(1)過去から未来へと限りなく流れ過ぎて, 空間とともに, 一切の出来事がそこで生起する枠のように考えられているもの。 時間。
「~の流れ」「遊びに興じて~の経つのも忘れる」
(2)昔の時間区分。 一昼夜を一二等分する定時法では一時(イツトキ)が今の二時間に当たるが, 昼夜を分けてそれぞれを六等分する不定時法では季節・場所によって異なり, たとえば江戸(東京)の夏至ごろの昼の一時(イツトキ)は約二時間四〇分, 夜のそれは約一時間二〇分で, 一時間以上もの差があった。 十二区分に十二支を配し, 「子(ネ)の時」「丑(ウシ)の時」などということが多い。
(3)ある幅をもって考えられた時間。 (ア)年代。 時代。
「将軍綱吉の~」(イ)話題にしている時代。 その時世。 「~の首相」「~の権力」(ウ)季節。 時候。 時節。 「~は春」(エ)時勢。 世の成り行き。 「~に従う」(オ)誰かにとって都合のよい時勢。 「~に遇(ア)う」
(4)一点として, またそれに近いものとしてとらえられた時間。 (ア)時刻。
「~を告げる鐘」(イ)漠然ととらえられたある時点, または時期。 「~には酒を飲む」「~として不調になることもある」(ウ)何かをするのに都合のよい時機。 好機。 「~を待つ」「~を見て実行する」「~にかなう」(エ)(「秋」とも書く)大事な時期。 「危急存亡の~」
(5)ある特定の動作や状態が起こる時間。 おり。
「この前彼に会った~は元気だった」「子供の~の思い出を話してくれた」
(6)(ア)ある状況を伴った時間を抽象的にいう。 場合。
「どんな服装がよいかは~と場所による」「~に応じた判断が必要だ」(イ)(連体修飾句を受けて)仮定的・一般的にある状況を表す。 (…する)場合。 「もし彼が不在の~には, どうするか」「頭が痛い~は, この薬を飲むとよい」
(7)「時制(ジセイ)」に同じ。
(8)(「どき」の形で)名詞や動詞の連用形の下に付いて, それにふさわしい, それの盛んな, あるいはそういう状態の時間であることを表す。 (ア)時刻。 時間帯。
「昼飯~」「会社の引け~」「たそがれ~」(イ)時節。 季節。 「花見~」「木(コ)の芽~」「梅雨(ツユ)~」(ウ)時機。 機会。 「書き入れ~」「売り~」「引き上げ~」
→ 刻
→ 時しも
→ 時として
→ 時に
<i>~有・り</i>
(1)時節が到来する。
「~・りて花も紅葉もひと盛り/風雅(雑中)」
(2)好機に合う。 栄える。 時にあう。
「~・るも時なきも, 御心ざしの程こよなけれど/栄花(月の宴)」
<i>~移り事(コト)去・る</i>
〔陳鴻「長恨歌伝」〕
歳月が経過すれば, すべての物事が変化する。
「たとひ~・り, たのしびかなしびゆきかふとも/古今(仮名序)」
<i>~が解決する</i>
つらい思いや困難な問題も, 時がたつにつれて自然とおさまってしまうものだ。
<i>~知らぬ山</i>
〔いつも雪をいただいていて, 季節の移り変わりを知らない山の意〕
富士山のこと。
「~は富士の嶺いつとてか鹿の子まだらに雪のふるらむ/伊勢 9」
<i>~知・る</i>
時節をわきまえる。
「~・らば花もときはの色に咲け/増鏡(むら時雨)」
→ 時知り顔
<i>~知る雨</i>
〔秋が終わり冬の訪れる時を知っている雨の意〕
時雨(シグレ)の異名。
「~のいかでふるらん/秋風抄」
<i>~とすると</i>
場合によっては。 ひょっとすると。 時として。
<i>~と場合</i>
(1)時期と場所柄。
「~を選ぶ」
(2)その時その時の場合・機会。
「~による」
<i>~無(ナ)・し</i>
(1)定まった時がない。 いつものことである。
「み吉野の耳我の嶺に~・くそ雪は降りける/万葉26」
(2)不遇である。 世に用いられず失意の状態にある。
「身の~・かりしをのみ見え奉りて/今鏡(藤波下)」
<i>~に遇(ア)・う</i>
好機にめぐりあう。 栄える。
「み世のみかどにつかうまつりて~・ひけれど/伊勢 16」
<i>~に遇(ア)えば鼠(ネズミ)も虎(トラ)となる</i>
時流にあうと, 取るに足りない者も勢い盛んになる。
<i>~に当た・る</i>
(1)その時に臨む。
「人の心の~・りて気色ばめらむ/源氏(帚木)」
(2)ふさわしい時になる。 時にあう。
「其上今の相国は, ~・る職に達し/太平記27」
<i>~に従・う</i>
時の流れに従う。 時勢に順応する。
<i>~に取りて</i>
(1)場合によって。
「人, 木石にあらねば, ~, 物に感ずる事なきにあらず/徒然 41」
(2)その時に当たって。 当時にあって。
「信西は~さうなき者なれば/愚管 5」
<i>~に因(ヨ)・る</i>
その場合・状況に応じる。 場合による。
「親切も~・っては仇(アダ)になる」「冗談も~・りけりだ」
<i>~の=代官(=大将)日の奉行</i>
世の中をうまく渡っていくには, その時々の権力者に従っているのがよいということのたとえ。
<i>~の用には鼻をも削(ソ)ぐ</i>
緊急を要する場合には手段を選ばないことのたとえ。 時の用には鼻を欠く。
<i>~は得難くして失い易し</i>
(1)〔史記(淮陰侯伝)〕
好機にめぐりあうことはなかなかできず, たとえ好機に恵まれてもそれはとりにがしやすい。
(2)〔淮南子(原道訓)〕
わずかな時間でも大切にしなければならない。
<i>~は金なり</i>
〔Time is money.〕
時間は貴重で有効なものであるから, 浪費してはならない。
<i>~は人を待たず</i>
時間は人の都合などにかまわず刻々に過ぎてゆく。 歳月人を待たず。
<i>~を争・う</i>
一刻を争う。
<i>~を失・う</i>
(1)好機をにがす。 チャンスをにがす。
(2)時勢に合わずに衰える。
「~・ひ世に余されて/方丈記」
<i>~を移さず</i>
実行の時を延ばさずに。 すぐさま。 即座に。
<i>~を得(エ)顔</i>
時流に乗って得意顔なさま。
「保守的思想が~に跋扈するのであるから/一隅より(晶子)」
<i>~を得る</i>
好機にめぐりあって栄える。 時流に乗る。
「~得た新製品」
<i>~を稼・ぐ</i>
時間をひきのばす。 時間をかせぐ。
<i>~を奏・す</i>
宮中で宿直の官人が時刻を告げ知らせる。
「時奏する, いみじうをかし/枕草子290」
→ 時の奏
<i>~を撞(ツ)・く</i>
時刻を知らせる鐘を鳴らす。
<i>~をつく・る</i>
鶏が鳴いて夜明けの時を知らせる。
<i>~を待・つ</i>
時機を待つ。 好機の来るのを待つ。
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