高齢者ドライバーへの
医師による
認知症の
検査が
強化される
改正道路交通法が
今月12日に
施行されるのを
前に、
NHKが
全国の
警察に
取材した
結果、
法律の
改正後に
受診が
見込まれるドライバーは、おととしの
13倍にあたる
少なくともおよそ
5万2700人に
上ることがわかりました。
専門家は、
今後も
増加が
予想される
高齢者ドライバーに
対応するため、
制度に
協力する
医師を
増やす
必要性を
指摘しています。
今月12日に
施行される
改正道路交通法では、
75歳以上の
高齢者ドライバーについて
運転免許証の
更新の
際に
受ける
認知機能の
検査で「
認知症のおそれがある」と
判定された
場合には、
全員に対し
医師による
診断が
新たに
義務づけられます。
NHKは先月末までに法律の改正後に受診が見込まれるドライバーや診断する医師の状況について全国の警察本部に取材しました。
その結果、受診が見込まれるドライバーは年間およそ6万6400人で、医師の診断前に運転免許証を自主的に返納すると推計される1万3700人余りを除くと、少なくともおよそ5万2700人に上ることがわかりました。
これは、おととし1年間に医師の診断を受けた高齢者ドライバー4027人の13倍に当たります。
一方、診断する医師は少なくともおよそ2800人と見込まれ、医師1人が診断するドライバーは年間の平均でおよそ18人となります。
認知症の専門家で、高齢者ドライバーの事故防止の対策を検討する警察庁の調査研究委員会の委員を務めた慶應大学医学部の三村將教授は、「高齢者ドライバーは今後も増えることが見込まれ、医療現場がどの程度対応できるかがポイントだ。警察と医師が問題の重要性を認識して協力しあう関係がないと困るのは地域の高齢者ドライバーで、警察が医師に理解を求め、制度に協力する医師を増やす努力をしていくことは今後もさらに必要だと思う」と話しています。
施行への課題 都道府県の警察本部では
改正道路交通法の施行に向けどのような課題があるか、全国の警察本部に取材したところ、複数の警察から、大勢の高齢者ドライバーが受診に訪れた場合、現在の診療態勢で十分に対応できるのかといった、課題を指摘する回答が寄せられました。
このうち長野県警は、「医師が通常業務に加えて、高齢者ドライバーの診断を任されることになるので、検査がスムーズに行えるのか不安の声がある」と回答しました。
また、愛媛県警は、「診断を受ける高齢者が病院に殺到するのではないかという医師からの意見もあった」と回答したほか、長崎県警は、「離島の医師不足や診断待ちの長期化で、更新手続きが遅れないかが課題だ」と回答しました。
また、公共交通機関が少ない地方を中心に、医師が免許取り消しとなった高齢者のその後の生活への影響を心配しているという回答も寄せられ、高知県警は、「免許を失ったあとの生活支援が確保されないと、診断書を書くことをちゅうちょせざるをえないとの意見を、医師から受けた」と回答したほか、熊本県警は、「医師の診断が免許取り消しに直結する心理的負担が大きい」と回答しました。
また、新しい制度を円滑に進めるための取り組みとしては、多くの警察で、運転免許センターの窓口などに保健師や看護師を配置したり、専用の電話を開設したりして、高齢者からの相談に応じる態勢をとるほか、情報提供のため認知症の診断を行っている医師のリストを作成するとした警察もありました。
滋賀・三重の各県警は、認知症の専門医ではない、かかりつけ医でも診断がしやすいよう、独自の形式の診断書を作ることにしているほか、大阪府警や島根県警は、「認知症の疑いがある」と判定された高齢者ドライバーが、医師の診断を受けるよう、本人や家族に積極的に働きかけたり、運転免許証の返納の検討を促したりする専門の係を、それぞれ新設するとしています。
このほか、山口県警は、法律の改正についてより理解してもらおうと、警察官による劇団が高齢者が集まる会合などで寸劇を披露しているということです。
警察庁は対応可能と想定
警察庁は、改正道路交通法の施行後、医師の診断が見込まれる75歳以上の高齢者ドライバーについて、現段階で確保した医師の人数で対応は可能だとしています。
具体的には、1人の医師が1か月に2人、年間で24人を診断すると仮定したうえで、2500人の医師で6万人の高齢者ドライバーを診断できるとしていて、現段階で診断への協力を承諾している医師の人数で十分対応できるとしています。