この中で網谷さんは、22歳のときに両親に自分が同性愛者であることを打ち明けたことについて、「それまで異性が好きだと装いうそをついて生きてきたので、自由に生きていくためへのステップだった」と話しました。
これに対して、父親は「本人が苦しんでいたことに気付いていたので、言ってくれてよかった」と当時を振り返りました。
また、母親も「家族が壊れるわけではないので1回話して終わりではなく、何度も伝えていくことが重要だと思う」と話しました。
網谷さんは「こうしたイベントを通じて、大切な人に自分のことを伝える意味を考えてほしいし、カミングアウトをされる側にも心の準備のためのきっかけになればいいと思います」と話していました。
同性愛者の男性は
イベントを主催したNPOの代表の網谷勇気さん(38)は、自分が同性愛者だということを周囲に隠さずに生活しています。
異性を好きになることに違和感を感じるようになったのは中学生の頃からでした。しかし、それを隠して友達にうそをついていることに苦しみや孤独を感じ、「死にたい」と思うこともあったということです。
高校2年になって幼なじみの親友の男性にうそをつき続けたくないと考え、初めて自分が同性愛者だと打ち明けました。
網谷さんが書いたノートには「僕は君らと違うんだよ。僕は君らと気持ちを分かちあえないよ。気持ち悪いだろ。みんなと同じがいいよ」などと当時の苦しい胸のうちが記されています。
しかし、親友に打ち明けたことによって苦しみが薄れただけでなく、より深い信頼関係を築けるようになり、22歳の時には両親にも伝えました。
網谷さんは本当の自分を伝えることで新たな関係を築ければ、自分らしく生きていけると考え、2年前からは、周囲に打ち明ける「カミングアウト」を後押しするNPOの代表として活動をしています。
網谷さんは「一人に言っただけで恐怖心が減って、死ぬかカミングアウトするかという究極の選択はなくなりました。カミングアウトには『あなたが大切だから聞いてほしい』という気持ちが込められているので、そのメッセージを受け止める人たちが多くいると安心して生きていける人が増えると思います」と話しています。