この中なかでは「18歳さいで宮家みやけに上あがってから既すでに80年ねん以上いじょうという長ながい歳月さいげつが過すぎ、この度たび100歳さいの節目ふしめを迎むかえることができました。現在げんざいは、孫まごや曾孫そうそんの成長せいちょうをとても楽たのしみとしております。これからも人々ひとびとの幸しあわせを祈念きねんしつつ、日々ひびを過すごしてまいりたいと存ぞんじます」などと記しるされています。

戦時せんじ中ちゅうは空襲くうしゅうによって住すまいが全焼ぜんしょうし、防空ぼうくうごうで生活せいかつするなど苦難くなんの時期じきを過すごし、戦後せんご、三笠みかさ宮みやさまが東京とうきょう大学だいがくの研究けんきゅう生せいとして西洋せいよう史しの研究けんきゅうを始はじめると、ノートを書き写かきうつしたり資料しりょうの整理せいりをしたりして、支ささえられたということです。

昭和しょうわ23年ねんには「母子ぼし愛育あいいく会かい」の総裁そうさいに就任しゅうにんし、平成へいせい22年ねんに退任たいにんするまで60年ねん余あまりにわたって母子ぼし保健ほけんの向上こうじょうに力ちからを尽つくしたほか、日本にっぽん赤十字せきじゅうじ社しゃの名誉めいよ副ふく総裁そうさいも務つとめられています。

また、三笠みかさ宮みやさまとともにヨーロッパや中東ちゅうとう諸国しょこくを訪たずね、国際こくさい親善しんぜんにも努つとめられました。

百合子ゆりこさまは、現在げんざいも公的こうてきな行事ぎょうじに臨のぞんでいて、ことし1月つきには、新年しんねん祝賀しゅくがの儀ぎや新年しんねん一般いっぱん参賀さんがにも出席しゅっせきし、元気げんきな姿すがたを見みせられました。

また、高円宮たかまどのみやさまの三さん女じょで、孫まごにあたる守谷もりや絢子あやこさんの子こどもなど8人にんのひ孫ひまごに恵めぐまれ、成長せいちょうを楽たのしみに過すごされているということです。

Q.最近さいきんの百合子ゆりこさまのご様子ようすは。

A.ご本ほんをお読よみになったり、雑誌ざっしをお読よみになったり、クロスワードパズルをされたり、ジグソーパズルをされたり、机つくえの上うえでお楽たのしみになれることを楽たのしまれたりですとか。

お花見はなみの、桜さくらのきれいな時期じきにはちょっとドライブで見みに行いかれたりとか。

野球やきゅうもお好すきでいらっしゃるので、ことしのWBCは遅おそくまでご覧ごらんになったというお話おはなしを伺うかがいました。

Q.去年きょねん、三笠みかさ宮みやさまの伝記でんきが出版しゅっぱんされました。

A.妃ひ殿下でんか（百合子ゆりこさま）のお申し出もうしで、数すう年ねん前まえ、殿下でんか（三笠みかさ宮みやさま）がお隠おかくれになられてから1年ねんちょっとたった時ときだったかと思おもいますけれども、殿下でんかの伝記でんきをまとめたいというお話おはなしになられて。

私わたしも歴史れきしの研究けんきゅうの道みちにいたということもございましたので「彬あきら子こに手伝てつだわせたい」ということをその時ときにお話おはなしをいただいて。

妃殿下ひでんかの強つよい思おもいというのは強つよく感かんじましたし、殿下でんかの足跡あしあとをきちんと形かたちにして残のこしたいという思おもいのお話おはなしを伺うかがっておりましたので、これは何なにとしても形かたちにしなければならないと思おもって、この数すう年間ねんかん、必死ひっしにまとめたような感かんじでございます。

A.オーラルストーリーですと、どうしても文書ぶんしょをきれいにして雑ざつ味みのない形かたちにまとめることも多おおいと思おもうのですけれども、孫まごの私わたしが伺うかがったこと、近きん衞まもるのおば（近きん衞まもるやす子やすこさん）も同席どうせきしてくださったこともありまして、三笠みかさ宮家みやけのふだんの会話かいわですとか雰囲気ふんいきがきちんと伝つたわったらいいなと。

