また、安倍総理大臣は、北方四島での共同経済活動について、「未来志向の発想が必要だ。新たなアプローチに基づき、今回、四島で共同経済活動を行うための特別な制度について、交渉を開始することで合意した」と述べました。そして、安倍総理大臣は、「この共同経済活動は、日ロ両国の平和条約に関する立場を害さないという共通認識のもとに進められるもので、日ロ両国にのみ創設されるものだ。平和条約締結に向けた重要な一歩であり、この認識でもウラジーミルと私は完全に一致した」と述べました。
さらに、安倍総理大臣は、「日本の北方領土についての原則的な立場は全く変わらない。しかし、過去にばかりとらわれるのではなく、北方四島の未来像を描き、その中から解決策を見いだしていく『新しいアプローチ』こそが最終的な結果に続く道であると確信している」と述べました。
安倍総理大臣は、北方領土問題を含む平和条約交渉について、「戦後71年を経てもなお、日本とロシアの間には、平和条約がないこの異常な状態に、私たちの世代で、終止符を打たなければならない。その強い決意を私とウラジーミルは確認し、そのことを声明の中に明記した」と述べました。
そのうえで、安倍総理大臣は、「領土問題について、私はこれまでの日本の立場の正しさを確信している。ウラジーミルも、ロシアの立場の正しさを確信しているにちがいない。しかし、互いにそれぞれの正義を何度主張しあっても、このままではこの問題を解決することはできない」と述べました。
そして、「次の世代の若者たちに、日本とロシアの新たな時代を切り開くために努力を積み重ねなければならない。日本人とロシア人が共存し、互いにウィンウィンの関係を築くことができる北方四島の未来像を描き、その中から解決策を探し出すという発想が必要だ」と強調しました。
元島民は
択捉島の元島民で、北海道根室市の鈴木咲子さん(78)は、自宅のテレビで共同記者会見を見守りました。
鈴木さんは、「難しい問題と思っていましたが領土問題で前進がなかったことには少しがっかりしています。しかし、元島民が四島に行きやすくなることはうれしいし、前進だと思います。日ロ関係は少し動き始めたように感じるので、あとは立ち止まらないで前に進んでほしい。希望は捨てていません」と話しました。
歯舞群島の志発島出身で北海道根室市の木村芳勝さん(82)は、自宅のテレビで共同記者会見を見守りました。
木村さんは、「領土の返還についての確かな言葉が1つも出てこなかったことが残念です。自分たちに残された時間は長くはないので、生きているうちに島の返還をなんとか進めてほしいです」と話していました。
北方領土の元島民などでつくる千島歯舞諸島居住者連盟の脇紀美夫理事長は、安倍総理大臣とロシアのプーチン大統領の共同記者会見を受けて午後4時半すぎから北海道根室市内で記者会見し、「このたびの日ロ首脳会談において北方領土問題の解決に向けた何らかの進展があるものと期待していましたが、先ほどの安倍総理大臣の発表でも、領土問題の今後の具体的なスケジュールのようなものが示されず、残念です」と述べました。
そのうえで「四島での共同経済活動を契機に、これまで停滞していた領土問題を解決に導こうとしている意欲を表明したものと受け止めています。政府においては、今後、さらに粘り強く交渉を重ね、1日も早く四島の返還が実現することを期待しています」と話しました。