※一※ (動ワ五[ハ四])
※一※
(1)あるにおいがあたりにただよう。 それがあるにおいを発散する。
〔「かおる」が快いにおいについていうのに対し, 「におう」は快・不快両方についていうが, 不快な場合の漢字表記は多くは「臭う」〕
「梅の香が~・う」「肉を焼くにおいが~・ってくる」「くつ下が~・う」「橘の~・へる香かもほととぎす/万葉 3916」
(2)何となく, それらしい雰囲気が感じられる。 多く好ましくない場合に用いる。
「不正が~・ってくる」
※二※
(1)赤などの色があざやかに照り輝く。
「春の園(ソノ)紅(クレナイ)~・ふ桃の花下照る道に出で立つ娘子(オトメ)/万葉 4139」
(2)美しさ・魅力などが, その内部からただよい出る。 美しくつややかである。
「~・うばかりの美少女」「愛嬌が~・う女性」「紫の~・へる妹(イモ)を/万葉21」
(3)他のものの色に映り染まる。
「手に取れば袖さへ~・ふをみなえし/万葉2115」
(4)他のものの影響を受けて, はなやかに栄える。 恩恵やおかげをこうむる。
「人ひとりを思ひかしづき給はむ故(ユエ)は, ほとりまでも~・ふ例(タメシ)こそあれ/源氏(真木柱)」
(5)染色・襲(カサネ)・縅(オドシ)などで, 色を次第にぼかしていく。
「うへはうすくて, したざまにこく~・ひて/雅亮装束抄」
※二※ (動ハ下二)
美しく色づける。
「住吉(スミノエ)の岸野の榛(ハリ)に~・ふれど/万葉 3801」
〔古くは, 「に」は「丹」で赤色の意, 「ほ」は「秀(ホ)に出ず」などの「秀」でぬきんでる意で用いられた。 「におう」は, 本来は色彩に関する美しさをいう語。 「匂わす」に対する自動詞〕
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