※一※
❶物が存在する。
(1)(何が存在するかが問題の場合)存在する。
「山にはまだ雪が~・る」「この川の真ん中に国境が~・る」「何かいい方法が~・るといいのだが」
(2)(その物が存在すること自体は自明で, 場所が問題である場合)位置する。
「本社は大阪に~・る」「その町は札幌の北三〇キロの所に~・る」「事故の責任は私に~・る」
❷人が存在する。
(1)(誰が存在するかが問題の場合)いる。
「昔々, ある所におじいさんとおばあさんが~・りました」「今は昔, 竹取の翁といふもの~・りけり/竹取」
(2)人が死なずに生存する。
「先生の~・りし日をしのぶ」
(3)(その人が存在すること自体は自明のことで, 場所が問題である場合)人がある場所に滞在する。 そこに暮らす。
「当時彼はパリに~・って絵の勉強をしていた」「彼女は今病の床に~・る」
(4)人がある特別の地位や環境にいる。
「逆境に~・っても望みを捨てない」「長年にわたって理事長の職に~・る」
❸所有している。 持っている。
(1)人が財産などを所有している。
「彼には財産が~・る」「お隣にはいい車が~・る」
(2)ある人が, 家族・親戚・友人などをもっている。
「大阪に親戚が~・る」「妻子の~・る身」
(3)物や人などが, ある要素や, 付属的・付随的な物を持っている。
「サメには鋭い歯が~・る」「あの人は顔にほくろが~・る」
(4)人や物がある属性をもっている。
「彼女には気品が~・る」「ニンニクには独特の匂いが~・る」
(5)人などがある能力・実績・経験を持っている。
「彼は力が~・る」「相当の学力が~・る」「政界に影響力が~・る」
(6)人が, ある考え・記憶・感覚を持っている。
「私にいい考えが~・る」「この説にはいろいろ疑問が~・る」
(7)人が, 何か解決・処理すべき事柄をもっている。
「用事が~・るのでお先に失礼する」「ちょっと相談が~・るんだけど」
❹(数量を表す語を副詞的に受けて)その物の数・量・重さ・長さ・時間などが…だということを表す。
「頭が二つ~・る蛇」「重さが一〇トンも~・る岩」「運動会まであと一週間~・る」
❺動作・現象が実現する。
(1)何か事が起こる。
「踏切で事故が~・った」「二人の間に何か~・ったんですか」「二度~・ることは三度~・る」
(2)行事・催し・会合などが行われる。
「これから会議が~・る」
❻
(1)(「…とある」の形で)他人の文章を引用して示す。 …と書かれている。
「法律の条文には『…』と~・る」「彼の手紙には『来月帰国する』と~・った」
(2)(「…とあって」の形で)状況・場合が…であるので。 …なので。
「子供の日と~・ってどこの遊園地も親子連れでいっぱいだ」「全体で決まったと~・っては断れない」
(3)(「…することがある」「…したことがある」などの形で)時には…する, 過去に…した経験をもつ, などの意を表す。
「時に内容の一部を変更することが~・る」「何度か京都へ行ったことが~・る」
(4)(「…にあっては」の形で)人間集団・社会を表す名詞を受け, そこにおいては, の意を表す。
「わが党に~・っては常に国民の要望にこたえる政策を作っていきたい」
※二※(補助動詞)
❶名詞に断定の助動詞「だ」の連用形「で」を添えたものに付いて, 指定の意を表す。
(1)ある物事と他の物事とが等しい関係にあることを表す。
「彼は学生で~・る」「一足す二は三で~・る」
(2)ある物事が何らかの類に属することを表す。
「トラはネコ科の動物で~・る」「吾輩は猫で~・る」
(3)ある状態, ある事態にあることを表す。
「あたりは一面の銀世界で~・る」「彼はもう退職したはずで~・る」
(4)古語では, 断定の助動詞「なり」「たり」の連用形「に」「と」を添えたものに付く。
「一つ松人に~・りせば太刀佩(ハ)けましを/古事記(中)」「なかなかに人と~・らずは酒壺になりにてしかも酒にしみなむ/万葉 343」
❷種々の語に付いて, そういう状態である, そういう性質をもっている意を表す。 「ある」の前に助詞の入ることもある。
(1)形容詞・形容動詞の連用形に付く場合。
「うれしくも~・り, 悲しくも~・る」「狭くは~・っても楽しいわが家」「ここは静かで~・る」「みんな親切で~・った」
(2)副詞「かく」「しか」「さ」などに付く場合。
「世の中は恋繁しゑやかくし~・らば梅の花にもならましものを/万葉 819」
(3)打ち消しの助動詞「ず」, 推量の助動詞「べし」の連用形に付く場合。
「あすよりはみ山隠りて見えずかも~・らむ/古事記(下)」「かくばかり恋ひむとかねて知らませば妹をば見ずそ~・るべく~・りける/万葉 3739」
❸動詞の連用形に助詞「て(で)」を添えた形に付いて, 動作・作用の完了・継続・残存の意を表す。 主として他動詞を受ける。
(1)ある動作・作用の結果が続いていることを表す。
「窓が開けて~・る」「小さく刻んで~・る」
(2)準備がきちんとなされていることを表す。
「あすの事はちゃんと予習して~・る」「表に車を待たせて~・る」「きれいに継いで~・る」
❹動詞の連用形に助詞「つつ」を添えた形に付いて, 動作・作用の進行を表す。
「太陽が山の端に沈みつつ~・る」「病状はだんだんとよくなりつつ~・る」
〔翻訳文の影響で, 「書物を読みつつ~・る」のように継続する動作についても用いることがある〕
❺動作性の漢語名詞または動詞の連用形に付いて, その動作をする人に対する尊敬の意を表す。
(1)接頭語「御」によって敬意を添えることが多い(現代語ではややふざけた場合にしか言わない)。
「どうぞ御笑覧~・れ」「正月五日, 主上御元服~・つて/平家 1」「少し御まどろみ~・りける御夢に/太平記 3」
(2)(「御…あらせられる」の形で)非常に高い敬意を表す。
「殿下が会場に御臨席~・らせられる」「伊勢神宮に御参拝~・らせられる」
〔(1)中世後期の口語ではラ行四段が一般的となる。 (2)現代語では, 「ある」の打ち消しの言い方として, 「あらない」は用いられず, 「ない」の語が用いられる。 ただし, 近世には, ごくまれに, 「せく事はあらない/浄瑠璃・宵庚申(上)」などの例がみられる〕
︱慣用︱ 上には上が~・気が~・名が~・花も実も~・一癖~・脈が~/心ここに有らず
有る限り
あるだけみんな。 残らず。 あるったけ。
「~の食糧をくいつくす」
有るか無きか
(1)あると言えば言えるが, ほとんどないと言ってよいほどはかないさま。 たよりないさま。 弱々しいさま。
「かげろふの~にけぬる世なれば/後撰(雑二)」
(2)存在するかしないか。
「思ふべきわが後の世は~なければ/新古今(雑下)」
有るか無し
あるかないかわからないほど少量であること。 わずか。
「~(か)の分量」
在るが儘(ママ)
実際にある, その状態のまま。 ありのまま。
有る事無い事
本当のこととうそのこと。
「~を言いふらす」
有るにも有らず
確かに生きているともいえないような状態。 正気でない状態にもいう。
「さりともと思ふらんこそ悲しけれ~ぬ身を知らずして/伊勢 65」
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