※一※ (動カ五[四])
❶物を引き出す。
(1)生えている物, はまっている物などを, 引っぱって取り出す。
「とげを~・く」「庭の雑草を~・く」「ビールの栓を~・く」「刀を~・く」
(2)(ポケット・かばんなどの中の金品を)ひそかにすり取る。 また, 輸送途中の荷物などを盗み取る。
「すりに財布を~・かれた」「積み荷を~・かれる」
(3)中に充満しているものを外に出す。 除き去る。
「タイヤの空気を~・く」「風呂の水を~・く」「肩の力を~・く」「気を~・く」
❷一部を取り出す。
(1)(「抽く」とも書く)多くの中から一部を選んで取り出す。 抽出する。
「好きなカードを一枚~・いてください」「原文から三分の一ほどを~・いてダイジェスト版をつくる」
(2)(「抽く」とも書く)有用なもの, 価値あるものだけを選んでわきに置く。
「大きいものだけ~・いて別にしておく」
(3)余分なものやじゃまなものを取り除く。 除去する。
「魚の腹わたを~・く」「わさびを~・いた握りずし」「灰汁(アク)を~・く」「染みを~・く」
(4)過程の一部を省略する。 省く。
「昼飯を~・く」「仕事の手を~・く」
(5)抜き衣紋(エモン)にする。
「襟を~・く」
(6)所属している組織などから離れる。 関係を絶つ。
「籍を~・く」「足を~・く」
❸追いこす。
(1)競走で, 前の者を追いこす。 また, 上位の者よりもさらに上位になる。 追い抜く。
「ゴールまぎわで三人~・いた」「~・きつ~・かれつの大接戦」「彼の実力は群を~・いている」
(2)(新聞などで)他社を出し抜いて特種(トクダネ)記事をつくる。
「 A 新聞に~・かれた」
❹(「貫く」とも書く)向こう側に出す。
(1)穴を作る。
「ハート形に~・く」
(2)突き破る。
「三遊間を~・く当たり」
(3)穴に緒などを通してとめる。 つらぬく。
「浅緑糸よりかけて白露を珠にも~・ける春の柳か/古今(春上)」
❺攻略する。
(1)城などを攻め落とす。
「堅陣(ケンジン)を~・く」
(2)囲碁で, 相手の石を囲んで取る。 うちぬく。
(3)つきくずす。
「~・き難い不信の念」「決心牢乎(ロウコ)として~・くべからず」
❻動詞の連用形の下に付いて複合動詞をつくる。
(1)最後まで…する, …し通すの意を表す。
「がんばり~・く」「走り~・く」「耐え~・く」
(2)ひどく…するの意を表す。
「困り~・いている」
❼だます。 ごまかす。
「とう仰せられたれば~・かれまい物を/狂言・張蛸」
〔「抜ける」に対する他動詞〕
‖可能‖ ぬける
※二※ (動カ下二)
⇒ ぬける
︱慣用︱ 息を~・生き馬の目を~・一頭地を~・気を~・度肝を~/月夜に釜(カマ)を抜かれる
抜きつ抜かれつ
相手を追い越したり追い越されたり。 追いつ追われつ。
「~の大接戦」
抜く手も見せず
〔刀を抜く手元の動きが見えないほどの意〕
刀をすばやく抜くさま。
「~に斬りつける」
抜けば玉散る氷の刃(ヤイバ)
研ぎすまされた日本刀の, 冷たく不気味に光るさまをいう語。
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