JLPT N1 – Reading Exercise 6

#6

ある有名なインタビューアーが、「いろんな人に会わなくちゃならなくて、たいへんですね。いい人、好きな人だけじゃなくて、いやな人、きらいな人もいるでしょうに」と言われて、「いいえ、はじめから好きな人、きらいな人、ということはありません。はじめは虚心(注1)でその人に会うようにしています。最低限、その人に好意と関心をもつようにして」と言っていたのが印象的である。 私たちは、人に聞いたことや、会ったときの印象で、ある程度、相手の人がらを決めてしまいがちである。 その人の容貌や服装やからだの特徴や、ことばづかいや動作や姿勢、さらにまた、職業や年齢や出身、経験、社会的地位などといったものからでも、どんな人か、何らかの先入主(注2)を抱く。出会ったときの、自分側の条件や、その場面にもよるわけだが、そういうことを割り引いて、冷静に考える人はまれで、たいていは、自分のこれまでの体験から、あれはこういう人だ、というイメージをつくり上げる。過去の経験で似た人がいれば、その人の印象が重なってくる。意識的に払いのけようとしても、この第一印象は、強い影響をあとに残す。 (中略) 結婚のための見合いのような場合、内心強い劣等感を持っていて、きらわれるのではないかという恐れを抱いていると、相手に対する見方にも、バイアス(かたより)が生ずる。畏怖(注3)して、相手が実物以上によく見えたり、逆に、反動的に、なにかにつけて、わるく、低く見ようとしたりする。 人生、はじめての出会いは、すべて、見合いみたいなものだが、身がまえてコチコチになっていると、相手の姿が正確に見えない。特に利害がからむと、バイアスがかかりやすく、かたよった先入主を抱きがちである。ずるそう、おっかなそう、きつそう……など。それは、多分、自分側の気持ちを、相手のイメージに投影しているのである。 身がまえることなく、相手を受けいれることが、いかに難しいか。自己防衛的な身がまえは、相手に対して、ドアを閉じようとしている姿勢である。ある有名なインタビューアーが言ったように、自分の心のドアを開け、人に接しようとする心がけが必要である。パッと見た瞬間の印象にとらわれたり、こだわったりすると、人間関係は玄関先でギクシャクする(注4)。 (注1)虚心:先入観なく相手をありのままに受け入れる心 (注2)先入主:先入観 (注3)畏怖:おそれ (注4)ギクシャク:物の動き、人の言動、人間関係が円滑でないさま

Try It Out!
1
印象的であるとあるが、何が印象的だったのか。
1. いろいろな人に会うのは大変だ、と言ったこと
2. いやな人、きらいな人もいる、と言ったこと
3. 人の好ききらいはない、と言ったこと
4. だれにでも初めは虚心で会う、と言ったこと
2
身がまえてコチコチになっている」というのは、どういうことか。
1. 作り上げたイメージを払いのけようとしている様子
2. 相手がこわそうなので、びくびくしている様子
3. 相手に対して心を開けず、自分を守ろうとしている様子
4. 相手がもっている先入観をくずそうとしている様子
3
自分側の気持ちを、相手のイメージに投影している」例として適当なものはどれか。
1. 自分に自信かないと、相手が自分をばかにしているように感じる。
2. 自分がさびしいときに相手が楽しそうにしていると腹が立つ。
3. 自信過剰な人を見ると、心配になり、注意したくなる。
4. 相手が自信がなさそうだと、自分に自信がわいてくる。
4
この文章で筆者が最も言いたいことは何か。
1. 先入観と第一印象は人を判断する時に大きく影響する。
2. 相手に対する先入観なしに自分の心を開くことが大切だ。
3. 第一印象は、その人を判断するのに、全く役にたたないものだ。
4. 人間関係は、まず相手のイメージを作りあげることから始まる。