〔「あし」は絶対的な評価として, 「わろし」は相対的な評価として用いる〕
(1)(道徳的・倫理的に)非難されるべきである。 悪い。 けしからぬ。
「よきにつけ~・しきにつけ」「~・しからず」「人よりは妹そも~・しき恋もなくあらましものを思はしめつつ/万葉 3737」
(2)(吉凶・禍福について)不吉だ。 不運だ。
「例の所には, 方~・しとて, とどまりぬ/蜻蛉(中)」
(3)(美的に)みにくい。 醜悪だ。
「御声も惜しませ給はず, いとさま~・しきまで泣かせ給ふ/栄花(花山)」
(4)(技術的に)へただ。 拙劣だ。
「中納言, ~・しく探ればなき也と腹立ちて/竹取」
(5)(身分的・階層的に)卑しい。 下賤(ゲセン)だ。
「冬はついたち, つごもりとて, ~・しきもよきもさわぐめるものなれば/蜻蛉(上)」
(6)(品質的に)粗末だ。 粗悪だ。
「下衆女のなり~・しきが子負ひたる/枕草子 122」
(7)(気分・心理状態について)不快だ。 不機嫌だ。 苦しい。
「おほやけの御気色~・しかりけり/伊勢 114」
(8)(自然的状況について)荒れている。 険悪だ。
「外の海いといみじく~・しく浪高くて/更級」
(9)都合が悪い。 具合が悪い。
「折~・しく」「ここには弓場なくて~・しかりぬべしとてかしこにののしる/蜻蛉(中)」
(10)(動詞の連用形の下に付いて)…するのが難しい。 …しにくい。
「他国(ヒトクニ)はすみ~・しとそいふ/万葉 3748」
→ わろし
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