〔「ま(目)へ(辺)」の意より〕
※一※ (名)
(1)顔や視線の向いている方向, または場所。
⇔ うしろ
⇔ しりえ
「~を見て歩く」「お父さんの~でもう一度言ってみなさい」
(2)(ア)(事物に方向があると考えて)正面の方向, または場所。
⇔ うしろ
⇔ しりえ
「家の~に空き地がある」「計画の~に立ちはだかる障害」(イ)事物の前方の部分。
「バスの~の方の席につく」(ウ)身体の正面の部分。 着物などを着たとき, 身体の正面にくる部分。 「~がはだける」(エ)人間の陰部。 「~を隠して風呂にはいる」
(3)順序の先の方。 初めの方。 さき。
「電話帳では青田より青木の方が~にある」
(4)(時間的に)(ア)現在またはある時点より以前。 「三十分ほど~に電話があった」「この話は~から変だと思っていた」(イ)ある行為・事態が成立する以前。 「食事の~に手を洗う」「客が来る~に準備を調えておいた」(ウ)(「前の」の形で)さきの。 直前の。
⇔ あと
⇔ のち
「~の首相」「~の正月」
(5)前歴。 特に, 過去の罪。 前科。
「~がある」
(6)(人を指す語句を受けて)その人に対する気がね・遠慮・体面などを示す。
「たたきつけてかへらうと思つたけれどなかやどの~もあるから/安愚楽鍋(魯文)」
(7)形式名詞として用い, かねて思っていたとおりであること, ある判断に基づいていることを表す。
「それは元から覚悟の~であるのだ/魔風恋風(天外)」
(8)(ア)貴人の面前。 また, 貴人に伺候すること。
「正月(ムツキ)のついたち頃に~許されたりけるに/後撰(春上詞)」(イ)(上に「おお」「お」「み」を付けて)貴人その人をさす。 「お~にこそわりなく思さるらめ/源氏(夕顔)」(ウ)(「…のまえ」の形で)女性の名に添えて敬意を表す。 「名をば千手の~と申し候ふ/平家 10」
(9)僧侶に対するもてなしの食膳。
「講師の~, 人にあつらへさせなどして/宇治拾遺 9」
※二※ (接尾)
(1)名詞や動詞の連用形などに付いて, それに相当する分量や部分などを表す。 ぶん(分)。
「一人~」「分け~」
(2)人に関する名詞に付いて, その属性・機能などを強調する意を表す。
「男~」「腕~」「気~」