〔「刺す」「指す」「挿す」などと同源〕
(1)(「射す」とも書く)光が入り込む。 日光が当たる。
「窓から日が~・す」「雲の切れ間から薄日が~・す」「後光が~・す」
(2)相撲で, 自分の腕を相手の腕と胴の間に入れてまわしをつかむ。
「立ち合い一気に左を~・す」
(3)相手に酒をすすめる。
「杯を~・す」
(4)(「点す」とも書く)ある部分に色をつける。
「頬に紅(ベニ)を~・す」「口紅を~・す」
(5)(「点す」とも書く)漢文の文章に, 句読点や訓点を書き入れる。 加点する。
「声点(シヨウテン)を~・す」
(6)手を, 上または前のほうに出す。 (ア)頭をおおうように傘を持つ。 かざす。
「日傘を~・す」(イ)舞で, 手を前に伸ばす。 「~・す手引く手」(ウ)両手で物を高く上にあげる。 さしあげる。 「イシヲ~・ス/ヘボン」
(7)潮が満ちてくる。
「潮が~・してくる」
(8)色が現れる。
「頬に赤味が~・してきた」「血の気が~・してくる」
(9)(「熱がさす」などの形で)熱が出る。
「くだりも留(トマ)りませず, 大ねつが~・しまして/浮世草子・織留 4」
(10)ある気持ちが生じる。
「嫌気が~・す」「眠気が~・す」
(11)姿がちらりと見える。
「木立ちの間に人影が~・す」
(12)(「気がさす」の形で)うしろめたい気持ちになる。 気がとがめる。
「居留守を使うのは気が~・す」
(13)(「魔がさす」の形で)心に魔物がはいり込んだかのように, 一瞬, 悪い考えを起こす。
「あんなことをするとは魔が~・したとしか言いようがない」
(14)物差しで寸法を測る。
「丈を~・して見ると八尺足りなかつたり/西洋道中膝栗毛(魯文)」
(15)机・箪笥(タンス)・箱などを作る。
「松の木の箱を~・して/浮世草子・武道伝来記 1」
(16)(「止す」とも書く)動詞の連用形に付いて用いる。 (ア)動作を中途でやめる意を表す。 …しかける。 …し残す。
「おのおの親ありければ, つつみていひ~・してやみにけり/伊勢 86」(イ)動作が中途でやんだままの状態であることを表す。 …しかかる。 「しばし入り~・して/源氏(宿木)」
〔現代でも, 「用もなき文など長く書き~・してふと人こひし街に出てゆく/一握の砂(啄木)」などのように, 時に用いることがある。 → さし(止)〕
(17)印を押す。
「私に太政官の印(オシデ)を~・して事を行ふ/水鏡(廃帝)」
(18)さしつかえる。 さしさわる。
「いや, 事介は少お寺に~・す事有る/浄瑠璃・薩摩歌」
(19)物を組み立てる。 また, 張りめぐらす。
「ほととぎす鳴くと人告ぐ網~・さましを/万葉 3918」
(20)帯やひもをしめる。 むすぶ。
「(名高イ御帯ヲ)しひて~・させ奉り給ふ/源氏(紅葉賀)」
(21)草木の葉や枝が伸び出す。 茂って物をおおうようになる。
「西の方に~・せりける枝のもみぢ始めたりけるを/古今(秋下詞)」
‖可能‖ させる
︱慣用︱ 気が~・潮が~・熱が~・魔が~
差しつ抑(オサ)えつ
酒杯をさしたり, 相手のさしてくれるのを押し返してすすめたりして酒を飲む。 盛んに杯をくみかわす。
差しつ差されつ
酒杯を相手にさしたり, 相手からさされたりして酒を飲むさま。 盛んに杯をくみかわすさま。 さしつおさえつ。
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