アメリカ西部ロサンゼルス周辺で続く山火事は今月7日の発生から14日で1週間となりました。
地元当局の発表によりますとこれまでに24人が死亡し、いまも8万8000人が避難の指示の対象になっています。
現在は5000棟以上の建物が被害を受けた海沿いの「パリセーズ」地区や、内陸で住宅が密集し、7000棟以上の建物が被害を受けた「イートン」地区など、3つの地区で消火活動が行われていますが、延焼が続いています。
こうした中、被災者の生活再建に向けた動きも進んでいて、ロサンゼルス市は、14日から「災害復興センター」を開設し、自宅などが被害を受けた人への救済措置の申請の支援や、社会保障に関する書類をなくした人への援助などにあたるとしています。
一方で、アメリカ国立気象局は、ロサンゼルス近郊では15日まで風が強まる予報で、「特に危険な状況」になるとしています。
強い風による大規模な延焼や停電などのリスクが高まっているとして、最高レベルの警戒を呼びかけています。
懸命の消火活動や捜索続く
山火事の現場では消防や警察などによる懸命の消火活動や捜索が続けられています。
このうちロサンゼルスの北東の近郊で起きた火災で最も被害を受けたアルタデナでは山のすそ野に広がる住宅街が広範囲にわたって焼けてしまっています。
ある地区では建ち並んでいた住宅のほとんどが全焼し、遠くの家の焼け残った煙突まで見通せるようになっていました。
現場では消防隊員が焼けた建物の地下などでくすぶっている炎の消火にあたったり、被害の調査をおこなったりしていました。
また、行方がわからなくなっている人もいることから、警察や消防などによる特別捜索チームも活動していて、集合住宅が焼けた現場ではさまざまな機関のおよそ20人が捜索のための犬も投入して焼け跡を調べていました。
ロサンゼルス郡消防局のポノ・バーンス報道官はNHKの取材に対し、「この山火事はふつうの森林火災とは異なります。通常、山火事は木が密集した、深い森のなかで起きます。しかし今回の火災は人口が密集した市街地に広がりました」と説明しました。
その上で「市街地では有害物質などの脅威や住民の貴重な財産があるほか頭上には電線もあります。一方で森林の部分には非常に急な斜面があります」として異なる地形に広がった火災の消火活動の難しさを指摘し、「この火災を封じ込めるためにあらゆる手立てを使って対応しているところです」と話していました。
支援の動き広がる
山火事の被害を受けて現地では、市民や企業などからの物資の寄付が多く集まっています。
ロサンゼルスの北東、パサデナにある駐車場は、寄付の受付と必要な物資の配布を行う拠点の一つとして使われています。
被災した地域では水道水が汚染されている可能性があることから大量のペットボトルの水のほか、キッチンペーパー、それにおむつなどの生活必需品が続々と届けられています。
支援物資を積んだ車が次々に到着する中、ボランティアの人たちがバケツリレー方式で物資を運んでいました。
この拠点では毎日およそ1000人のボランティアが登録し、物資の分配や町の清掃などにあたっているということです。
この拠点を取りしきる男性は「多くの家族が山火事の影響を受けていて、ボランティアたちは何らかの支えになりたいと考えています。こうした慈愛からの行為でコミュニティーのつながりが生まれています」と話していました。
自宅全焼の男性「すべてなくなってしまった」
ロサンゼルス北東部の山火事の被災地域で取材中、全焼した住宅の跡で涙を流しながらスマートフォンで被害の様子を撮影している男性がいました。
男性は大工のロバート・エドワーズさんで、火事のあと初めて警察の立ち会いのもと自宅の様子を見に来ていました。
取材班が話しかけるとエドワーズさんは「すべてなくなってしまいました。ここは私の家でした」と震えた声を絞り出すように応じました。
エドワーズさんは火事が起きた7日、家族5人で避難しました。
当時の状況について「危険を冒したくなかったのですぐに避難の指示に従いました。ひどい風でなすすべもありませんでした。通りに出て見ると火は遠い山の上で燃えていましたがあっというまにここまで押し寄せました。風が収まったら戻ってくるつもりでしたがこんなことになるなんて思いもしませんでした。風はとても、とても強く火の粉はそこらじゅうに飛んでいて、地面に落ちるとそこからまた火が上がりました」と話していました。
そして「1992年から住んでいます。家を建てたとき、新居の前で、妻や子どもとこの場所で写真を撮ったのを覚えています。こうなるなんて誰が想像できるでしょうか。しかしみんな無事に生きていることには感謝しています」と話していました。
そのうえで「きょう私はここに来なければなりませんでした。家のことばかり考え苦しかったからです。これから戻ってここで撮影した動画や写真を家族に見せなければなりません。焼けた跡を見た近所の人から『状況はよくない』と聞かされていましたが、自分の目で見れば気持ちが楽になると思ったのです。実際に見て私は叫び、泣きわめきましたが、少し気分が落ち着きました」と話していました。
専門家「深刻な山火事の発生 今後も予想される」
気候変動を研究する専門家は、地球温暖化が続くかぎり、大規模で深刻な山火事の発生が今後も予想されると指摘しています。
アメリカの研究機関「クライメート・セントラル」で科学部門の責任者を務めるクリスティーナ・ダールさんは、ロサンゼルス周辺で続く山火事について、「気候変動の影響で山火事の規模は大きく、年間を通じて長期間続くようになり、激しく燃えるようになっている。温室効果ガスの排出と地球温暖化、山火事の悪化には明確な関連性がある」と指摘しました。
具体的には「気温が上昇し、雨が降らない乾燥した状態が続くと植物がひどく乾燥する。植物が乾燥すればするほど燃えやすくなり、火花があればあっという間に燃え広がってしまうようになる」と説明しました。
その上で、「火災に強い住宅やコミュニティーをつくり、避難に必要な通信システムを改善するなど、火災に対処するためのあらゆる対応策が求められている。なぜなら、地球温暖化が続くかぎり南カリフォルニアのような場所では、より大規模で深刻な山火事が発生し続けることが予想されるからだ」と話していました。