が四方八方に大きく広がる。
「四方に根が~・る」
(3)ゆるみなくひきしまる。
「凧(タコ)の糸が~・る」
(4)突き出したり角立ったりしていて目立つ。
「あごの~・った男」
(5)ふくれて, はちきれそうになる。
「食べ過ぎて腹が~・る」「乳が~・る」「青柳の~・りて立てれば/万葉 3443」
(6)筋肉が固くなる。 凝(コ)る。
「肩が~・る」
(7)感情のはたらきが強くなる。 盛んになる。
「欲の皮が~・る」「食い意地が~・る」
(8)(「気が張る」の形で)精神が緊張する。
「気が~・っていたので疲れを感じなかった」
(9)数量・程度などが普通以上に大きくなる。
「嵩(カサ)が~・る」「仕事ガ~・ル/ヘボン(三版)」
(10)他人に負けまいとして張り合う。
「お金子(カネ)で~・る事も出来るけれど/社会百面相(魯庵)」
(11)(多く「ハル」と書く)謡(ウタイ)や浄瑠璃などの音曲で, 高い声, 大きな声を出す。
「『君をいはひて』『はひて』と~・るべからず/申楽談儀」
※二※(他動詞)
❶
(1)布状・網状・糸状の物を, たるまないように広げて固定する。
「テントを~・る」「テニスのネットを~・る」「ロープを~・る」
(2)(「貼る」とも書く)板状の物を何枚もつなぎ合わせて平面を作る。
「化粧板で天井を~・る」「床板を~・る」
(3)(多く「貼る」と書く)糊(ノリ)などをつけて物を平らな面につける。
「封筒に切手を~・る」「ポスターを~・る」「傷口に絆創膏(バンソウコウ)を~・る」「タイルを~・って壁を仕上げる」
(4)水などを, 一面に満たす。
「風呂桶(オケ)に水を~・る」「田んぼに水を~・る」
(5)草木が根や枝を四方八方に大きくのばす。
「大地に根を~・る」「四方に枝を~・る」
❷
(1)人が肘(ヒジ)・肩・胸などを突き出したり広げたりして, 大きく見えるようにする。
「肘を~・る」「肩を~・って歩く」
(2)(「胸を張る」の形で)人が自分の自信や正当性を示すために, 胸を大きく反らせる。
「胸を~・って答える」
(3)(「声を張る」の形で)高い声・大きな声を出す。 張り上げる。
「声を~・って助けを求める」
(4)大きく開く。 目をはる。
「眼(マナコ)を~・り呼吸(イキ)を凝して/運命論者(独歩)」
(5)無理をして押し通す。 (ア)強引にある態度や気持ちを押し通す。
「意地を~・る」「強情を~・る」「我(ガ)を~・る」(イ)ある感情を強くする。 盛んにする。 「欲を~・りすぎて失敗する」(ウ)無理にうわべをかざる。 「虚勢を~・る」「見えを~・る」(エ)(「気を張る」の形で)気前をよくする。 きばる。 「気を~・つて段々御馳走申ければ/浮世草子・禁短気」
❸賭ける。
「有り金全部を~・る」「ヤマを~・る」「相場を~・る」
❹
(1)(「体を張る」の形で)危険をかえりみずに事に当たる。
「おれは体を~・って生きているんだ」
(2)ある地位・立場に身を置く。
「横綱を~・る」
(3)相手に対抗する。 (ア)(「向こうを張る」の形で)相手の行動に対抗するような行動をとる。
「ライバル会社の向こうを~・って新型車を売り出す」(イ)一つのものを複数の者が手に入れようとして争う。 「源三さんと同じ女子(オナゴ)~・つた時なぞ/南小泉村(青果)」
❺
(1)広げるようにして構え設ける。
「祝宴を~・る」「論陣を~・る」「所帯を~・る」「つまらねえ店でも斯(コ)うして~・つてるから/真景累ヶ淵(円朝)」「宇陀の高城に鴫罠(シギワナ)~・る/古事記(中)」
(2)(「勢力を張る」などの形で)ある場所において勢力をもっている。
「関八州に勢力を~・る」
(3)人を見張る。 また, 人を待ちうける。
「~・り込む」
❻(「撲る」とも書く)
(1)平手で打つ。
「横っ面(ツラ)を~・る」「切った~・ったの大乱闘」
(2)相撲で, 張り手を使う。
❼
(1)将棋の駒を盤上のある箇所に置く。
「持ち駒を~・る」
(2)奮いたたせる。
「喇叭(ラツパ)を吹立て軍勢力を~・り/浮城物語(竜渓)」
‖可能‖ はれる
︱慣用︱ 網を~・煙幕を~・肩肘(カタヒジ)~・金で面(ツラ)を~・根が~・門出を~/鈴を張ったよう
Angie Ymnk commented