それが皆様みなさま、読よんで下くださる方ほうにも伝つたわったらいいなという思おもいで、なるべくむだなところを省はぶかないようにしてまとめました。

妃殿下ひでんかはふだんから本当ほんとうに楽たのしそうにお話おはなしをしてくださいますので、聞きき取とりの中なかでも笑わらいがずいぶんとありましたし。

現代げんだいのわれわれの価値かち観かんで判断はんだんしてしまいますと、例たとえば、夜中やちゅうに殿下でんかが「これ明日あしたの朝あさまでに写うつしておいてくれ」とおっしゃって、ノートを妃殿下ひでんかがお写うつしになるということもすごく亭主ていしゅ関白かんぱくのように伝つたわってしまうかもしれないのですけれども、妃殿下ひでんかはそれを本当ほんとうにおよろこびとして、殿下でんかをお支ささえになるのはうれしいというお気持きもちでやっていらっしゃるので、そういったこともきちんと雰囲気ふんいきとして伝つたわるといいなというのを心こころがけて編集へんしゅうをいたしました。

Q.伝記でんきでは、百合子ゆりこさまが軍人ぐんじんであった三笠みかさ宮みやさまの戦争せんそう時じのエピソードを語かたられました。

A.妃ひ殿下でんかの口くちから直接ちょくせつ伺うかがったのが、6、7年ねん前まえでしょうか。

軽井沢かるいざわの三笠みかさ宮家みやけのご別邸べっていにお伺うかがいした時ときに、ちょうど終戦しゅうせん記念きねん日びの日ひで、妃殿下ひでんかが突然とつぜん「終戦しゅうせんの日ひはすごく暑あつくてね」とお話おはなしをされて。

「終戦しゅうせんの前日ぜんじつには、青年せいねん将校しょうこうの人ひとが来きて、戦争せんそうを続つづけたい側がわと、もうやめるべきだという殿下でんかと言い合いいあいになって、本当ほんとうにピストルが飛び交とびかうかもしれないと思おもうようなとても緊迫きんぱくした雰囲気ふんいきだったのよ」というお話おはなしを本当ほんとうにさらりとされました。

妃殿下ひでんかにとっては、この戦争せんそうというものが、日本にっぽんの歴史れきしの一部いちぶであり、ご自身じしんの歴史れきしの一部いちぶなんだということをその時ときに初はじめて実感じっかんしました。

その青年せいねん将校しょうこうは殿下でんかのご同期どうきのとても優秀ゆうしゅうな方ほうでいらっしゃって、意見いけんがあわなくて喧嘩けんか別わかれになるようなことでしたけれど、別れ際わかれぎわに殿下でんかのお付つき武官ぶかんに「きょう、御所ごしょにお上あがりにならないように」ということを言いい置おいて出でて行いかれて。

それは玉音ぎょくおん盤ばんを青年せいねん将校しょうこうたちが奪取だっしゅする計画けいかくがあったので、殿下でんかがお巻き込まきこまれにならないようにという心遣こころづかいで言いい置おいて行いかれた訳わけですけれど「どんなに意見いけんが違ちがったとしても『同期どうきの桜さくら』として宮みやさまのことをすごく大切たいせつに思おもっていらっしゃったのよね」というのを妃殿下ひでんかがその時ときにお話おはなしになられて。

すごく胸むねが熱あつくなりました。

「同期どうきの桜さくら」というのは、よく聞きく言葉ことばではありましたけれども、本当ほんとうに「同期どうきの桜さくら」の話はなしを聞きくことはなかなかございませんので、そういったお話おはなしを伺うかがえて、殿下でんかがご存命ぞんめいの時ときにはあまり戦争せんそうのお話おはなしは殿下でんかご自身じしん、そんなに積極せっきょく的てきになさりたいような感かんじがございませんでしたので、私わたし自身じしん、ほとんど直接ちょくせつ伺うかがったことがなかったので、今回こんかいも殿下でんかがお隠おかくれになってから妃殿下ひでんかからお話おはなしを伺うかがうことがあった時ときに、殿下でんかからもう少もうすこし色々いろいろお話おはなしを伺うかがっておきたかったなということはいまさらながら思おもいました。

