金融緩和修正迫られる?続く日銀と市場の神経戦【経済コラム】 - Easy News

来年らいねん4月つきに任期にんきを迎むかえる日銀にちぎんの黒田くろだ総裁そうさい。任期にんき中ちゅうの物価ぶっか目標もくひょう達成たっせいは難むずかしいとして、ねばり強ねばりづよく金融きんゆう緩和かんわを続つづける姿勢しせいを繰り返くりかえし示しめしています。市場しじょう関係かんけい者しゃの間までも、金融きんゆう緩和かんわは長期ちょうき化かするという見方みかたが大勢たいせいですが、黒田くろだ総裁そうさいの発言はつげんの変化へんかにも注目ちゅうもくが集あつまっています。市場しじょうはその変化へんかから何なにを読み解よみとこうとしているのか取材しゅざいしました。（経済けいざい部ぶ記者きしゃ西園にしぞの興起こうき）

発言はつげんの“変化へんか”に市場しじょうが反応はんのう

11月つき2日にちの衆議院しゅうぎいん財務ざいむ金融きんゆう委員いいん会かい。

急速きゅうそくな円えん安やすを是正ぜせいするためにいまの金融きんゆう緩和かんわの枠組わくぐみを見直みなおすべきではないかという質問しつもんに対にたいし、黒田くろだ総裁そうさいは次つぎのように答こたえました。

「将来しょうらい2％の物価ぶっか安定あんてい目標もくひょうの実現じつげんが見通みとおせるような状況じょうきょうになったときには、イールド・カーブ・コントロール（いまの金融きんゆう政策せいさくの枠組わくぐみである長短ちょうたん金利きんり操作そうさ）を柔軟じゅうなん化かすることは1つのオプション（選択肢せんたくし）としてありうる」

この発言はつげんを受うけて、東京とうきょう外国がいこく為替かわせ市場しじょうでは一部いちぶの投資とうし家かの間まで政策せいさく修正しゅうせいの思惑おもわくが広ひろがってドルを売うって円えんを買い戻かいもどす動うごきが強つよまり、円えん相場そうばは、1ドル=147円えん台だい前半ぜんはんまで値上ねあがりしました。

ただ、この日ひの委員いいん会かいの答弁とうべんで、黒田くろだ総裁そうさいは、「現在げんざいの経済けいざい・物価ぶっか情勢じょうせいを踏ふまえると、金融きんゆう緩和かんわを継続けいぞくすることで我が国わがくにの経済けいざいをしっかりと支ささえていくことが適当てきとうだと考かんがえている。低位ていいで安定あんていしている長期ちょうき金利きんりや短期たんき金利きんりを引き上ひきあげていくことは適切てきせつではない」とも述のべています。

いまの金融きんゆう緩和かんわの枠組わくぐみを維持いじするというこれまでの考え方かんがえかたを強調きょうちょうした形かたちですが、市場しじょうが反応はんのうしたのは、「イールド・カーブ・コントロールの柔軟じゅうなん化か」というひと言ひとこと。

これまでなかった発言はつげんの“変化へんか”に該当がいとうする部分ぶぶんでした。

それでは国内こくないの市場しじょう関係かんけい者しゃはどう受うけとめたのか。

10人にんに聞きいてみましたが、全員ぜんいんが黒田くろだ総裁そうさいの任期にんき中ちゅうに金融きんゆう政策せいさくの枠組わくぐみを変かえる可能かのう性せいはないだろうと答こたえました。

2日にちの黒田くろだ総裁そうさいの発言はつげんは、「イールド・カーブ・コントロールの柔軟じゅうなん化か」について、「2％の物価ぶっか安定あんてい目標もくひょうの実現じつげんが見通みとおせるような状況じょうきょうになったとき」のことであって、それも「1つのオプション（選択肢せんたくし）」であるとしており、柔軟じゅうなん化かまでのハードルがなお高たかいことを示しめしています。

「黒田くろだ総裁そうさいは当然とうぜんのことを言いったまでで事実じじつ上じょう、変かえないと言いっているようなものだ」と指摘してきする市場しじょう関係かんけい者しゃもいました。

しかしこの発言はつげんが市場しじょうを動うごかしているのも事実じじつです。

それはなぜなのか。

海外かいがいの投資とうし家かの認識にんしきは異ことなる？

その理由りゆうとして、国内こくないの市場しじょう関係かんけい者しゃと海外かいがいの投資とうし家かとの間まに認識にんしきのギャップがあることをあげる人ひとがいます。

大和やまと証券しょうけんの岩下いわした真理まりマーケットエコノミストは、次つぎのように話はなしています。

「海外かいがいの投資とうし家かと話はなしていると、日銀にちぎんが金融きんゆう政策せいさくを変かえると思おもっている人ひとが意外いがいに多おおい。当面とうめん、政策せいさくは変かわらないといくら説明せつめいしても納得なっとくしてくれない。まるで価値かち観かんが違ちがう世界せかいの人ひとと話はなしているようだ」

また、あるメガバンクの幹部かんぶも、「海外かいがいに行いくと、黒田くろだ総裁そうさいはいつ政策せいさくを変かえるのかとよく聞きかれる。海外かいがいの人ひとたちの受け止うけとめは日本にっぽんとは異ことなるのかもしれない」と話はなしていました。

13年ねんぶりの6週しゅう連続れんぞく売うり越ごし

海外かいがいの投資とうし家かのこうした見方みかたは、日本にっぽん国債こくさいの取り引とりひきにも反映はんえいされています。

財務省ざいむしょうが11月つき4日にちに発表はっぴょうした対外たいがい・対内たいない証券しょうけん投資とうしによると、海外かいがい勢ぜいは10月つき29日にちまでに日本にっぽんの中なか長期ちょうき債さいを6週しゅう連続れんぞくで売うり越こしています。

売うり越ごしが6週しゅう以上いじょう続つづくのは2009年ねん以来いらい13年ねんぶりです。

日銀にちぎんが政策せいさくの修正しゅうせいに迫せまられるのではないかという見方みかたが海外かいがいの投資とうし家かを中心ちゅうしんにじわりと広ひろがっていることが背景はいけいにあります。

日銀にちぎんが政策せいさくを修正しゅうせいすると長期ちょうき金利きんりが上昇じょうしょうし、国債こくさい価格かかくは下落げらくするだろう。

それを見越みこして日本にっぽん国債こくさいを売うっておく。

このように考かんがえる海外かいがいの投資とうし家かが増ふえていることは間違まちがいないようです。

それでは海外かいがいの投資とうし家かはなぜこうした考え方かんがえかたをとるのか。

市場しじょう関係かんけい者しゃの答こたえをまとめると、そこには2つの理由りゆうがあるようです。

1つは、円えん相場そうばが1ドル＝151円えん台だいと32年ねんぶりの円えん安やす水準すいじゅんを更新こうしんし、消費しょうひ者しゃ物価ぶっか指数しすうの上昇じょうしょう率りつ（生鮮せいせん食品しょくひんを除のぞく）も31年ねんぶりの水準すいじゅんとなるなど、金融きんゆう政策せいさくをとりまく環境かんきょうが大おおきく変かわる中なかで、日銀にちぎんがいまの金融きんゆう政策せいさくの枠組わくぐみを維持いじできなくなくなるという見方みかたが出でていることです。