文部科学省の
組織的な
天下りの
問題。
今回の
調査で、
文部科学省の
人事課が
OBの
嶋貫氏を
仲介役とした
組織的な
天下りを
継続的に
行うためのメモが
複数、
残されていたことが
明らかになりました。その
一つが
天下りをあっせんする
際の
手続きなどをまとめたメモの
存在です。このメモは
歴代の
人事課職員が
引き継いでいました。
平成22年7月のメモには、
嶋貫氏のことを「
某氏」と
匿名にしたうえで、「
某氏は、ケースに
応じて
間に
人を
介したりしながら
再就職先や
職員と
接触し
話をまとめる」とその
役割が
記されています。
そのうえで、人事課と嶋貫氏が相談して再就職先を確定させるといった手続きが記されています。
また、平成27年3月に作成された別のメモには、天下りを取り締まる政府の「再就職等監視委員会」の目をどのようにかいくぐるかが指南されています。
そこには就職先を紹介したのは誰かと尋ねられた場合、嶋貫氏でない別の人物からだと虚偽の内容を回答するよう求めているほか、在職中に行った面接が退職後に行われたかのように装う必要があることなどが記されています。
天下り先 大学事務職が7割
天下りの規制が強化された平成21年以降、大学に再就職した文部科学省の元職員120人について調べたところ、85人が学長や事務局長など大学の運営に携わる立場でした。内訳は、学長や副学長に就任していたのが8人、大学の理事や顧問、事務局長などが77人でした。これに対して、教授などの研究職は35人となっています。
違法な天下りの背景について、文部科学省OBを受け入れている大学の関係者が取材に応じました。この関係者は「東京一極集中で若者がどんどん出ていく中、私立大学の経営は非常に厳しくなっていて、生き残りが最大課題だ。こうした中、文部科学省のOBは補助金などの申請もこう書けば受かる率が高くなることもわかっている」とOBを受け入れた理由を述べました。
さらに、別の効果としては「地方の大学にとっては文部科学省のOBがしかるべきポストにくれば社会的な信用度につながる。県庁にあいさつに行ってもみんな一目置くのでありがたい」と語りました。
一方で、「私立大学は本来アイデンティティーを大切にしなければならない。いくら経営が厳しくても文部科学省にすり寄ってばかりではだめかもしれない」と、文部科学省との距離感の必要性については認めていました。
「天下りは文部省と大学の共犯関係」
文部科学省と大学の関係について、教育社会学が専門で大学運営などに詳しい関西大学の竹内洋東京センター長は「文部科学省が進めてきた『大学改革』で大学は補助金や競争的資金を獲得するため、文部科学省がどう考えているかどうかに異常に敏感になり、意向をそんたくするようになった。OBを受け入れれば得するだろうとか、少なくとも不利益にならないだろうといった文部科学省と大学の『構造的な共犯関係』のようなものができている」と指摘しました。
そのうえで、「本来研究や教育の方向性は大学自身が考えて決めていくべきなのに、その力が弱くなっている。お上に頼りすぎるような関係は大学の自立性の観点からいい関係とは言えない。天下り問題がどれほど世間と感覚がずれているかを認識し、文部科学省と大学はそれぞれの在り方について改めて考えるきっかけにすべきではないか」と話しています。