マレーシアの警察は22日、4人がすでに北朝鮮に帰国したとして、身柄の引き渡しを求めるとともに、新たに北朝鮮大使館の2等書記官と北朝鮮の航空会社の職員が、何らかの事情を知っているものと見て、大使館に書面で事情聴取を要請したほか、別の北朝鮮国籍の男性からも事情を聴きたいとしています。
警察は、すでに出国した北朝鮮国籍の4人の男への捜査が難しい中、国内にいる関係者への事情聴取を捜査の突破口にしたい考えで、22日、記者会見したハリド長官は北朝鮮側が応じない場合には令状を取ると述べ、対応によっては強制的な手段も辞さない考えを示しました。
ただ、北朝鮮大使館は22日に発表した声明で、捜査はでっち上げだとして、拘束されている3人の釈放を求めるなど、非難をエスカレートさせているほか、外交官や大使館への捜査は国際条約で制限されていて、難航が予想されます。
拘束された女 当日の予行演習か
実行犯として拘束されたインドネシア人とベトナム人の2人の女は、観光客も集まるクアラルンプールの中心部で、当日の動きの予行演習とも取れる行動をとっていたことがわかりました。これはマレーシア警察が22日、明らかにしたものです。
それによりますと、2人は事件に先立って、クアラルンプール中心部にある町のシンボルとなっているツインタワー周辺の公園や、高級ブランドの店が集まるショッピングモールで、当日の動きの予行演習とも取れる行動を複数回にわたって行っていたということです。
いずれの場所も外国人観光客などに人気の場所で、人目の多い場所で予行演習を繰り返すことで、ためらわずに素早く行動できるよう訓練を受けていたものと考えられ、警察は計画的で周到な犯行だったとの見方を強めています。
ショッピングモールの周辺にいたマレーシア人の男性は「よく利用するショッピングモールなので、ここで実行犯が予行演習をしていたとは怖いです」と話していました。
また、別の男性は「男性ではなく、女性がこのような事件を起こすなんて恐ろしいことです。セキュリティーをもっと強化すべきです」と話し、治安対策の強化を求めていました。
「安全には注意払っていた」証言も
キム・ジョンナム氏はマレーシア滞在中、ボディーガードとともに行動したり、人目につきにくい場所で食事をしたりするなど、身辺の安全に注意を払っていたことが、ジョンナム氏が通っていたレストランの関係者の話でわかりました。
キム・ジョンナム氏は、ここ数年、首都クアラルンプールの飲食店などでたびたび目撃されています。市内中心部にある韓国料理店のオーナーによりますと、ジョンナム氏は2012年ごろから6回ほど、この店を訪れ、混雑する昼の時間帯を避けて、いつも午後2時台から3時台に来て、隅の席に座っていたということです。
また、店に来たときは、2人の女性のボディーガードを店の外に立たせ、食事をする時も帽子を深くかぶって、常に周囲をキョロキョロと見るなど、身辺の安全に注意を払っている様子だったということです。
さらにジョンナム氏の後見人だった、チャン・ソンテク氏が粛清されたあと、2014年に来店したときには表情が暗かったということで、オーナーは店を出るジョンナム氏に韓国への亡命を持ちかけましたが、ジョンナム氏は何も答えず、このあと、この店を訪れることはなかったということです。
オーナーは「うちの店が入っているビルは、比較的セキュリティーがしっかりしているから、選んでくれたのだと思う。よく通ってくれたお客さんが、このようなかたちで亡くなるのは、とても残念だ」と話していました。