先月は、不正が起きないよう新たな運用指針を打ち出す地方議会が相次ぎました。果たして有効に機能するのか。地元で取材している記者の視点を含めて、先月1か月の主なニュースをまとめました。(※日付は放送日)。(16日富山)
政務活動費の不正が相次いだ富山市議会は、再発防止に向けて新たな運用指針をまとめました。
◎政務活動費の「前払い」がチェックの甘さにつながったとして、議員が支出した後に公認会計士などで作る第三者機関が内容が適切かどうか審査したうえで議員が金を受け取る「後払い」の方法に改めます。
◎懇親会で提供された「酒の代金」、市政報告会の「茶菓子代」、に使うことを禁止し、視察に使う車の「ガソリン代」、「海外視察の旅費」についても、原則、禁止します。
不正相次いだ富山市議会どう見直した
(16日富山)
政務活動費の不正が相次いだ富山市議会は、再発防止に向けて新たな運用指針をまとめました。
◎政務活動費の「前払い」がチェックの甘さにつながったとして、議員が支出した後に公認会計士などで作る第三者機関が内容が適切かどうか審査したうえで議員が金を受け取る「後払い」の方法に改めます。
◎懇親会で提供された「酒の代金」、市政報告会の「茶菓子代」、に使うことを禁止し、視察に使う車の「ガソリン代」、「海外視察の旅費」についても、原則、禁止します。
この運用指針は4月から導入される予定で、検討会座長の村上和久議員は「全国一、厳しい運用指針になり、今後、不正は起きないと思う」と話していました。
記者の目「これは“最低限”のこと」
「全国一厳しい」という新たな運用指針、地元で取材にあたる富山放送局の玉本重陽記者はどう見るのでしょうか。
『例えば、これまでは議員が視察を行った場合、費用の領収書を会派に提出して、政務活動費を受け取っていました。しかし、会派はいわば身内で、実質的な審査がないまま、政務活動費が「前払い」されていました。このため、新たな指針では、第三者機関という会派以外の外部の目も入れて二重のチェックを義務づけることにしたのです。さらに視察が終わった後にも領収書を点検し、問題がないか審査が行われます。2回の審査を取り入れたことで、チェック機能は確かに厳しくなったと言えます』
『もう一点重要なのは、あいまいだった使いみちのルールを明確にしたことです。懇親会で出された酒代に政務活動費を充てることがあったのは、明確に禁止されていなかったことが原因ですし、市政報告会での茶菓子代も「1人当たり500円分は許される」という不文律がまかり通っていたために、相次いでいました。このため、今回は明確に禁止としました。車のガソリン代も、視察以外の目的に使っていないか、証明するのが困難なため認めないことにしました』
『検討会の座長は「これで不正は起きない」としていますが、ここまで落ちた信頼を回復できるかどうかは、これからにかかっています。「使いみちのルールの明確化」と「チェックの強化」の両輪をきちんと機能させることを最低限のことだと考えて、取り組むことが重要です』
隣の石川県では
(16日金沢)
石川県では、県議会の「改革推進会議」が、政務活動費の運用マニュアルの見直し案をまとめました。
◎事務所のスタッフとして「民法上の親族」を雇用した場合、政務活動費から人件費を支払うことを禁止。
◎政務活動を行う事務所について、議員本人が役員を務める会社などが所有する物件を利用する場合、政務活動費から賃料を支払うことを禁止。
◎北陸3県で宿泊を伴う視察を行う場合、報告書の提出を義務づけ、家族が同行する場合は、必要性を文書で示す。
改革推進会議の会長を務める下沢佳充議員は「多くの県民が納得する内容になっていると思う。今後も新たな問題点が明らかになった場合は、随時、見直しを検討したい」と話しています。
一方、金沢市議会の「改革会議」は収支報告書はインターネットで公開するものの領収書は市役所での閲覧にとどめるなどとした委員長報告案を了承しました。領収書については「個人情報の保護の点で懸念する意見が多い」としています。
安達前委員長は「インターネットでの領収書の公開については、議員からそんなことをしなくてもこれからしっかりやるぞという意気込みを感じたので見送った」と話しています。
