※一※ (動カ五[四])
❶物と物とが接触・接合・付着する。
(1)二つの物が触れたまま離れなくなる。 くっつく。 接合する。
「折れた腕の骨がうまく~・いた」「接着剤でぴったり~・いて離れなくなる」
(2)ある物と他のある物とが接近してすき間がない状態になる。
「両ひざが軽く~・くように座る」
(3)ある物に異質な物が付着・浸透する。 くっつく。
「顔に泥が~・いている」「洋服に糸くずが~・いている」「シャツにしみが~・く」
(4)主たる物に付随的なものが添えられる。 (ア)付属する。
「鍵の~・いた日記帳」「毛皮のえりの~・いたコート」(イ)(「附く」とも書く)あとから加わって, 全体が増える。 「話に尾鰭(ヒレ)が~・く」「利息が~・く」(ウ)草木の芽が出る。 実がなる。 「今年は桃のつぼみが~・かない」「梅の実がいっぱい~・く」
(5)あとが残る。 (ア)力を加えたあとが残る。
「机に傷が~・く」「点々と足跡が~・いている」(イ)印(シルシ)が記される。 「〇印の~・いているのが実行委員です」(ウ)帳簿などに記入される。 「支払った金額はすべて帳簿に~・いている」
(6)植物などがしっかり根をおろす。 根づく。
「挿し木がうまく~・いた」「種痘が~・く」
(7)肉・力・能力・良さなどが身に備わる。
「栄養が身に~・かない」「丸暗記では知識が身に~・かない」「実力が~・く」「貫禄が~・く」「早寝早起きの習慣が~・く」「徳を~・かんと思はば, すべからく先づその心づかひを修行すべし/徒然217」
(8)連歌・俳諧で, 前の句と後の句がうまくつながる。
❷そばに寄る。 近付く。
(1)(意図的動作)人が他の人のそばにいる。 (ア)保護するためにそばにいる。 付き添う。
「患者に付き添い人が~・く」「要人には護衛が~・く」(イ)他の人のあとに続く。 「行列の後ろに~・く」(ウ)対立するものの一方に加わる。 味方をする。 「南朝に~・くか北朝に~・くか」「誰がこっちに~・いてくれるか」
(2)(結果的動作)あるものが現れる・来る。 (ア)ある商品の買い手が現れる。 「高すぎて買い手が~・かない」(イ)他から苦情が寄せられる。 「商品にクレームが~・く」「けちが~・く」(ウ)(多く「憑く」と書く)魔性のものが人にとりつく。 「キツネが~・いている」(エ)
〔「運がつく」の省略〕
幸運に恵まれる。
「今日は~・いている」
❸あるものが加えられ, 新しい状態になる。
(1)新たに設けられる。 設置・設備される。
「下宿に電話が~・いた」「十字路に信号機が~・いた」
(2)(「点く」とも書く)ある現象・活動などが現れる。 (ア)火が燃え出す。 発火する。
「ライターの具合が悪くて火が~・かない」(イ)灯火がともる。 点灯する。 また, 電気で作動する装置が働く。 「部屋にあかりが~・く」「朝七時にはラジオが~・くようにセットしてある」「一日中テレビが~・いている」
(3)名称・評点などが加えられる。 (ア)名前が与えられる。 名付けられる。
「生まれたばかりでまだ名前が~・いていない」(イ)役・予算などが割り当てられる。 「王女の役が~・いた」「修理のための予算が~・いた」(ウ)評点・値段が与えられる。 「この間の作文には九〇点が~・いていた」「ただの普通の壺に一千万円の値が~・いた」「できた物を買うより自分で作るほうが安く~・く」「かえって高いものに~・いた」
❹きちんとした説明が加えられる。
「彼女がなぜ自殺したのか説明が~・かない」「理屈はどうとでも~・く」
❺実現・決着が望まれていたことが実現・決着する。
「やっと決心が~・いた」「まだあきらめが~・かない」「ふんぎりが~・かない」「あっさり勝負が~・いた」「混乱して収拾が~・かない」「あの問題はかたが~・いた」「けりが~・く」「当事者の間で話が~・いた」
❻区分がはっきりする。 また, 自然と差が出る。
「やっていいことと悪いことのけじめが~・かないのか」「第二走者との間に差が~・いた」
❼判断・予想が行われる。
(1)「…がつく」の形で用いる。
「犯人はだいたい見当が~・いている」「全く予想が~・かない」「察しが~・く」「めぼしが~・く」
(2)助詞「と」「に」で受けたものに打ち消しを伴って用いる。
「うそとも本気とも~・かない」「愚にも~・かぬ計画」
❽感覚や意識が働く。
(1)ある感覚器官に強く感じられる。
「大きな看板が目に~・いた」「時計の音が耳に~・いて眠れない」「においが鼻に~・く」
(2)(「気がつく」の形で)(ア)あるものごとを認識する。 気づく。
「…ということに気が~・いた」(イ)失っていた意識がよみがえる。 正気にかえる。 「気が~・いたらベッドの中だった」
(3)ある気持ちがおこる。
「里心が~・く」「物心が~・く」
❾(「心につく」の形で)人に好ましく思われる。 気に入る。
「をかしき絵など多く雛遊びなどする所に, と心に~・くべきことを宣ふけはひ/源氏(若紫)」
〔「付ける」に対する自動詞〕
→ つく(接尾)
※二※ (動カ下二)
⇒ つける
︱慣用︱ 足が~・足下に火が~・板に~・襟に~・襟元に~・縁に~・恰好が~・時代が~・尻に火が~・土が~・手が~・箔が~・人目に~・虫が~・焼け棒杭(ボツクイ)に火が~/悪銭身につかず・足が地に付かない・示しがつかない・手に付かない・火のついたように・引っ込みがつかない
付かず離れず
〔「即(ツ)かず離れず」とも書く〕
深くかかわることはしないが, また離れすぎもしない, ほどよい距離を保つ。 中立的な立場で物事に対するさま。 不即不離(フソクフリ)。