Q.三笠みかさ宮みやさまと百合子ゆりこさまの関係かんけいは。

A.本当ほんとうにこの組み合くみあわせ以外いがいはあり得えなかったんじゃないかなということは改あらためて思おもうところでございます。

貞明ていめい皇后こうごうが妃殿下ひでんかをお選えらびになられた訳わけですけども、すごく先見せんけんの明めいがおありになったのだなということを思おもいますね。

妃殿下ひでんかはよく「殿下でんかがすごく先進せんしん的てきで、はきはきと色々いろいろなことをお決きめになって、前まえへ前まえへと進すすんでいかれる方ほうだったから、私わたしがのろのろとおそばにいたことで、ずいぶん宮みやさまのお仕事しごとであったり、なさりたいことを邪魔じゃましてしまっていたと思おもうのよ」とおっしゃることがあるのですが、「妃殿下ひでんかがのろのろされていた訳わけではなくて、殿下でんかがそう前まえへ前まえへといかれる方ほうだからこそ、妃殿下ひでんかがそうやって穏おだやかにゆっくりと殿下でんかをお支ささえになられたからこその三笠みかさ宮みや同妃どうひ両りょう殿下でんかでいらっしゃったのだろうなということと思おもいます」というお話おはなしを（妃殿下ひでんかに）強つよくするのです。

Q.皇室こうしつにおける三笠みかさ宮みやさま、百合子ゆりこさまの役割やくわりについて。

A.戦争せんそう中ちゅうに軍人ぐんじんとして色々いろいろなところに行いかれる中なかで、どうしてもみんなが直立ちょくりつ不動ふどうで頭あたまを下さげて「人間にんげんらしいふれあいは戦前せんぜんはなかった」と殿下でんかがおっしゃっていました。

レクリエーション協会きょうかいなどで、フォークダンスを全国ぜんこくで広ひろめるというご活動かつどうをされて、皇族こうぞくと国民こくみんが手てを取り合とりあって踊おどるということは、当時とうじの方々かたがたにとってはおそらく想像そうぞうを超こえたことであったと思おもいますが、両りょう殿下でんかが率先そっせんして、本当ほんとうに小ちいさな町まちの体育館たいいくかんですとか公民こうみん館かんとかにもお出おでかけになられて広ひろげられたということです。

そういった意味いみで、皇室こうしつと国民こくみんの距離きょりを縮ちぢめるというのをずっと三笠みかさ宮みや殿下でんかはなさってこられたというのは感かんじますし、それを妃殿下ひでんかはずっとおそばでお支ささえになってこられて。

当時とうじはどうしても、男性だんせいの方ほうがお仕事しごとに行いかれて女性じょせいは家庭かていを守まもるという世の中よのなかである中なかで、両りょう殿下でんかがおそろいでさまざまなところにお出おでましになって、さまざまなご経験けいけんをされてということで、女性じょせいの役割やくわりといいますか、妃殿下ひでんかとしてのお務つとめを果はたされるのは当時とうじは本当ほんとうに大変たいへんなことだったと思おもうんです。

それをしっかりとぶれずにやってこられたのは、今いま、振り返ふりかえってみると改あらためてすごいことだったのだなと思おもいます。

Q.百ひゃく合ごう子こさまへの思おもいは。

A.今いまもお元気げんきに穏おだやかにお過おすごしなのは、孫まごとしても、本当ほんとうにこの上うえなくうれしいことで。

今いまも（お住すまいの）ご本邸ほんていにお伺うかがいして、妃殿下ひでんかにお話おはなしを伺うかがったり、お食事しょくじをご一緒いっしょする時間じかんというのが本当ほんとうに私わたし自身じしん、とても幸しあわせで、たくさんのことを何気なにげない会話かいわの中なかから教おしえていただいておりますし、それが私わたしにとって、本当ほんとうに皇族こうぞくとしても、1人にんの人間にんげんとしても、妃殿下ひでんかが指針ししんのような存在そんざいですので、これからも、たくさんのお話おはなしをお伺うかがいさせていただきたいと思おもっています。