このほか、視察に議員以外の者が同行する場合は、報告書に同行の事実と理由を明記するとしています。市政報告会での「茶菓子代」は1人500円まで認めるとしていて、全面的に禁止とした富山市議会の対応とは違うものになりました。
記者の目「透明性確保にはもっと踏み込んで」
地元で取材にあたる金沢放送局の千田周平記者は、どう見るのでしょうか。
『まず、石川県議会を見ますと、従来は生計が別であれば、事務所のスタッフとして親族を雇った場合、政務活動費から支払うことができましたが、見直し案では血縁のある6親等以内の親戚や家族などに対しては支払いを禁止しています。政務活動を行う事務所の賃料については、今後は、議員本人が役員を勤める会社や過半数以上の株主となっている会社が所有する物件についても禁止されます。新たな運用マニュアルは、来年度に交付される政務活動費から適用されることになり、効果が注目されます』
『一方、透明性を確保するためには「もっと踏み込んだ内容にしてほしかった」というのが率直な感想です。確かに石川県議会も金沢市議会も、政務活動費の収支報告書についてはインターネットで公開することになりましたが、領収書については、県議会では図書室での閲覧、金沢市議会では市役所の市政情報コーナーでの閲覧にとどまりました。一定の進展があったとはいえますが、去年、政務活動費の不適切な使用があれだけ問題視されたのに、透明度を大幅に高めるインターネットでの領収書の公開に踏み切ることにしたのは、石川県内では野々市市だけという状態です』
『全国では、例えば大阪府議会や兵庫、徳島、高知の県議会がすでに領収書をインターネットで公開しているほか、ほかの自治体でも今後、公開することを決めるケースが相次いでいます。市民の税金から支出される政務活動費の不適切な使用を防ぐためにも、透明性をさらに高める対策を行っていくべきだと思います』
ほかの議会でも見直し
那覇市議会は、ことし8月以降、市議会のホームページで政務活動費の収支報告書や領収書を公開することを各会派が集まった会合で決めました。政務活動費を使った出張の報告書や補助職員の雇用契約書についても、今年度分から提出を義務づけた上で、公開することになりました。
(15日長崎) 長崎市議会
そんな中で、また新たな問題が…
(16日前橋)
群馬県の高崎市議会の最大会派「新風会」の議員と元議員合わせて19人が、会派の運用指針では認められていない政務活動費の支出があったとして、過去5年分で合わせて374万円余りを返還しました。
これは去年、7人の議員が、運用指針で認められていない後援会活動に政務活動費を支出していたなどとして、およそ475万円を返還したことを受け、会派に所属する議員の政務活動費の収支報告書を過去5年分にさかのぼって調べた結果、不適切な支出が判明したものです。
収支報告書や会派によりますと、最も多かったのは、懇親会などを意見交換会や研修などとして支出していたもので、18人の139万円余りとなっています。このほか、議員本人が経営するガソリンスタンドに支出したガソリン代31万円余り、親族の会社に印刷代として支出した6万8000円余りが含まれているということです。
会派では、今後、政務活動費を、議員個人にではなく、会派に支給する形に改め、支出する段階でチェックしたいとしています。「新風会」の白石隆夫幹事長は「これまで使途は議員個人に委ねられていたが、会派支給にすることで、市民に誤解を与えない使い方をしていきたい」と話しています。
(20日富山)
去年、政務活動費の不正を認めて辞職した富山市議会の市田龍一元議員が、
平成23年にも当時の政務調査費、およそ16万円をうその領収書で請求していたことがわかりました。
農協の支店が発行したとする領収書を使ってパソコンとプリンターの購入代金合わせて15万9600円を請求しましたが、実際には市内の家電量販店で購入したということで、領収書とレシートを紛失したため、農協の支店長にうその領収書を作成してもらったと説明しています。パソコンとプリンターは市田氏が辞職した際に会派に返却されたということで、市田氏は「架空請求ではない」と説明しています。
市田氏は「家電量販店に領収書の再発行に応じてもらえず考えが甘かった」と話し、全額を返還する意向を示したほか、一連の問題で「市民に迷惑をかけた」として来月行われる市議会議員選挙への立候補を取りやめました。