また、信頼を回復するため当時の派閥幹部ら関係者のさらなる説明が必要だという指摘も出されました。
衆議院政治倫理審査会では、自民党の関係議員15人に対する審査が公開の形で開かれることになっていて、初日の17日は4人が出席し、五十音順に1人ずつ弁明と質疑が行われました。
稲田元防衛大臣 “不記載資金 口座と現金で保管 使っていない“
最初に出席した旧安倍派の稲田元防衛大臣は、冒頭、「政治に対する信頼を大きく損ねたことを申し訳なく思う。政治資金の管理が不十分であったことを深く反省する」と陳謝しました。
そして、196万円の収支報告書への不記載があったことについて、「派閥からの還付が不記載になっていることは去年12月に一連の問題が明らかになって知った」と述べました。
また、不記載になっていた資金は、口座と現金で保管され、使っていなかったと説明しました。
おととし4月に当時会長だった安倍元総理大臣が、還付をとりやめる方針を決めたものの、その後、再開されたことについて、「いつ誰がなぜ復活させたのか明らかにすべきで、派閥の最後の総会や、党の調査の中で指摘した。当時の関係者がしっかりと国民に説明していくことが自民党が信頼を取り戻す道だ」と述べ、当時の派閥幹部ら関係者のさらなる説明が必要だという認識を示しました。
このあと質疑が行われ、自民党の井出庸生氏は「お金を使用せず保管していたということだが、違法性の認識の有無を確認したい」と求めました。
稲田氏は「ノルマの達成に四苦八苦しているのが現実だった。還付を前提にパーティー券を販売できる状況ではなく、おととしまで還付の存在を知らず、違法だとは思ってもいなかった」と述べました。
立憲民主党の山岸一生氏は「ことし5月に審査会から弁明を求められた際には拒否したが、なぜ今回申し出たのか」とただしました。
稲田氏は「その時点では説明責任を尽くしているので、さらに説明する必要はないと考えたが、選挙を経て、支援者の様子など、まだまだ国民の信頼は回復しておらず、さらに説明することが信頼回復につながると思った」と述べました。
稲田朋美氏は、衆議院福井1区選出の当選7回で65歳。
弁護士で、2005年のいわゆる郵政選挙で、郵政民営化に反対した議員の対立候補として立候補し、初当選しました。
これまでに党の政務調査会長や防衛大臣などを歴任し、旧安倍派に所属していました。
派閥の政治資金パーティーをめぐる問題では、おととしまでの5年間に196万円の収支報告書への不記載があったと党に報告しています。
稲田氏は、党の処分は受けておらず、先の衆議院選挙では、党の公認を得ました。
ただ、比例代表との重複立候補が認められず、小選挙区で当選しました。
稲田氏はことし5月、衆議院政治倫理審査会から出席の意向があるか確認を受けた際、弁明の必要はないとしつつ、「質問に答えることを拒むものではない」と回答していました。
稲田氏に続いて、
▼10万円の不記載があった加藤竜祥氏
▼70万円の不記載があった小森卓郎氏
▼184万円の不記載があった佐々木紀氏の審査が行われました。
いずれも、政治不信を招いたことを陳謝したうえで、一連の問題が発覚するまで、不記載となっていることは知らなかったなどと答えました。
また、還付された資金について、加藤氏と小森氏は事務所で保管し、佐々木氏は事務所の備品や秘書の旅費など政治活動に充てていたと説明しました。
佐々木氏 “使途は政治活動に費消 脱税にあたらず“
さらに佐々木氏は、資金の不適切な取り扱いについて事務所の会計を任せていた秘書を務める弟から、ほかの事務所の先輩秘書に相談し従っていたという説明を受けたと答えました。
不記載だった資金は脱税にあたるのではないかと追及されたのに対し「政治資金は非課税で、使途は私の政治活動にすべて費消されており、脱税にはあたらない」と反論しました。
加藤氏 パーティー券販売めぐる派閥会合での話明かす
一方、加藤氏は、安倍元総理大臣が還付をとりやめるよう派閥幹部に指示する前、おととし2月か3月の派閥会合の中で、ノルマ以上にパーティー券を販売する必要はないという話があったことを明らかにしました。
加藤竜祥氏は、衆議院長崎2区選出の当選2回で44歳。
旧安倍派に所属していました。
安倍元総理大臣の秘書などを経て、2021年の衆議院選挙に父親の寛治氏の地盤を引き継いで立候補し、初当選しました。
派閥の政治資金パーティーをめぐる問題では、おととしまでの5年間に10万円の不記載があったと党に報告し、ことし1月に国土交通政務官を辞任しました。
加藤氏は、党の処分は受けておらず、先の衆議院選挙では、党の公認を得ました。
ただ、比例代表との重複立候補は認められず、小選挙区で当選しました。
小森卓郎氏は、衆議院石川1区選出の当選2回で54歳。
旧安倍派に所属していました。
