南西諸島の
防衛を
強化するため、
上陸作戦を
専門とする
新たな
部隊が
1年後に
発足するのを
前に、
部隊の
中核となる
陸上自衛隊の
隊員たちが
アメリカ西海岸で
日米共同訓練を
行いました。
東シナ海などで
中国の
海洋進出が
強まる
中、
不測の
事態に
備える
一方で、
現場の
緊張を
高めないための
取り組みを、どう
進めていくかが
課題になっています。
日米共同の
上陸訓練は
アメリカ・
カリフォルニア州の
アメリカ海兵隊の
演習場で
行われ、
自衛隊からは
長崎県佐世保市の
西部方面普通科連隊の
隊員など、およそ
350人が
参加しました。
隊員たちは、来年度末に発足する予定の上陸作戦を専門とする「水陸機動団」の中核となるメンバーで、今回の訓練は発足に向けた最終的な仕上げと位置づけられました。
訓練は離島が侵攻されたため、日米が共同で海から上陸し奪回するという想定で行われ、主力の部隊が5キロほど沖合いの艦艇から、水陸両用車のAAV7を使って、砂浜に次々に上陸しました。自衛隊の隊員がAAV7を訓練で操縦するのは今回が初めてで、同乗したアメリカ軍の兵士と声をかけ合いながら、海上から陸上での操縦に切り替える際のポイントなどを確認していました。
このあと日米の部隊は、それぞれ分かれて別の目標地点に向かい、このうち100人ほどの自衛隊の部隊は、小銃や機関銃を持って茂みに身を隠しながら少しずつ前に進んでいきました。そして、目標の市街地に到着すると、数人ずつのグループに分かれ、小銃などで応戦しながら建物を1つずつ回って制圧していきました。
また、今回は、主力部隊のほかにも偵察や通信、施設整備など水陸機動団に編成される予定のすべての部隊が参加し、作戦を後方や側面で支援するための動きを確認しました。
このうち、通信部隊は、最前線の偵察部隊が主力部隊に情報を送れるよう、数日前に潜入し、小高い丘にアンテナを立てて3人1組で警戒を続けたということです。
水陸機動団は南西諸島の防衛態勢を強化する一環で新設されるもので、離島が侵攻された場合の奪回を専門とする初めての部隊となります。
訓練の指導に当たった西部方面総監部の幕僚副長、戒田重雄陸将補は「水陸機動団の発足に向け、まだ課題も多いが、残された時間を最大限活用して準備に努めたい」と話していました。
新たに発足する水陸機動団とは
陸上自衛隊の水陸機動団は海洋進出を強める中国の動きを踏まえて、平成25年に閣議決定された防衛力整備の指針となる「防衛計画の大綱」と、今後5年間の「中期防=中期防衛力整備計画」で新設することが盛り込まれました。
離島が侵攻された場合に速やかに上陸し、奪回することを専門とする国内では初めての部隊で、1年後の平成29年度末に長崎県佐世保市の陸上自衛隊相浦駐屯地などに整備され、将来的には3000人規模になる予定です。
部隊には上陸作戦に対応するため、アメリカ海兵隊が使っている水陸両用車のAAV7が今後3年以内に52両、導入されることになっています。
この水陸両用車は全長およそ8メートル、重さはおよそ20トンで、20人以上を乗せて船のように浅瀬を進み、そのまま上陸することができ、アメリカ軍は湾岸戦争やイラク戦争などで使用しています。
海洋進出の動き強める中国
中国は持続的な発展を実現するため、経済と並んで、国防を重要課題と位置づけていて、東シナ海などで海洋進出の動きを強めています。
去年6月には沖縄県の尖閣諸島の沖合で、中国海軍のフリゲート艦が日本の領海のすぐ外側にある接続水域を航行したのが初めて確認されたほか、去年12月には空母が沖縄本島と宮古島の間を通過し、東シナ海から太平洋に出たのが初めて確認されました。
中国は南西諸島から台湾、フィリピンにかけてのラインを「第1列島線」と呼んで国防上の重要な境界線としていて、空母は、このあと台湾の周囲を1周するかたちで航行しました。
また、東シナ海や周辺の上空でも中国の軍用機の行動が活発になっています。自衛隊機のスクランブル=緊急発進は今年度は先月までの10か月間で1000回を超えて、冷戦時代の年間の数を上回っていて、中国機への対応が特に多くなっています。
こうした中、日本と中国の両政府は海上や空での偶発的な衝突を避けるための「連絡メカニズム」の運用に向けて協議を続け、これまでに緊急時に電話で連絡を取り合うホットラインの設置などが決まっていますが、運用開始のめどはまだ立っていません。