Actualités japonaises: 「危険な空き家」自治体の撤去費用３年間で17倍に

倒壊とうかいなどのリスクがあるいわゆる「危険きけんな空き家あきや」の撤去てっきょに、昨年度さくねんど、全国ぜんこくの自治体じちたいが投とうじた費用ひようは合あわせて３さん億おく8000万まん円えんあまりにのぼり、３さん年間ねんかんで17倍ばいと急増きゅうぞうしていることがわかりました。一方いっぽうで、空き家あきやの所有しょゆう者しゃから、費用ひようを回収かいしゅうできたケースはほとんど無なく、専門せんもん家かは、「今後こんごも公的こうてきな負担ふたんは増加ぞうかし、自治体じちたいの財政ざいせいを圧迫あっぱくするおそれがある」と指摘してきしています。日常にちじょう的てきに人ひとが住すんでいない「空き家あきや」は、去年きょねん10月つきの時点じてんで全国ぜんこくで849万まん戸こにのぼっていてこのうち、放置ほうちされて倒壊とうかいなどのリスクがある「危険きけんな空き家あきや」を、自治体じちたいが、強制きょうせい的てきに撤去てっきょするケースが相次あいついでいます。

昨年度さくねんど、全国ぜんこくの自治体じちたいが強制きょうせい的てきに撤去てっきょしたケースは67件けんあり、ＮＨＫえぬえいちけいの調査ちょうさで、その撤去てっきょ費用ひようの総額そうがくは、およそ３さん億おく8000万まん円えんにのぼることがわかりました。

これは、自治体じちたいによる空き家あきやの撤去てっきょを後押あとおしするための空き家あきや対策たいさくの特別とくべつ措置そち法ほうができた平成へいせい27年度ねんどと比くらべると、およそ17倍ばいと急増きゅうぞうしています。

急増きゅうぞうの背景はいけいには、通学つうがく路ろへの屋根やね瓦かわらの落下らっかや、放火ほうかによる火災かさいの発生はっせいなど、周囲しゅういへの悪影響あくえいきょうから、自治体じちたいが対応たいおうを迫せまられているケースが増ふえていることがあります。

一方いっぽうで、こうした空き家あきやは、所有しょゆう者しゃと連絡れんらくがとれなかったり所有しょゆう者しゃがいなかったりして、自治体じちたいが撤去てっきょを肩代かたがわりしても、費用ひようを回収かいしゅうできず、９きゅう割わり以上いじょうが公費こうひ負担ふたんとなっています。

空き家あきや問題もんだいに詳くわしい東洋とうよう大学だいがくの野澤のざわ千絵ちえ教授きょうじゅは、「危険きけんな空き家あきやは、今後こんごも増ふえ続つづけるとみられ、コストの増加ぞうかが自治体じちたいの財政ざいせいを圧迫あっぱくするおそれがある。住宅じゅうたくは個人こじんの財産ざいさんであり、所有しょゆう者しゃによる解体かいたいを後押あとおしする仕組しくみが必要ひつようだ」と指摘してきしています。

撤去てっきょ自治体じちたいにとって財政ざいせい的てき・人的じんてきにも大おおきな負担ふたん

倒壊とうかいなどのリスクがあるいわゆる「危険きけんな空き家あきや」の撤去てっきょは、自治体じちたいにとって財政ざいせい的てきにも人的じんてきにも大おおきな負担ふたんとなっています。

千葉ちば県けん香取かんどり市しでは、少すくなくとも120件けん余あまりの「危険きけんな空き家あきや」が確認かくにんされていますが、対応たいおうする専属せんぞくの職員しょくいんはおらず、ほかの業務ぎょうむと兼務けんむする３さん人にんの担当たんとう者しゃが担になっています。

香取かんどり市しでは、危険きけんな空き家あきやが見みつかると、建物たてものの「登記とうき」から所有しょゆう者しゃを特定とくていして連絡れんらくしています。ところが、なかには、そもそも登記とうきが無ない物件ぶっけんや、記載きさいされた情報じょうほうが長年ながねん更新こうしんされていなかったりして、現在げんざいの所有しょゆう者しゃがわからないことがあるということです。

また、所有しょゆう者しゃが死亡しぼうしている場合ばあいには、戸籍こせきなどを調しらべて、配偶はいぐう者しゃや子こどもなどを捜し出さがしだす必要ひつようがありますが、関係かんけい者しゃが合あわせて数すう十じゅう人にんにのぼるケースもあり、その一いち人にん一いち人にんの連絡れんらく先さきを調しらべたり、所有しょゆう権けんを確認かくにんしたりするのは大おおきな負担ふたんとなっています。

さらに、せっかく所有しょゆう者しゃが確認かくにんできてもすぐに修理しゅうりや撤去てっきょに応おうじないケースもあり、改善かいぜんを求もとめ続つづけなければならないということです。