財務省の出身で、石川県の総務部長や金融庁の課長などを務めたあと、2021年の衆議院選挙で初当選しました。
派閥の政治資金パーティーをめぐる問題では、おととしまでの5年間に70万円の不記載があったと党に報告し、ことし1月に総務政務官を辞任しました。
小森氏は、党の処分は受けておらず、先の衆議院選挙では、党の公認を得ました。
ただ、比例代表との重複立候補は認められず、小選挙区で当選しました。
佐々木紀氏は、衆議院石川2区選出の当選5回で50歳。
旧安倍派に所属していました。
会社役員などを経て、2012年の衆議院選挙で森元総理大臣の地盤を引き継いで立候補し、初当選しました。
これまでに国土交通政務官や党の青年局長を務めています。
派閥の政治資金パーティーをめぐる問題では、おととしまでの5年間に184万円の不記載があったと党に報告しています。
佐々木氏は、党の処分は受けておらず、先の衆議院選挙では、党の公認を得ました。
ただ、比例代表との重複立候補が認められず、小選挙区で当選しました。
18日は旧安倍派の有力議員の1人である元政務調査会長の萩生田光一氏ら7人が、19日は4人が出席する予定で、さらなる実態解明が進むのかが焦点です。
自民 森山幹事長 “真摯な答弁に努めることが重要“
自民党の森山幹事長は記者会見で「政治倫理審査会への出席は本人の申し出によるもので、それぞれの思いがあって出席されたのだろう。国民の信頼回復に向けて真摯な答弁に努め、充実した審議となることが最も重要だ」と述べました。
公明 斉藤代表 “国民の疑念を払拭してほしい“
公明党の斉藤代表は記者会見で「国民が疑問に思っている点について、自身が知っていることをしっかり話し、国民の疑念を払拭してもらいたい」と述べました。
今回のポイント
自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題は、不透明な資金の流れが始まった経緯などがなお不透明だとの指摘があり、さらなる実態解明が進むかが、今回も引き続き焦点となります。
旧安倍派では、議員側がノルマを上回ってパーティー券を販売した場合、派閥からキックバック=還付を受けたにもかかわらず、収支報告書に不記載となっていましたが、出席議員に対し、いつから誰の指示で始めたのかなど、事実関係や認識をただす質問が出されるものとみられます。
また、政治資金は通常、課税されませんが、野党側は、収支報告書に記載されない形で還付されたお金は「裏金」で雑所得にあたり、課税対象になる可能性があると指摘していて、資金の使途も論点となることが予想されます。
さらに旧安倍派では、おととし4月に当時会長だった安倍元総理大臣が、キックバックをとりやめる方針を決めたものの、安倍氏が亡くなったあと、おととし8月上旬に派閥幹部が集まり、還付の扱いを協議したことが明らかになっています。
これまでの審査会で、旧安倍派の幹部は還付が続いた背景として、「ノルマ以上に販売した議員から『継続してほしい』という要望があった」としていて、今回、出席する議員側が説明を求められる場面もありそうです。
衆議院ではこれまで13回開かれる
政治倫理審査会は、衆議院ではこれまでに13回開かれています。
▽初めて開かれたのは1996年9月で、当時自民党の幹事長だった加藤紘一氏が鉄骨加工メーカーからのみずからに対する献金疑惑について弁明を行いました。
▽1998年6月には自民党の山崎拓氏
▽2001年2月には自民党の額賀福志郎氏
▽2002年11月には自民党の橋本龍太郎氏などが
政治とカネをめぐる問題など、自身に関する疑惑について弁明を行うなどしました。
一方、審査会は開催しても、議員が弁明しなかったケースもあります。
▽2009年7月には、自民党と公明党の申し立てで、当時民主党の代表だった鳩山由紀夫氏の政治献金問題をめぐる審査のために開かれましたが、民主党は抗議して欠席し、鳩山氏も出席しませんでした。
ことしは、自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題で、複数回、審査会が開催される、異例の状況となりました。
▽2月29日は、当時の岸田総理大臣と旧二階派で事務総長を務めた武田良太氏
▽翌3月1日は、いずれも旧安倍派で事務総長を務めた西村康稔氏、松野博一氏、塩谷立氏、高木毅氏がそれぞれ出席しました。
▽3月18日には、同じく旧安倍派の事務総長経験者の下村博文氏が弁明を行いました。
政治倫理審査会で、当事者が出席して弁明、質疑に応じるのは、この下村氏のとき以来となります。
審査会は、原則、非公開とされていますが、実際に非公開になったのは加藤氏のときの1回だけで、そのほかは議員や報道関係者の傍聴が認められたり、全面公開で行われたりしてきました。