一方いっぽうで、平成へいせい27年ねんに特別とくべつ措置そち法ほうが施行しこうされて以降いこう、所有しょゆう者しゃがいなかったり、特定とくていできなかったりした場合ばあいは自治体じちたいが空き家あきやを撤去てっきょできるようになりましたが、費用ひようは回収かいしゅうできないケースが多おおく、香取かんどり市しもすでに少すくなくともおよそ1500万まん円えんを、市しが公費こうひで負担ふたんしています。

香取かんどり市し都市とし整備せいび課かの佐藤さとう彰彦あきひこさんは「所有しょゆう者しゃの調査ちょうさには時間じかんがかかる上うえに、放置ほうちされている場合ばあいには市しで対応たいおうせざるを得えず、財政ざいせい的てきな負担ふたんもかなり大おおきい。所有しょゆう者しゃがしっかり管理かんりすれば、市しの出でる幕まくは無ないはずなので、建物たてものは放置ほうちせずに最後さいごまで面倒めんどうを見みてほしい」と話はなしていました。

リスク高たかい「危険きけんな空き家あきや」への対応たいおう新あらたな課題かだい

「空き家あきや」の増加ぞうかに伴ともなって、全国ぜんこくの自治体じちたいでは特とくにリスクが高たかい「危険きけんな空き家あきや」への対応たいおうが新あらたな課題かだいとなっています。

総務そうむ省しょうの調査ちょうさによりますと、空き家あきやは、昭和しょうわ38年ねんには52万まん戸こでしたが、平成へいせい10年ねんには当初とうしょの10倍ばいの575万まん戸こ、平成へいせい20年ねんには757万まん戸こ、そして去年きょねんは849万まん戸こと一貫いっかんして増ふえ続つづけています。

これに伴ともなって、こうした空き家あきやの中なかには長ながい間ま管理かんりされず放置ほうちされたままの「危険きけんな空き家あきや」が増ふえているものとみられます。

今回こんかいのＮＨＫえぬえいちけいの取材しゅざいでは、全国ぜんこく各地かくちでは台風たいふうの影響えいきょうで建物たてものの外壁がいへきが崩くずれたケースや屋根やね瓦かわらが道路どうろに落下らっかしたケース、それに建物たてものが放火ほうかされて火災かさいが発生はっせいしたケースなどがありました。

また、通学つうがく路ろに近ちかい場所ばしょにあるため、倒壊とうかいした場合ばあいには、子こどもたちに被害ひがいが出でるおそれがあるケースも複数ふくすうありました。

強制きょうせい的てきな撤去てっきょも増ふえ自治体じちたい負担ふたんも大おおきく

危険きけんな空き家あきやの増加ぞうかに伴ともなって自治体じちたいが強制きょうせい的てきに撤去てっきょするケースも増ふえ、負担ふたんも大おおきくなっています。

４よん年ねん前まえの平成へいせい27年ねんに、「空き家あきや対策たいさく特別とくべつ措置そち法ほう」が施行しこうされて以降いこう、自治体じちたいが強制きょうせい的てきに撤去てっきょしたケースは、平成へいせい27年度ねんどは９きゅう件けん、平成へいせい28年度ねんどは37件けん、平成へいせい29年度ねんどは52件けん、昨年度さくねんどは67件けんと年々ねんねん増加ぞうかしていています。

自治体じちたいが撤去てっきょに投とうじる費用ひようも急増きゅうぞうしていて、ＮＨＫえぬえいちけいの調査ちょうさでは、平成へいせい27年度ねんどは2200万まん円えん余あまりでしたが、平成へいせい28年度ねんどはおよそ１いち億おく4000万まん円えん、平成へいせい29年度ねんどはおよそ１いち億おく2000万まん円えんになり昨年度さくねんどは３さん億おく8000万まん円えんにのぼっています。

自治体じちたいが撤去てっきょした場合ばあい、空き家あきやを解体かいたいしたあとの土地とちを売却ばいきゃくして、その収益しゅうえきで解体かいたい費ひを穴埋あなうめする方法ほうほうがありますが、買い手かいてがつかないケースがほとんどで、９きゅう割わり以上いじょうはその費用ひようは回収かいしゅうできず、公費こうひ負担ふたんとなっています。

昨年度さくねんどの都道とどう府県ふけん別べつ撤去てっきょ件数けんすう最多さいたは兵庫ひょうご県けんの６ろく件けん

昨年度さくねんど全国ぜんこくの自治体じちたいが「危険きけんな空き家あきや」を撤去てっきょしたケースは、25の道府県どうふけんで合あわせて67件けんにのぼりました。

その都道とどう府県ふけん別べつの内訳うちわけです。

▽６ろく件けん…兵庫ひょうご県けん。

▽５ご件けん…千葉ちば県けん。

▽４よん件けん…北海道ほっかいどう秋田あきた県けん島根しまね県けん福岡ふくおか県けん。

▽３さん件けん…茨城いばらき県けん山梨やまなし県けん三重みえ県けん石川いしかわ県けん滋賀しが県けん大阪おおさか府ふ愛媛えひめ県けん長崎ながさき県けん。

▽２に件けん…宮城みやぎ県けん山形やまがた県けん埼玉さいたま県けん新潟にいがた県けん岐阜ぎふ県けん。

▽１いち件けん…青森あおもり県けん岩手いわて県けん富山とやま県けん静岡しずおか県けん岡山おかやま県けん熊本くまもと県けん。

甲府こうふ市し「空き家あきや対策たいさく課か」設置せっち対策たいさく強化きょうか

空き家あきや率りつが全国ぜんこくで最もっとも高たかい山梨やまなし県けんの甲府こうふ市しは、おととしから「空き家あきや対策たいさく課か」を設置せっちして、専属せんぞくの担当たんとう職員しょくいん５ご人にんを配置はいちするなど対策たいさくを強化きょうかしています。

市しが独自どくじに行いった調査ちょうさでは、甲府こうふ市内しないには3000余あまりの空き家あきやがあり、このうち44件けんが倒壊とうかいなどのリスクがあるいわゆる「危険きけんな空き家あきや」だということです。

市しは空き家あきやの所有しょゆう者しゃに対にたいし、現場げんばの写真しゃしんとともに改善かいぜんを求もとめる書類しょるいを送おくっていますが、返事へんじが無ないケースや、経済けいざい的てきな理由りゆうなどから対応たいおうしてもらえないケースも多おおいということです。

このため、市しでは、担当たんとう者しゃが所有しょゆう者しゃのもとを訪問ほうもんして、撤去てっきょ費用ひようを補助ほじょする制度せいどを紹介しょうかいするなど、直接ちょくせつ、助言じょげんや指導しどうすることにも力ちからを入いれています。

時ときには県けん外がいまで出張しゅっちょうし、所有しょゆう者しゃに会あえそうな時間じかんをねらって１いち日にちに何なん度ども訪問ほうもんすることがあるということです。

甲府こうふ市し空き家あきや対策たいさく課かの田中たなか康弘やすひろ課長かちょうは「所有しょゆう者しゃから『市しにやってほしい』と言いわれたこともあるが、貴重きちょうな税金ぜいきんを使つかうことになるので、まずは自分じぶんで対応たいおうしてほしいと指導しどうしている。ただ、特とくに高齢こうれい者しゃは、家庭かていの事情じじょうや金銭きんせん的てきな負担ふたんから対応たいおうできない方ほうが多おおく難むずかしい問題もんだいだ」と話はなしていました。

専門せんもん家か「所有しょゆう者しゃによる解体かいたいを後押あとおしする仕組しくみが必要ひつよう」

危険きけんな空き家あきやを撤去てっきょするためにかかる費用ひようが急増きゅうぞうしていることについて、空き家あきや問題もんだいに詳くわしい東洋とうよう大学だいがくの野澤のざわ千絵ちえ教授きょうじゅは「荒廃こうはいした危険きけんな空き家あきやは、放置ほうちされれば、地域ちいきの人ひとの命いのちや財産ざいさんを奪うばいかねない状況じょうきょうになっていて、行政ぎょうせいが公費こうひで対応たいおうするのは致し方いたしかた無ない面めんがある。ただ、金額きんがくは思おもったより、非常ひじょうに高額こうがくだという印象いんしょうだ。自治体じちたいは、非常ひじょうに危険きけんな空き家あきやにいわば“モグラ叩はたき”的てきに対処たいしょしているのが現状げんじょうだが、危険きけんな空き家あきやの「予備よび軍ぐん」はたくさんあり、撤去てっきょにかかるコストは今後こんごも増加ぞうかして、自治体じちたいの財政ざいせいを圧迫あっぱくするおそれがある」と指摘してきしています。

また、住宅じゅうたくが建たっていれば、空き家あきやであっても固定こてい資産しさん税ぜいが減免げんめんされるため、「解体かいたいするほうが損そんをする」状態じょうたいであることも、積極せっきょく的てきな解体かいたいが進すすまない原因げんいんだとしています。

そのうえで対策たいさくについて野澤のざわ教授きょうじゅは空き家あきやの場合ばあいには、固定こてい資産しさん税ぜいの減免げんめんを解除かいじょすることや、建物たてものを解体かいたいした場合ばあいには、何なんらかの税制ぜいせい優遇ゆうぐうを行おこなうなど、所有しょゆう者しゃの解体かいたいを後押あとおしする対策たいさくが必要ひつようだと提案ていあんしています。

野澤のざわ教授きょうじゅは「空き家あきやの問題もんだいで、いちばん困こまっていないのは建物たてものの所有しょゆう者しゃなのが現状げんじょうだ。住宅じゅうたくは本来ほんらいは個人こじんの財産ざいさんで、行政ぎょうせいが対応たいおうする事態じたいは避さけるべきだ。空き家あきやを持もち続つづけることがデメリットになる仕組しくみとともに、新築しんちく時じの住宅じゅうたくローン減税げんぜいのように、所有しょゆう者しゃによる解体かいたいを後押あとおしするような仕組しくみが必要ひつような段階だんかいに来きているのではないか」と指摘してきしています。